イギリスのスケーターたちから | ロンドンつれづれ

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今朝、早朝リンクに練習にいったら、イギリス人スケーターたちやコーチが集まって熱心に話していた。

何をって、Cup of Chinaについてである。

そしてもちろん話題は、羽生選手の演技についてである。私がきたら、「ハニュウって知ってるわよね?」というから、「もちろん。我ら日本人が誇る、世界一のスケーター」と答えると、あっというまに2,3人が話し始めた。

彼女、彼らはただリンクに来ている客ではなく、英国NISA所属のスケーターたちで、国内、国際試合にも出ているような人たちである。もちろん、イギリスのフィギュアスケートはふるわないから、皆さんが見たことのあるような人たちではないが…。


練習時間の衝突については、スケーターだったらそれほど珍しくもないから、特に話題にはならなかったが、その後の羽生選手の出場と演技についての総括としては、以下のようなものであった。(私の意見ではないですよ。あくまでも、英国人スケーターたちの発言です)

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-羽生は確かに無理を押して出場したけれど、スケーターだったら、同じ気持ちになるわ。積み重ねてきた練習、覚えたコレオグラフィ、すべての努力を考えたら、欠場してあきらめるなんてできないから良くわかるわ。だって、医者が診察して、大丈夫といったんでしょう?

-とにかく、途中で投げ出さないで最後までやり通したことは、良い見本にこそなれ悪い見本になんかならないよ。

-点数だって、プロトコルをみればわかる。スケートをやらない人がつべこべ言うべきじゃないだろう。僕たちが見れば、なんで点数が高いかはすぐわかる。ジャンプや転倒だけを見ているからそういうことを言うんだよ。

-なにせ、滑りがスムースで、難しいことをなんでもないようにやってしまうスケーター。だから、素人目には簡単なことをしているように見えるけれどとても高度な技を盛り込んである。

-そう。PCSはエレメンツとは関係ないのよ。ジャンプをいくつミスしたって、PCSにはひびかない。

(そう、プロトコルをきちんと読めよ!と他のスケーター)


-あんな美しく滑るスケーターは今までいなかったわ。彼は他のどのスケーターとも違うと思う。私は2012年、ニース世界選手権の彼のフリーが、今でもフィギュア史上で一番好き!素晴らしい表現力、情熱だと思う。

-それに、どんなスケーターにも敵はいるけれど、ハニュウのことを悪く言う人には会ったことがないわ。みんなハニュウが大好きなのよ!すばらしいスケーターだと思うわ。 (そうそう、とまわりから)


-外野は色々知らないで無責任に意見を言うよね。スケート競技を知らない人は何でも言える。

(でも、誰だって意見は表明する自由があるだろう、との声)


-もちろん言う権利はあるけれど、私は有名なスケーターでなくて良かったって本当に思うわ・・だって、精神的にタフじゃなくちゃやってられない。ハニュウがくだらない雑誌や、ソーシャルメディアを読まないように言いたいわ。

-彼が行きたいなら、NHKだって、グランプリファイナルだって、行けばいいんだよ。


-私は彼が来るという1%の可能性にかけて、ファイナルのチケットを昨日、買ったわよ!!あの演技を見て!

ー Go Yuzuru! 誰がなんといっても、私たちはあなたを支持するわよ! (We are behind you!)


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彼らは、主に白人系イギリス人のスケーターたちで、かなり上手な人たちです。また、私が日本人だから日本人選手を褒めてみせるという心配りをまったくしない人たちなので、正直な意見と思っていいでしょう。

あ、ちなみに、女子のスケーターで一番は、浅田真央ちゃんだそうです。これも、満場一致で、そうそう、といっていました。日本人スケーターの世界的評価、高し。 鼻の穴、ふくらむ。


また、下はフィンランドの友人から、月曜日に届いたメール…。 彼女はひとりでおよそヨーロッパの殆どの選手権を見に行っている、フィギュアスケートファンの鏡のような人である。そして、一人の選手を応援するというよりは、すべての選手に詳しい。 が、羽生選手の初のフィンランディア杯優勝以来、彼を応援しているのだ。

