ミッドナイトパーティー | 大塚角満オフィシャルブログ「大塚角満のブログ」Powered by Ameba

ミッドナイトパーティー

 ちょっと前に遊んだボードゲーム『ミッドナイトパーティー』について書く。例の如く、ボードゲームに興味のない人はさっぱりおもしろくないと思うので、読み飛ばしたほうがいいかもしれません……。

『ミッドナイトパーティー』は1989年に発売されたドイツのボードゲーム。その説明文を読んだだけで「こいつはおもしろいに違いない!」と確信できたので、ずっと「欲しいなぁ~……」と思っていた。しかしこのゲーム、名作の呼び声高いのに日本ではけっこう前に絶版になっており、どこをどう探しても手に入れることができなかった。そこで俺はしかたなく、『DORADA』 と同様に海外のオークションサイトに出品されているブツを発見して海外特派員の方に連絡。無事に落札してもらって念願の『ミッドナイトパーティー』を手に入れることに成功した。

 これが、いまから1年ちょっと前の話。すぐにブツはアメリカから届いたのでやろうと思えばいつでもできたのだが、このころは『ドミニオン』や『パンデミック』と言った“神ゲー”のトリコになっていたので、いつまでも『ミッドナイトパーティー』の封は開けられることはなかった。でも先日、仲間うちで「定番ゲームもいいけど、ぼちぼち新規のもので遊んでみたい」という話になり、『DORADA』といっしょに『ミッドナイトパーティー』も遊んでみた次第だ。

 このゲームは簡単に言うと、迫り来るオバケ(ヒューゴ君、という)からやたらと逃げ回る……というものだ。逃げるフィールドは円状につながった回廊で、そこをグルグルグルグルと巡るというわけ。……ま、この説明だけじゃさっぱりわからんね。

 さっそく、俺たちはパッケージを開けてゲームを始めることにした。しかし、海外のオークションで落札したものであるため、入っていた説明書は当然のことながら英語のみ。日本語はひとつも見当たらない。仕方ないので、俺が遠い昔にネットで見た『ミッドナイトパーティー』のルールを元に、読めない英語マニュアルで若干補完した、これ以上ないくらい心もとないルールでひと勝負やってみることになった。

 とりあえずボードを広げ、内容物を確認する。入っているのは、ヒューゴ君のコマと人間のコマ、そして専用のサイコロのはずである。英語の説明書をしかめっ面で眺めながら、誰にともなく俺は言った。

「どうもこのゲーム、サイコロが特徴みたいだよ。入ってるよね?」

 これに対し、内容物を漁っていた唯君という青年が甲高い声で応えた。

「サイコロ……ああ、ありますけど、なんかボロっちいですよw」

 なぬ? ボロっちいとな? 俺は唯君から手渡されたサイコロを見て、ため息とともに小さな声を漏らした。

「うげー……。これ、専用のサイコロじゃなくて、ふつうのサイコロじゃん……。どうやら前の持ち主は専用のをなくして、ふつうのでごまかしていたんだね……」

 このほか、人間のコマが明らかに足りなかったり、ヒューゴ君のコマも色褪せてて、かなり時代を感じさせる仕様になっている。「これだから、オークションは怖い……」と誰かが悲しげにつぶやいた。

 でもまあ、とりあえずやってみようではないか。

■ミッドナイトパーティー(ゴキブリ友の会・特別ルール)

 特別ルール……と書いてますが、要するに正しいルールを知らなくてテキトーにやっただけなんだけどね(苦笑)。

 今回のプレイヤーは5人。それぞれが色違いの人間のコマを4つずつ持っている。これを、じゃんけんに勝った順に回廊の好きなマスに配置していく。オバケのヒューゴ君は、回廊につながっている地下室のマスに配置。全員がすべてのコマを置いたら、ゲームスタートだ。

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↑中央の白いコマがヒューゴ君。回廊に散らばっているのがプレイヤーのコマだ。


 プレイヤーはサイコロを振り、出た目の数だけ自分のコマを動かすことができる。動かすコマは、自分のだったらどれでもかまわない(※間違いルールその1)。基本的に、これのくり返しだ。しかしこれだけだと、おもしろくもなんともない(当たりめーだ)。

 ここで登場するのが、サイコロに書かれている“オバケの目”である。この目を出してしまうと、地下室のヒューゴ君が動きだすのだ。地下室から回廊までは10マスほどあるんだけど、なんとヒューゴ君、1回の移動で3マスも進んでしまう。オバケの目が出たら、全員で元気に「オ・バ・ケ!」と言ってヒューゴ君を3マス進めよう(※勝手ルール)。ヒューゴ君が地下の階段を上りきり、回廊に出てきた瞬間から、『ミッドナイトパーティー』が持つ“バカゲー”の香りが一気に解き放たれる。

