書評に魔法はない


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【書評】

すばらしい人間部品産業/アンドリュー・キンブレル

¥2,415
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同書は1995年に化学同人より刊行された『ヒューマンボディショップ』を改題、修正し再出版されたもの。
700年以上前、ローマ教皇インノケンティウス三世が三人の健康な少年の血を受けたところから始まり、1951年の人類初めての臓器移植、近代の遺伝子技術など商品としての人体の歴史を俯瞰するための教科書である。
著者のアンドリュー・キンブレルはアメリカの弁護士だ。
同書には事件を取り扱った例が多い。

例えば、B型肝炎の抗体をもつスラビンはその希少性を元に自らの血を470ccあたり6000ドルで販売する会社を設立した。

ブエノスアイレスのモンテデオーカ精神衛生研究所では、いなくなった患者は脱走したと家族に伝えられた。しかし、家族からの訴えで捜査を受けたこの研究所は1976年から1991年まで1400人以上が脱走したことになっているがその同数が死亡している。病院長を含め関係者11名は逮捕された。

1989年の「キャサリン ワイコフ事件」リームとビバリー夫妻が赤ちゃんブローカーのワイコフを通じて代理母ストートスキーに代理出産を頼んだ。契約出産の直後に夫妻は離婚。その後、生まれた子供の養育権を争って代理母と夫妻の三つ巴の法廷闘争が始まる。代理母は経済的理由のため取り下げ、最後は夫であるリームが勝訴。判決の数時間後に前妻のビバリーのアパートに訪ねたところを撃ち殺された。前妻のビバリーは懲役11年を言い渡された。

とにかく、ケースがすさまじい。

ちなみに、同書は福岡伸一氏が初めて翻訳した本だ。
原著を読んだ際に出版社にお願いするがこの手の本は3000部程度しか売れないからと断られ、自分で翻訳したのがきっかけらしい。福岡氏にとって文章について、そして生命について考えるようになった一冊だという。
福岡ファンには是非お勧めしたい。

【雑誌】GQ6月号

GQ JAPAN (ジーキュー ジャパン) 2011年 06月号 [雑誌]/著者不明

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$書評に魔法はない
書評に魔法はない
書評に魔法はない




気がついたら4月は一度も日記を更新していなかった。
書評に関しては在庫切れである。
今回、iPadの電子書籍でGQを買う。
350円で紙媒体の580円より230円ほど安い模様。
GQのiPad版は音楽や映像が流れたり面白いけど、読むには字が小さすぎるしいちいち拡大するのがめんどくさいので読みたい記事が多い場合は書籍版のほうがいいと思う。
かくいう僕もまだバフェットの特集しか読んでいない。

ではバフェットの特集の感想を。

Twitterで有識者の間で話題になったGQの今月号。
もちろん目当てはバフェットの特集である。
バフェットの特集は全部で8ページで写真をのぞけば実質5ページである。
内容は、最初の方はバフェットの過去の投資のおさらいや投資哲学総論で真新しい内容は特にない。中盤からアジート・ジェインやディヴィッド・ソコル、トッド・コームズ、リ・ルーなどバークシャー・ハサウェイの中心人物の経歴を紹介。
*ディヴィッド・ソコルは3月末に辞任した。
印象に残った言葉を以下抜粋。
「土曜日に話を聞いた会社を、月曜日の朝に買うことにかけて私たちの右にでるものはいない。」チャールズ・マンガー
「我々が手に入れたいのは年老いた名馬でなく、将来性のある若い馬。」
ウォーレン・バフェット


バフェットの本を何冊か読んだことあるけど、ここ数年のバークシャー・ハサウェイについてはあまり良く知らないって人が読む分にはいいかも。


【書評】選択の科学

選択の科学/シーナ・アイエンガー

¥1,700
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著者は盲目のシーク教徒で大学の博士課程ではエイモス:トヴァルスキーに師事していた。具体例が非常に面白いので心理学の実験事例を読むだけでも充分に元は取れる。発売から4ヶ月以上経つが、Amazonのマーケットプレイスの最安値と新品で買った場合の値が変わらないのが良書の何よりの証拠だろう。

「ジャムの研究」が一番ビジネスにおいて応用がしやすいと思う。ドレーガーズのメロンパーク店で試食の実験を行った。6種類のジャムを試食させて買ったのは30%だったが、24種類のジャムを試食させて購入したのはわずか3%だった。品揃えが増えすぎると、購入率が下がる。
「もうわからない!選択肢が多すぎる!」選択肢が多いと満足度や充足度、幸福度は低くなる。選択肢の多さは、便利ではなくノイズを生み出しているだけである。顧客に与える選択肢の数に上限を設けることが、幅広い支持を集めることができる。『し・ぼ・り・こ・め』である。

人生の中で自分で決めたいことと他人に決めてほしいことをリストアップさせたところ日本の学生の場合には「食べる物」「身につける物」「職場での仕事内容」が他人に決めてほしいことして多くの学生が上がった。日本でサブウェイがあまり流行らなかったのは、これが起因していると思う。いろんな種類のパンからは数多くの具を選んで食べるのは日本人の国民性にはあわなかった。一つにパッケージ化されているほうが楽。

ウソを見破る技術は人と付き合う中で明確なフィードバックが得られなければ、騙され易いのか、猜疑心が強すぎて判断できないので磨くことができない。また、精神科医や弁護士や裁判官など一般より重大なウソに直面する人でさえ一般人とはそれほど見破る確率は変わらない。人間嘘発見器と呼ばれるポール・エグマン教授が猿と関連して発見したピノキオ効果は面白い。これがどのようなものかは本書を読んでいただきたい。

「自分を実際より良く見せたいという誘惑に屈しない。」
「長い目で見れば、ありのままの自分を見せるほうが、おそらく効果は高いのだろう。」

確かに、人によく思われすぎるのも考えもの。僕もTwitterでたまに過激なことをつぶやいて、ついてこれない人間を振り落とす。多少は「口の悪いヤツ。」って悪評を貰うのもリスク管理として悪くない。

結婚や仕事など人生に大きな出来事では人は自分で選んでいるという感覚が満足度に大きく依存する。自分で選んだ道が幸福になるわけでもなく、敷かれた道のほうが幸福であることも多いのだが。
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