いよいよ、来週の月曜日、私の関ヶ原を迎える。


天下分け目の戦いだ。


ワインエキスパートの試験!!


相撲取りなみに、両ほっぺをパンパンと手でたたいて、


よっしゃあ~!!

準備は万端、どこからでも攻めて来い!


と叫びたいところであるが、

わたくし・・・自信、全くございません。

戦う前から白旗をあげんとする勢いである。


いろいろありました。この数か月。

小さな胸を痛めたことも多々ありました。

仕方ないよ。うんうん。仕方ない・・・。

集中なんてできないよ。そりゃあ、出来るわけがない。

うつつ、大変だったね。

いいんだよ。いいんだよ。

お仕事忙しかったもんね。うんうん。


などと、うしろめたさを隠しながら、自分に言い聞かせつつ

悪あがきをそれでも続けている今日この頃。


それでも先日過去問をやってみて、お?もしかしたら、なんとか行けるかも!

ワインの神バッカスが私に微笑んでくれるような、奇抜な出来事が起こるかも!

と、ちょっとニヤリ、としたりして、割と気楽に勉強を続けていた。


そんな折、ちょっと気分よくして、ワインを飲みに行った。


その行った先に居る若手のソムリエのサムライに一言、言われちまった。

(ま、その前にいろいろと問題を出されたりして何かと世話になっていたのであるが・・・)

文字通り、一段高いカウンター越しに見据えて言う。


「うつつさんは、今年は無理でしょう・・・」

「・・・・・」 (パチパチ ← まばたきの音)


いきなりっ!


若干顔がひきつるのを感じながらも、一応、年上の威厳を持たせて笑ってみた。


ふふふ。


な~んてね、と言うかとおもいきや、相手はニコリともしない。

静かな冷静この上ない目でじっと見つめている。


や、やばい。目が離せない。

このままでは飲まれてしまう。

飲むのはワインだけにしたい。


「で・・・でも、結構過去問はいいセン行ってるんだよね~」(ちょっと明るく)

「・・・過去は過去ですから」


まだじっと見てる。でも、あれ?ちょっとだけ遠い目をしてないか?

ね?それってもしかして、あなた自身の過去の話じゃあないの?

本当に試験のお話かしら?


だって、忙しかったんだもん、と心の中でつぶやいた。


「忙しいのはみんな誰でもいそがしいんですよ」


げっ!心まで読まれた!


「忙しいのはみんな誰でも忙しいんです。でもその中でやった人だけがちゃんと受かっていく。

僕の後輩も同僚も、みんな忙しいと言っては落ちました」


淡々と冷静に言う。淡々と。

はっきり言って怖かった。

わかっていることを言われることは、本当に辛い。

もうやめてやめて、と耳に両手を当てて、「ラーラーラー」と歌いたいぐらい。


あー。ごめんなさい、と誰にともなく言いたくなる。

実際、小さい声で、「ごめんなさい」と言ってたような気がする。

いや、絶対言ってた。


くすん・・・


実際、こんな自虐ネタを披露したくもないのだが、ちょっと堪えた。
わかっているだけに、堪えたのだ。


本当に、今や、まさに部屋の隅っこ。

部屋の隅っこに追い詰められた。

後は、とどめを刺されるだけだ。


刀がそこまで来た気がして、目をつぶる。


あ~。思えば私、最後までずっこけた人生だった。

何もかっこいいことはなかったな。

本当に階段から落ちたりしたもんな~(「ひとりオリンピック」と参照下さい)


と思ったら、いきなり、ふっと刀をおさめられて、


「別にうつつさんのことを特にさして言ってるわけではないですよ。

あと三日、頑張ってください」


うって変わった優しい表情で言われた。

ふぅ~。もう違う意味で、斬られた感じ。


脱力・・・・。


そうなんだ。

頑張れる人だけが必ず成果を手に出来る。

わかっている。

わかっているし、わかってたはずなんだけどな。


私の関ヶ原まで、あと三日である。

三日で何が出来るかわからないし、何もできないかもしれない。

でも、やっぱりあきらめないで頑張ってみよう。


白旗をあげずに、とりあえず討死覚悟で、刀を振り回そう。

そう思いながら、帰途につく。

やれるところまでやったら、だめでも来年に何かが結びつくかもしれない。


とぼとぼと歩きながら気が付いた。


きっと、これがサムライの優しい最終目的だったんだな。

試験が終わったら、合否関係なく、お礼を言おう。



桜水現実のサクラサク-赤ワイン