昔、会社に通っている頃、
「けっこうナイーブだからさ~」
なんて仲間と軽口を叩いて笑っていた。
そんな私達の姿を見て、躁鬱病のよっチャンは激昂した。
「そんな事、自慢にしないでよ!!」
いつもは一緒に笑って、
人一倍おちゃらけるよっチャンだったから、
一瞬シーンと静まった。
「よっチャン、冗談だよ、冗談」
「冗談にもしないでよ!ナイーブっていうのは、
心が老化してるって事なんだよ!」
あの頃は、どうしてよっチャンが怒ったのか
わからなかったけど、今になって思うのは
病院でそう言われた事があるんじゃないかって・・・。
一ヶ月前の個人面談の時、かんの先生が言った。
「勉強の方は問題がないんですけど、
かんちゃん、授業中に気持ちが悪くなったり、
お腹が痛くなったり頻繁にするので
担任と養護の先生とでスゴく心配してるんです」
かんが気分を悪くして早退する事は
3年生の頃からちょくちょくあったので、
私も心配していた。
でも4年生になって、早退する事はそんなになかったし、
学校で具合を悪くした事を一々言わなくなっていた。
「具合が悪いって言う時間を記録してみても、
体育や給食とも関係なくて、色んな時間に
気持ちが悪いって言うので、どうしたら良いものか・・」
私が思い当たるのは、あまり外で遊ばないことと、
4年生になってから宿題の途中で、
かんしゃくを起こす事くらいだった。
「かんは最近外で全く遊ばなくなっているので、
帰ってきたらお友達に電話して、
遊びに行くようにさせてみます」
とりあえず、そう言った。
解決の糸口を全く掴めなかった先生は、
「お母さんに相談して良かったです」
と言ってくれた。
勉強に不安があるかも、とも思っていたので、
家に帰ってかんに言った。
「今日の個人面談、先生が
かんはお勉強は わかってるから大丈夫って言ってたよ」
「えっ、ほんと?」
嬉しそうな かん。
いつもより笑顔が無邪気な気がした。
「ホントだよ。全然、心配ないって。良かったね」
「うん!」
「でもね、かんが授業中に具合が悪くなる事、
スゴく心配なんだって、
あんまり心配させたら可哀相だよね」
とりあえず、それは私の作戦の第一段階だったのだけれど、
徐々に、かんが学校で具合悪くなる事は なくなって行った。
最初の2週間は、
「今日は学校で気持ち悪くなったけど、我慢したんだ」
って言うのが続いたのだが、3週間目には
「最近、具合悪くならないんだ」
に変わった。
それまでは、かんがナイーブだから
何か起こると具合が悪くなるのだと思っていたのだけど、
ただ単に自分に自信がなかっただけなのだとわかった。
一つは難しくなった勉強に自信が無く、
一つはリレーの練習で早く走れない事に自信が無い。
「お勉強は大丈夫」
って一言が自信を生み、宿題のスピードも3倍に上がった。
お友達と遊びに行く事も多くなった。
人よりも敏感である事が
社会人として邪魔になることもあるだろう。
でも、それが取り柄の一つになる可能性も否めない。
素晴らしい絵を描く人も、素晴らしい文章を書く人も、
ある種 病的に敏感な場合が多いのだ。
私は親バカで、かんは右脳の人だから
他人に理解されなくても良いと思ってる部分があった。
ナイーブって言葉はとても便利で、
それだけで個性のように思ってしまう。
ナイーブな性格だから具合が悪くなってしまうって
私がまだ開き直っていたら、今回のかんの成長はなかっただろう。
子供の全てを認めて受け入れる事と、
子供の可能性をツブしてしまう事は紙一重なんだ。
ホント、子育てって難しい・・・。