スパトレイル 四万to草津 その3 | 大手町デイズ

スパトレイル 四万to草津 その3

前回のつづき
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A2(29.4km)のエイドを過ぎると、いよいよA3(42.3km)に向かう長い登りのセクションとなります。
まずは31kmまで一度下って、そこからは登りオンリーで38km地点まで700m登る。
言ってしまうと「ふ~ん」という感じなのですが、これがもうめちゃくちゃ大変。
スカイツリーが634mだからそれよりも上までいかなくちゃいけないんです。
この7kmが永遠のように感じられました。マジ永遠。

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A2までの元気だった自分が嘘のように動けなくなります。
どんどん追い越されていきます。
陽射しが強いです。
何度も立ち止まりそうになります。
立ち止まっても終わりは来ません。終わるためにはゆっくりでも進まなければなりません。
どのくらいの人たちに抜かれたのかわからないほどでしたが、
抜かれるときに「がんばりましょう」とたくさんの人たちに声をかけられたのがこの区間。
傍から見てヤバかったんだろうなぁ。
一人で辛い状況にいると、声をかけてくれる一瞬とか、遠くで聞こえる何気ない雑談がすごく嬉しくて励みになりました。
ありがとうございます。

前日のブリーフィングで、笹がチクチクするところに来たらもうすぐ頂上、という説明がありました。
どうやらこの笹のチクチクゾーンというのは、昔野反湖へ向かうときに使っていた道をこの大会のために復元してくれたそうなのです。
その関係で「チクチク」が残っているようなのだ。
確かに茎の突き上げがすごい。ルナサンダルのランナー達はここをどうやって通過したのだろう。
そしてこの区間が傾斜がもっともキツい。上の地図でいう37km手前あたりだろう。

「ちくしょー、これいつ終わるんだよ」
と絶望的な気持ちになっていると、前から鏑木さんがゆっくり下りて声をかけてくれます。
「ここが一番キツいところだから、頑張って、あと少し」
また少し進むと、木に付いたテープにも「あと少し」の文字が。
時計を見ると既に10時を回っている……コートジボワール戦が行われていることを時計で確認。

38km地点でついに登りが終了。
山を登りきると、こんな湖が目の前に広がるんです。
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野反湖という湖、ファンタジーの世界のよう。
これが群馬ですよ。

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この湖畔をかけてA3(42.7km)を目指すのですが、およそ5kmもあります。
そうちょうど上の写真の湖の一番対面がエイドなのです。
あそこまで走らなくてはならない。
はじめはフラットめなコースなのかと思っていましたが、中盤からは登りの連続。
湖畔を駆け抜ける爽快感ゼロ、ただただゾンビのように歩いていきます。

A3(42.7km)に到着。
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多くのランナーが地べたに座り込んでいて、これまでのエイドとは違った雰囲気。
さすがにあの登りもあったし、疲れているランナーも多いよう。
水分補給をし、オレンジに加えて、舞茸うどんを食べてエネルギー補給。
このエイドから先はトレイルランでは最長距離の更新となります。
また次のエイドA4は62.8kmなので、ここから先20kmはエイドがありません。
上の高低図をみると下り基調の区間となりますが、油断なりません。
しっかり休憩をとって未知のゾーンへ足を踏み入れます。

この区間には、コース最高点の弁天山(1650m)が48kmすぎにあります。
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湖畔のフラットなコースをゆっくりですが確実に走って、この最高点を目指します。
この最高点は案外さくっと到着、よかったです。
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1650m、けっこう上まで来たんだなぁ。

この最高点を過ぎると、あとは一気に駆け抜けて行くだけ。
最高に気持ちいい下りのトレイルが続きます。
km表示の看板に、松本さん(?)が
「ここから先、Sky running」
「かっ飛ばせ!」と手書きで煽っていたのがこの区間。
幸い足が回復していたので、一気におりゃー!と下りていきます。
そのままの勢いで林道へ。
林道を走りながら時間を確認すると、関門時間よりもかなり前に着いちゃうんじゃないかとうかれ気分になっていました。

ところがこの林道がくせ者。
一向に終わりが見えません。同じようなところを延々と走っているような感覚に陥り、
足の力も徐々に失われ、気がつくと走ることができなくなりました。
(林道10kmくらいあったのでは……)

60kmを過ぎたところで林道がアスファルトになり
「このままエイドまでロードを歩いていくんだろうな」
と思っていたところで、エイド手前に泥沼ゾーンが!なんだこれ!聞いてないよ!
「なんでこんなフラフラなのにアドベンチャー気分を味あわないといけないんだよ……」
と泣き言をこぼしながら、足首まで泥に浸かりながら前に進みます。

ようやくA4(62.8km)に到着。
早く着きすぎちゃう!なんてうかれていた元気はゼロ。
もう走れない。休んでも走れそうにない。
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係の人にアタマと泥だけになったシューズに水をかけてもらって、パイプ椅子に座り込む。
水分補給とオレンジと、まいたけの味噌汁を飲む。

当初の目標としていた60kmに到着。これは今後の自分の自信になるだろう。
ここで終わってもいい、もう走れないし。
時計を見る。昨日の説明では、ここを17時に出てもA5の関門時間18時には着かない。
16時には出る必要がある、ということだった。
時計を見ると15時過ぎ。
まだ時間はある。
A5までは行ってほしいという話だったし、ゆっくり休んでから歩いて行くことにしよう。
ここのエイドでは長い休憩を取り、濡れた靴も乾いてきたところで出発。
最後のエイドA5を目指します。

