ナポレオン | 大塚角満オフィシャルブログ「大塚角満のブログ」Powered by Ameba

ナポレオン

 では、俺を魅惑のトランプの世界に引きずり込んだ“ナポレオン”というゲームのルールを紹介しよう。

 でもその前にひとつだけ、はっきりと書いておきたいことがある。それは“ローカルルール”の存在だ。

 トランプのゲームは、しっかりとした統一ルールのもとで国際大会が開かれる“コントラクトブリッジ”というゲームを除いて、ほとんどすべてにローカルルールが入り込んでいる。先日紹介したゴップくらいルールがシンプルならばいいのだろうが、ポピュラーな大富豪やドボン(ポピュラーか?)、七並べなんかも、ローカルルールに則って遊ばれているものだ。違う地域出身の人とこれらのゲームを遊んだときに、(アレ? なんか俺の知ってるルールと違うぞ……?)と思ったことがある人は多いはず。でもこの場合はどっちかが間違えているわけではなく、その地方ではそれが正しいルールなのだ。

 そしてナポレオンははっきり言って、ローカルルールの権化のような遊びである。後述するがナポレオンには“よろめき”という有名な役札があるのだが、俺が中学のときにS先生から教わったルールには“ナポレオンの象徴”とも言えるこの役札が存在しなかった。なのでここで説明するルールはあくまでも、俺が中学のときに教わったルールに基づいたものだと理解しておいてください(よろめきは、その後の経験によりウチらのナポレオンにも組み込まれたので入っていますw)。

 しかしこれ、わかりやすく説明できるかなぁ……。

■ナポレオンのルール

プレイ人数:5人(4人でもいける)

使用カード:各スート(スペード、ハート、ダイヤ、クラブのこと)のA(1)~K(13)までの52枚

カードの強さ:強いほうから、A、K、Q、J、10・・・・・4、3、2となる。Aがもっとも強く、2がいちばん弱い。ただここに、切り札と役札が加わるので序列がちょっと変わる。それは後述するので、とりあえずここまで覚えてください。

 このゲームは、ナポレオン軍と敵軍に分かれて絵札(A~10までの計20枚)を取り合うことが目的だ。各人が1枚ずつカードを出す(リードする、という)ことを1ターン(これをトリックという)とし、そのトリックでもっとも強いカードを出した人が場のカードを総取りすることができる。これが、ナポレオンが属するトリックテイキングゲームの基本だ。

 もうついでだからここで説明しちゃうが、トリックの基本として“最初にリードされたスートと同じスートを出さなければいけない”というものがある。つまり、そのトリックの最初のプレイヤーがクラブを出したとしたら、ほかの4名は必ずクラブのカードを出さなければいけない。もしもなければ他のスートでもいいが、その際はそのトリックにおいてもっとも弱いカードになってしまう。

 ディーラーはまず、参加者5人に10枚ずつ、裏にしたカードを配る。すると2枚余るが、これは裏にして場の中央に。これで、最初の準備はオーケー。

 続いて、このゲームのキモであるナポレオン軍と敵軍に5人を分けなければいけない。分けかたは、申告制。ここが、最初のおもしろポイントだ。

 このゲームは絵札を取り合うことが目的と書いたが、プレイヤーはここで手札と相談して、取れそうな絵札の枚数を申告する(これを俺たちは“起つ”と言っていた)。切り札にしたいスートといっしょに。つまり、

●プレイヤーA:「俺、ハートで10枚!」

 てな具合。ハートは、プレイヤーAが切り札にしたいスートだ。切り札というのは、その1ゲームでもっとも強くなるスートのこと。前述の“トリックの基本”のところで“最初にリードされたスートと同じスートを出さなければいけない”と書いたが、もしもそのスートがなかったときは切り札を出してもかまわない。ていうか、ぜひそうしてください。なるべく早く切り札以外のスートを切ってしまい、いつでも切り札を出せる状態にすることがトリックテイキングで点数を稼ぐ基本中の基本なので。プレイヤーAはこのとき、手札にたくさんのハートがあったので「絵札、10枚取ります! ハートを切り札にして!」と宣言したというわけだ。

