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桜咲いてた。


毎日どこかへ出かけてゆき、だれかと会って、
わたしの肉が
肉がほぐれてく
しあわせとは、そのようなものだ。単純、ありふれた
これからもずっと地続きにつづいてゆくみたい
忘れてしまう過去も未来も


昼の川辺
桜、咲いていた。
ころされたのそのとき
春が来てる、風が吹いて
眩しさでうまく前を見れない
黒くない黒目が簡単にめくれあがる


その日のことはその日のうちに
ことばに変えて残してゆきたいけれど
日の終るころには疲れて、ノートの隅にとりあえずの今日を走り書いて眠る

ことばにしなくちゃ忘れてしまうし、
しかしことばにしたら、うそになる
半分をうそにして、半分は忘れ
今日も昨日もおとといも、きっとずっとずっとその前も、たのしかった
おわったことだから
過去形
もうついさっきまでの夜を忘れかけてる
残るのは結局
「たのしかった」ただそれだけ



かなしみかたを忘れたの


この日々のことを、長々と書いて、けれど消す

言いたいことなんかほんとはない
残したいものもきっとない

わたしのじゃないやさしさでひたひた
もらって腐らせて
まだここにある

朝になりかけのまだ夜に
車はあと一歩のところでわたしを轢かない
橙、夜
路面の緑


これからしににゆくみたい

ほしいものは、何もないの

カウンターのむこうへ投げかけられる言葉
絵を描き始めたことも、描かなくなったいまも、
理由は一体なんだったのだろう


つながりが容易になって
おもたい
容易さと相反して関係はとおくなる
窮屈であるほうが、
不便であるほうが、わたしはじゆうでいたのかもしれない


電話があったのは月曜だった

わたしは
猫になりたい あの子、白と黒の
色あせた小泉今日子の笑う、その足下でねむるのだ



みんなやさしい
やさしすぎるくらいにやさしいみんな
やさしいだけのただそれだけの



わたしはもっと、あのとき


忘れてしまった
これから しににゆくみたい。


顔を洗おう
また朝になる
窓ガラスの結露、

「誰にも関係ないんです」