「週末は、ハン・ヤンとハニュウの衝突事故で怖い思いをしたわ…とくに、ハニュウは頭を打ったでしょう。頭の負傷は危ないのよ…。

それにしても、そのあとフリーを滑ったのには驚いた。しかも、あそこまでできるとは。 5回の転倒はあったにしても、実際なかなか良い演技だったわ!でもハニュウが最初意識混濁しているように見えたから、とっても心配だった。その気持と、「決めたからには、成功して!」と思う気持ちが複雑だったわね。

包帯や絆創膏はまったく気にならなかったわ。だって、とどのつまりは、フィギュアスケートは競技スポーツ、美しく見えるけれど、本来、激しいスポーツなんだから。

私の立場で彼がどうするべきだったか、なんて言えない。でも、今後は長い目で見て自分の健康をしっかり守れる決断を取れるようになることを祈っている。

ところで、新しいプログラムも、コスチュームも、とっても気に入ったわよ!」


スポーツに怪我はつきものとはいえ、確かに今回の事故はリアルタイムで報道されたという点でもショックだっただろうが、考えたらうちの息子も、今まで大きな頭の怪我を3回して、3回とも縫っている。 

一回なんて、後頭部を激打して、11針も縫ったのだ。シャワーみたいに血が飛び散って、救急車が来るまで息子を胸に抱えてバスタオルが血でぐっしょりになったのを覚えている。 男の子のお母さんは、血を見て逆上するようではやっていられないのだ。

もっとも、直後に4回転ジャンプをしたりはしなかったが…。

友人の子供は、転倒して舌を半分以上噛み切っていた。だから、今回羽生選手が顎を打った映像を見た時、まずそれを心配したけれど、出血はそれほどでもなかった。


そもそも、医師がちゃんと診断したあとの決断だった、ということをなぜもっと早くに報道しなかったんだろうか。私は、最初からそれを指摘していた。(11月8日の記事、コメント欄46,及び11月9日の記事) 中国のメディカルチームに資格のある人はいたのか。アドバイスを受けての判断だったのか。もし医師が会場に常駐していなかったとしたら、それこそが問題だ、と。医師の診断をうけて、演技をしても差し支えないという判断だったのであれば、コーチや選手が必要以上に責められるべきではない。(それでも、私だったら万一を考えて止めたが…)

私は各チームのお抱えの医師の帯同よりも、ホスト国が責任を持って資格のある医師を用意しておくルールが必要と思う。医師を帯同させる予算のない国も多いからだ。また現地の医師でないと、救急搬送や病院の手配が難しいだろうし、そもそも外国の医師の医療活動を禁止している国も多いのだ。


…‥‥マスコミもそのうち飽きて、繰り返し同じ映像を見せるのをやめるだろう。

そして、イヤダイヤダと言いながら、そういう番組をみたり雑誌を買ったりする人が減ってくれば、マスコミも羽生選手を追いかけたり、いろんな人の意見をインタビューするのをやめるだろう。「羽生」とやれば視聴率が上がるし、雑誌も売れるからいつまでも追いかけるのである。

今回の件で、私の記事や読者のコメントに対して感情的な反応を寄せた人がいたが、こういう少数のエキセントリックな人が「羽生のファンは」と言われる原因になる。そういうファンがヒステリーみたいになって他人のブログに干渉したり、ツイッターで喧嘩したりするのをやめたら、きっと羽生選手の周りももっと静かになるんじゃないかな。

自分と同じ考えじゃない人をすぐ批判したりして黙らせようと言うのは、民主国家ではしてはいけないことなんだ。ああ、そういう考えもあるんだ、自分は違うけれども、と思っていればすむ話である。とにかくまあ、落ち着いてくださいよ…。 いろんなことに、過剰反応していたら、疲れちゃうでしょうに。