２０２０年以降の温暖化対策を定め「パリ協定」で、「日本は１１月４日の発効までに批准

できない」見通しになったようである。米国や中国、欧州連合（ＥＵ）など「主要国のスピード

批准の流れを完全に見誤ったためだ」と首相周辺は述べている由。「官邸主導」が続く中、

政権中枢の関心が薄い課題に思わぬ盲点が生まれた形だといえるのではあるまいか。

１０月５日の参院予算委員会で、岸田文雄外相が「地球温暖化対策の新たな国際枠組み

であるパリ協定承認案の閣議決定を目指す」と表明したことで、パリ協定が臨時国会の重

要課題に急浮上した。年内発効が確実になる中で、日本の取り組みをアピールするため、

早期承認が必要となったからであろう。

「環太平洋パートナーシップ協定（ＴＰＰ）承認案」も抱える、極めて窮屈な国会日程の中で

「パリ協定」の取り扱いは焦点になりそうだ。

「国連気候変動枠組み条約の第２２回締約国会議（ＣＯＰ２２）」は、１１月７日に開幕する。

参院予算委で民進党の福山哲郎氏が「インドもＥＵ（欧州連合）も米中も批准を発表した。

日本だけ置いてきぼりではないか」と指摘すると、岸田氏は、日本も「実施指針」策定交渉

に参加していると強調したうえで「一日も早く締約国となって、締約国会議で責任を果たす

努力をしなければならない」と強調した。与党からも「会議途中からでも議論に参加できる

ように、早期承認すべきだ」との声が強まっている。

このため、政府・与党は補正予算案が１０月１１日に成立した後、ＴＰＰ承認案・関連法案を

衆院で審議する間に「パリ協定承認案も並行して参院で審議を進める」方針だ。民進党は

パリ協定承認には協力する姿勢で、自民、民進両党の参院国対委員長は１０月５日、国会

内で会談し、「パリ協定承認案を参院先議とする」ことで合意した。

ただし、既に締約国会議が開幕する１１月７日までの承認も厳しい状況のようである。

国際学会で自分の登壇時刻に遅刻した発表者はいったいどうするか。英国人は普段通り

喋り、時間が来たらやめる。フランス人は普段通り喋って、次の人の時間にまで食い込む。

イタリア人は雑談をカットすれば時間内に収まる。そして日本人は「遅刻はありえない」。

何事にも几帳面な日本人の国民性を映したジョークである。

とすればこちらはどうしたことか。地球の未来に関わる大事な決め事の場に、日本が遅刻

しそうなのだ。地球温暖化防止へ向けて、来月にも発効する「パリ協定」である。

協定は今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す。２大排出国の

中国・米国など主要排出国が加わる歴史的な枠組みだ。

この手続きで、日本は出遅れてしまった。協定承認案が国会提出されたが、手続きが間に

合わず、協定の具体的ルールを決める来月の第１回締約国会議に正式参加できない・・・。

排出量５位の日本が、冒頭から蚊帳の外に置かれそうだ。

パリ協定発効の動きは、９月の米中批准を境に一気に加速した。日本は、「年内の発効は

難しそう…」とみていたようだ。ところが、そもそも日本は、議長国を務めた５月の伊勢志摩

サミットで「協定の年内発効に努力」で各国と合意したはずである。まさかの出遅れは国際

社会の目にどう映ることだろう。

「パリ協定」承認案は臨時国会の焦点に…