 ヒューゴ君が回廊に出てきてからも、サイコロを振ってコマを進める……というルールは変わらないのだが、大きく違う点がふたつある。それは、

1.ヒューゴ君に追いつかれてしまったコマは地下にさらわれてゲームから除外される。
2.回廊の各所には逃げ込める部屋がある。しかし部屋の定員は1名だけ。11箇所ほどある部屋に誰が飛び込むのか、椅子取りゲームのような駆け引きが始まる。

 というもの。さらわれたコマは地下の階段に順番に並ぶことになるのだが、ここには“-10”、“-9”、“-8”……とマイナス点が振られている。つまり早くさらわれてしまうと大きなマイナス点をもらってしまうということだ。最終的には各人の点数を集計しての勝負になるので、人々はなるべくヒューゴ君に捕まらないよう、回廊を逃げ惑うのである。

 ……てな感じのルールで遊んでみたのだが、思っていたほどは盛り上がらなかった。というのも、6面サイコロのひとつにしかオバケの目がないのでなかなかこれが出ず、ヒューゴ君がやたらと鈍足で追いかけてきてくれないのだ(※間違いルールその2)。ヘタをすると、人間がヒューゴ君を追い越して地下にさらってしまうような勢い。滅多にその場から動かないヒューゴ君はいかにも辛そうで、「はぁ~……。ワシももう歳じゃけん、そっとしておいてほしいんやけど……」と言い出しそうな顔をしている。もうちょっと何かしらの要素があれば、場が爆発するほどのおもしろさが発生するのはわかるのに、どうにも煮え切らないのである。そこで俺はスマホを取り出し、改めて『ミッドナイトパーティー』のルールを調べてみることにした。そして、俺たちはまったく違うルールでこのゲームを遊んでいたことに気がついた(苦笑)。

■ミッドナイトパーティー(正式ルール)

 いったい何が違ったのか? ざっと箇条書きにしてみる。

・専用サイコロには、オバケの目がふたつある!
・人間のコマは自分のだけではなく、他人のを動かしてもいい
・部屋に入るには、部屋の前のマスにピッタリ止まらなければいけない!
・人間のコマを初期配置するとき、部屋の前のマスに置いてはならない!

 これだけ違うと、もはや同一のゲームで遊んでいたとは口が裂けても言えない。

 さて改めて正規ルールで遊んでみたら、これがおもしろいのなんの!! サイコロのオバケの目がひとつ増えただけでヒューゴ君のスピードがとんでもなく速くなり、ビュンビュングングンと迫り来て人をさらいまくるのだ。なんとなくその顔は、「うひょひょひょひょ~~~!! つぎは誰だ!? 誰が食われたいんだ!!? この恨み、はらさでおくべきかぁぁぁぁああ!」と言っている感じ。誰かがサイコロを振れば「オ・バ・ケ!!w」、つぎの人が振っても「オ・バ・ケェ!!ww」、そしてそのつぎも「オォ・バァ・ケェ!!ww」……。そのたびに人間のコマが食われて地下の階段送りになり、ヒューゴ君の真の実力を思い知る結果となった。部屋には参加者の爆笑と、断末魔の悲鳴が轟く。

「てめ!!w オバケ出すんじゃねえよ!!w 食われるだろ!!w」

「お、俺のコマを動かさないで!! さ、さらわれる!!ww

「ちょっとー! その部屋入らないでっ!! ウチが逃げ込もうと思ってたのに!!!」

「ジャック!! またオバケ目か!!! おまえじつはヒューゴ君だろっ!!!

 ……ね、バカゲーっぽいでしょ。

『ミッドナイトパーティー』は、“何かに追われる恐怖”という、誰もが潜在的に恐れる要素をボードゲームに落とし込んだ、非常によくできたコンテンツだと思う。それも、究極的に簡単なルールで。老若男女、誰もが楽しめると思うので、ぜひぜひ遊んでほしいなあ。

 しかも、冒頭で「日本では絶版」と書いたが、最近になって再販が始まったらしい。再販の日本版だったらマニュアルは日本語だろうし、サイコロも正しいものが入っているだろうから(笑)、安心して遊べること請け合い。夏の終わりに、オバケを題材にしたこのゲームで、ワーワーギャーギャー!! と大騒ぎするのも楽しいと思いますよ~。