この区間は、はじめにぐ~んと下って、あとは登り基調。

この区間から身体が前半とは大きく変わっていることに気がつきました。
下りを走ることはできなくなっていて、よちよち歩きで下る。
そして登りなのですが、前半の苦しさが嘘のようにキツくない。
自分のペースを守っているだけなのですが、トレランをやって登りでグイグイ抜いていくとうはじめての経験に興奮(笑)
ただ歩いているだけなのですが、グングン進んでしまいます。
何なんだ!この感覚が前半の登りでもあればよかったのに。
長い休憩でしっかり回復できたのか、心配していた急な登りの区間を楽にクリア。

その後にはこんな平原を走ります、68kmくらいかな?
距離表示の看板に「北米的な景色」と書いてありました。
(私は北米の知識がないので、そうなのか~としか思いませんでしたが)
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それにしても、これまでとはがらっと風景が変わって面白いですね。
長い距離なのに飽きさせません。

写真をたくさん掲載してきましたが、実はこの写真以降は撮っていなかったようです。
ここからはテキストオンリーでぐいぐい進めていきます。

草原を抜けるとアスファルトになります。
ここからはエイドまでず~っとアスファルト。
このアスファルトがありがたかった。
足元を気にすることもなく、ボーッと歩いていればOKじゃないですか。
歩きながら疲労が抜けていきます。

時計を見ると……最後のエイドで休憩しても18時には出発できそうな時間。
充分余裕はある。だけど最後の登りは長い、本来ならラストスパートとなる下りは走れない。

多分今の僕では18時頃の出発では、制限時間の20時にゴールの草津温泉には到着できないだろう。
時計をみながら歩みを進め、アタマのなかで考えます。
エイドでどのくらい休憩をとればいいだろう。
せいぜい15分といったところか。
っていうことは……17時にA5に着こう。
A5に17時着、休憩して17時15分出発。2時間45分で10km。
これなら登りがあってもゴールできるに違いない。

方針が決まってからは早かった。
ロードの区間はきつくてもゆっくりでも走ったほうがいい。
17時につくためにペースをあげます。

A5(71.6km)についたのは、16時59分。ギリギリ予定をクリア。
水分補給、オレンジ、そして舞茸のそばを食べて最後のチャージ。
地図を開いて「6km登って4km下る」という漠然としたイメージを把握。
お手洗いと必須となっているライト2本をエイドで提示していざ出発。

出発の前に、一つ大きな決断をしました。
A5からゴールに向かうと、東京駅行きの帰りのバスに間に合わない。
草津温泉の宿泊先を予約しているわけでもない。
翌日の月曜日はお仕事です。

当初の目標を遥かに上回る地点までやってきた。
よくやったと思う。
ここでリタイアすれば月曜日の朝には社会復帰できる。

……でもそれでいいのか?
残り10キロ、あゆみを進めればゴールできるとわかっていながら
JTBのバスを理由に諦めて、71km走ってきたことに達成感が得られるのだろうか。
得られないな。
「後悔なんてあるわけない」って胸を張って言えるかな。
言えないな。
ゴールしたあとどうしたらいいのかわからないけど、なんとかなるよ、日本だもの。
もう進むしかないだろ、ちゃんとゴールして自分の記録を更新しよう!
これがここで下した大きな決断。

そんな考え事をしたこともあってか、予定より5分の遅れとなったが、焦らずゆっくり進みます。
心配していた登りですが、傾斜は地図で感じていたよりも緩くて、またしてもほいほい抜いていきかす。
途中から雨が降ってきましたが、気にせず進み頂上へ。
「いてて、いてて」
湿原のような場所で急に雨がにあたると痛みが。
「これ雹だよ、雹」と教えてくれました。
急いで木陰まで小走りで進んでレインウエアを羽織ります。

下りだけの道になってからは、日が暮れて初めてのナイトトレイル。
ヘッドライトの明かりを頼りにゆっくり下ります。
トレイルが雨でかなりぬかるんでいたので、不慣れな夜間を安全に進むことを心がけました。

最後の1キロはロードの登り、スパートするランナーに追い抜かれますが、
もはや私に走る余力はゼロ。
腕を振り、ゆっくり歩きながらゴールへ。
遠くからマイクを通じて松本さんがゴールしたランナーを一人ひとり祝福する声が聞こえてきます。

ゴールのスキー場の敷地について、目の前にゲートが見えたところでようやくラン。
長い81kmをかみしめるようにゲートを潜り、松本さんとハイタッチでゴール。

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ゴールしてよかった、本当によかったという思いでいっぱいになった。
時計を見ると1分前にバスが出発したいた頃だった。
バスには間に合わなかったけど、最高に楽しかったよ、スパトレイル。

地域の人たちの暖かさが感じられる。
エイドの舞茸がおいしかった。
たくさんの応援ももらった。
1kmごとに表示看板が用意されている。
看板に書いてある鏑木さん、松本さんのメッセージに励まされる。
野反湖の景色がヤバい(その前がめっちゃキツかったが)
81kmのトレイルレースを完走することができたのは、これからの大きな自信になりました。
これでやっと、色々なトレイルレースに参加できるスタートに立てるような気がします。
そういう意味でも私にとっては忘れられない大会になりそうです。
(わからないことだらけの1回目というのもよかった)

来年も走りたいぞ!
大会に携わった皆様、道中で励ましてくれた方々、すべてに感謝の想いを伝えて当エントリーをまとめたいと思います。

ありがとうございました。