 この宣言を受けたほかのプレイヤーは、これを上回る条件を言って起たなければならない。たとえば、「じゃあ、スペードで12ね」とか。こうやって宣言する人がいなくなるまで競りを続け、もっとも高い条件を出した人がそのゲームでの“ナポレオン”となるのである。

 晴れてナポレオンとなったプレイヤーはここで、副官を指名することができる。とは言ってもプレイヤーを名指しで指定するのではなく、“カードの種類”で指定する。たとえば「ハートの2を持ってる人ね」みたいな感じで。

 ここで重要になるのが“役札”の存在だ。ここで改めて、役札込みでナポレオンにおけるカードの強さ(ランク)を説明しよう。

スペードA(通称・オールマイティー)→表ジャック(切り札のJ ※俺たちは表ジャックと呼んでいたが“正ジャック”と呼ぶところが多いみたい)→裏ジャック(切り札と同じ色のJ→切り札A→切り札K→切り札Q→切り札10・・・・切り札2→非切り札のA→非切り札のK・・・・・

 これが、カードのランク。ふだんは最弱の2でも切り札であれば、他のスートのAやKよりも強くなる

 上の序列にある通り、ナポレオンにおける最強カードはスペードA(オールマイティー)となる。たとえばダイヤが切り札になり、表ジャックがダイヤJ、裏ジャックがハートJになったとしても、スペードAには敵わない。ホントに最強。ただ1枚の例外を除いては……。

 ここで現れるのが冒頭で書いた“よろめき”という役札だ。これは何が切り札になろうとも、ハートQがその役を担う。でも使い方はかなり特殊で、よろめきの効果が発動するのは、そのトリックでオールマイティーとハートQがいっしょに出たときのみとなる。この状態になると、本来は最強のはずのオールマイティーがヨロヨロと力を失い、ハートQを出したプレイヤーにそのトリックを持っていかれてしまうのである。オールマイティーといっしょに出ない限り、ハートQはハートQの力しか出せない。使いどころが非常に限定された難しい役札ってわけだ。

 で、副官の使命。ナポレオンになった人は手札と相談し、副官になってほしいカードを宣言する。たとえば、スペードを切り札に起ち、自分の手札にオールマイティーと表ジャック、スペードK、スペードQなんていうカードを持っていたとしたら、「副官は裏ジャック(この場合クラブJを持っている人)ね」なんて宣言するわけだ(自分が持ってるカードを宣言してオノレひとりで4人を敵に回して戦ってもいいんだけど)。これでナポレオン軍が完成し、残り3人の敵対群と絵札の取り合いをするのである。ちなみに、副官に選ばれた人はそれをまわりに言ってはいけません。こっそりとサポートするのです。副官が誰かわからぬままゲームを進行し、最終的にナポレオン軍の絵札が宣言の枚数に達していれば、ナポレオン軍の勝利となる。

 ルールはだいたい、こんなところ。でもさっぱりわからないと思うので、順を追って書いてみる。

1.ナポレオンになった人は、場に伏せられている2枚のカードを手札に加え、いらない2枚を捨てる(このとき、副官に指定したカードが出てくる場合がけっこうあるw)
2.ナポレオンの人、好きなカードをリードする。他のプレイヤーは同じスートをリードしなければいけない。
3.そのトリックを取った人が、つぎのゲームの親に。親は好きなカードをリード。その後は同じ。
4.カードがなくなるまでトリックをくり返す。
5.全10トリックが終わったら、取得した絵札の枚数を数える。宣言通りにナポレオン軍が絵札を集めることができていたら、ナポレオン軍の勝利。

 トリックテイキングの基本と役札さえ覚えることができれば、ナポレオンでやることは1~4で完結してしまう。そう聞くと、意外と簡単そうじゃないですか? そうでもない? 覚えることができれば本当におもしろいゲームだと思うので、興味のある方はぜひぜひチャレンジしてみてくださいね。