お正月が来ます。

 

 

そしたらきっとまたあの曲が聴こえてくるでしょう。

あの曲とともに日本のお正月は始まるのです。

 

 

日本人なら誰もが知るあの曲の作曲者は、

 

盲目の箏曲家・宮城道雄(みやぎみちお)。

 

 

箏(そう)というのは琴とは似て非なる楽器。胴の部分にある柱(じ)を動かして音程を調節するのが箏。柱そのものがないのが琴。

 

さて箏曲家といえば真っ先に名が挙がるのがこの宮城道雄で、14歳で初めて作曲をし、生涯を通して400曲以上もの箏曲を生み出したのだそう。

彼は洋楽からの影響を多分に受けており、箏曲にクラシックの形式を取り入れるなどして邦楽の可能性を大きく広げた開拓者でもあるのです。

 

 

そんな彼の名曲集。

なにぶん音源が古いため聴きづらい部分もあるのですが、その大いなる名に恥じぬ技巧と表現力。日本人らしく間をも生かしながら、音から生まれるイマジネーションは現代から王朝時代まで遡り、果ては英国の風景すらも連想させる、風情と情緒に満ちた名演ばかり。

 

『春の海』。これこそ日本のお正月。来年もこの曲で幕を開けることでしょう。よく知られているのは箏と尺八の合奏のものですが、ここでは箏に合わせてフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーのヴァイオリンによる合奏が収録されています。

『水の変態』は14歳で作曲された彼の処女作。霧、雲、霜など水の変化による情緒を表現した名曲。素晴らしい発想とセンス。一音一音が心地良く体に染み渡ります。

さらにワルツを取り入れた『さくら変奏曲』や彼自身が実際にロンドンに滞在していたときに作曲された『ロンドンの夜の雨』など、一曲一曲が個性的な光を放っています。

 

 

欧米の芸も大変に良いものが多いですが、前回の竹山にしても、純粋な和の芸に触れることで自分の中の根底にある日本人としての心に届き、真に深い感動に浸れるものです。

 

特にお正月などは宮城道雄の箏の音色がよく似合います。

 

 

この一枚から良いお年を。