田沢です。
 
さて、前回は赤ちゃんの脳容量の増加スピードがとても早いことを紹介しました。
 
こちらのブログに詳しく書きましたので、興味ある方はご覧ください。
 
生まれたての時には、缶ジュース1本分であった脳容量(約350ml)が、大人になるとペットボトル1本分(1.5リットル)まで増えるのですが、、脳容量が増えるということはそもそもどのようなことなのでしょうか?
 
前回のブログで、灰白質は神経細胞で主に構成されていて、白質は神経繊維で主に構成されているということを書きましたが、、
 
 
灰白質では神経細胞自身が増えたり、軸索が伸びたり、白質では繊維組織が増えたり、ミエリン鞘が形成されたり、その他グリア細胞や血管が新生されたり、、などのメカニズムが考えられています。
 
ということで、なんとなく灰白質と白質の違いをイメージできたところで、、
 
こちらが、脳を「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」と領域を大まかに4つに分けてからの、脳容量のピークを表した図を紹介します。
 
 
青い線は男性の平均赤い線は女性の平均ですが、なんとなく上の図を読み取れるでしょうか?
 
例えば、前頭葉や頭頂葉の脳容量は10歳前半でピークを迎えます。
側頭葉は10代後半でピークを迎えます。
後頭葉は20代になっても男性の場合は脳容量が増えていますね。
 
このように、領域によって脳容量のピークがくる時期がずれてきます。
前頭葉や頭頂葉の脳容量のピークは、女性の方が男性より早かったりと、性差もありますね!
 
下の図は、主に神経繊維で構成される白質ですが、、
 
20代を超えても男女ともに容量は増加します。
 
 
そろそろお腹いっぱいになるかと思いますので、最後に一つだけまた違ったデータをご紹介します。
 
下は皮質厚というまたちょっとだけ違う指標での分析結果の図ですが、ピンクの部分が皮質厚のピークに達する時期です。
 
 Blackmore et al., 2012, Shaw et al., 2008
 
例えば、体性感覚野と呼ばれる領域は7歳くらいで皮質厚のピークに達します。
田沢のセミナーなどでもたまに紹介させていただく、DLPFC(背外側前頭前野)などは、10.5歳くらいでピークに達します。
 
このように、より細かい領域を見ていくと、また違った見方ができたりします。
 
 
脳って、筋肉のように外から変化が見えにくいので、いまいち想像しにくいかもしれませんが、このように確実に年齢とともに変化しますし、もちろん運動やその他の環境的な要因によっても変化していきます。
 
また、これらのことから一つだけ言えること。
 
「脳のピーク年齢は?」
という大雑把な質問に対しての答えはないということです。
 
組織分画的にも、灰白質と白質などと大まかに分けられますし、その変化の形態も様々です。
 
灰白質容量は10代前半でピークになりますが、白質容量は20代以降も増加していきます。
 
また、領域によって平均値化すれば、容量がピークになる時期を特定できますが、見方を少し変えただけ(例えば、より機能的な領域に分割する)で、容量や厚さのピーク年齢が変わってきたりします。
 
ただし、領域によっては、当然成長のピークがかなり早い箇所があるのも事実。
 
脳の仕組みの、特に最新に近い分野の情報をなかなか学ぶ機会はないので、発言力の強い情報(マスメディア、ソーシャルメディア情報)に引っ張られがちですが、正確な情報を知ることによって、それらに惑わされない力を持つことも大切なように思います。
 
それは、私たちのような運動指導者であっても、お子様を育てる親御さんであっても。
 
ということで、ちょっとマニアックな文章ですが、ご興味ある方は引き続き続編をお楽しみいただければ幸いです。
 
田沢 優
 
参考資料
Zatorre et al. Nat Neurosci, 2012
Giedd et al. Nat Neurosci, 1999
Blackmore et al. Neuroimage, 2012,
Shaw et al. J Neurosci, 2008