ペイント界の挑戦  スパニャ日記!!



明けましておめでとうございます☆




僕の周りには、ケムリで覆われて何も見えない、、、。


ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!


聞こえてくるのは、スピーカーから、ハンマーでなぐられた衝撃のように流れるバスドラムの音と、


キラキラと輝く電子音が、大音量で流れている。


辺りのケムリが少しづつ消えていくと同時に、ミラーボールが照明の光を受けて何方向にも枝分かれして、


僕の体に突き刺さっていく。


あの日から10日後の今、僕は人生をかけてこのダンスフロアにいた。




       KEMURI DAYS、、、。


KEMURI DAYS



第一章。


十日前。


僕は町で買い物をして家路に向かって歩いていた。


「ん? なんだ?」


ポタッ ポタッ


目の前のアスファルトが、みるみるうちにドット柄に変わっていく、、。


「くそっ 雨だ!」


お気に入りのリーバイスのGパンが濡れて、足にペッタリくっついて気持ち悪い。


「こんな事なら傘、、。」



僕は雨の日でも傘をささない、、、というかささないでいる。


小さい頃に親に無理やり見せられたホラー映画に出てくるガイコツを、傘の内側の骨組みを見ると思い出してし


まうからだ。


いい歳にもなってガイコツなんてと思うかもしれないが世間でいうトラウマってやつだろう、


今となっては傘はもちろん、ガイコツのROCK Tシャツなんて着てるもんなら失神しそうになる、、。


だからROCKは聴かないようにしている、ビートルズを除いては。


あの四人はスーツなので特別なのだ。



濡れた髪をかきあげながら真っ直ぐ歩いていると、サラリーマンらしき男がズブ濡れの僕をチラ見して横切って


いった。


「なんかムカツク」


特に理由はないのだが、スーツなんか着て俺バリバリやってます的な奴をみるとイライラしてタバコが吸いたくな


る。


ROCKもスーツもビートルズ以外はありえない!


ザーッ ザバババッ


雨が一段と降ってきた、


背負っているバックパックが雨の水を吸って鉛のように重く感じる。


タバコも吸いたくなった事だし、雨宿りして一服でもするか。



周りを見渡すと、ちょうど5メートル先に流行らずにつぶれたであろう洋服屋があったので、その入り口に立ち止


まった。


「ここにするか!」


ちょうど入り口の真上に屋根がついているので雨がしのげる。


店のショウウィンドウには、SALEの貼り紙がベタベタ貼りまくってあった。


中のマネキンが何も着てないのに得意げにポーズをとっている。


裸の王様みたいだ!



僕はGパンのポケットからタバコを取り出して火をつけた。


(シュポッ)


いつからこんなダメ人間になったんだろう、、。


学校をでて何もしたいこともなく流れで就職はしたものの、上司と上手くいかず(半分は上司が痩せすぎて、



ガイコツに見えてきたのがちょっと原因にも入っているが、、。)


勢いで辞めてはみたものの、やっぱりする事も金もなく毎日を無駄に過ごしている。


まあニートってやつだ。


ただなんとなくニートって言っているが、ニートをちゃんと説明しろと言われてもよくわからない、


たぶん僕がそうだろう。


そのニートなんだが毎日が時間との闘いだ。



する事もないのでなかなか時間がたたない。


寝るのが一番なのだが1日、12,3時間も寝るとさすがに頭が割れそうに痛くなる、、、


で、今も頭が痛い。


(プルルルップルルルッ)


Gパンのポケットから小さく電子音がなった。


「いったい誰だよ!」



黒いケータイのディスプレイから見えるのは ユウジ の文字。


「やっぱりあいつか!」


僕はイヤイヤながらケータイを耳にあて通話ボタンを押した。


「ハイ、モシモシ」


「モシモシ、コウヘイ?あのさぁ、ちょっと今日いるんだけど持ってきてくんない?ぶっ飛ぶやつ!



カネはあるからさ!」


、、。そう僕は薬を売っている。



そしてこのユウジというのは一番の顧客であり、親友でもある。


「ちょっと今水害にあって大変なんだけどすぐいるの?」


どーせまた傘ささずに濡れてイライラしてんだろ!今日、DAYSでパーティーなんだよ、頼むよ親友だろ。」


DAYSというのはクラブの事で、このユウジというのはそこのDJをしている。


そしてこいつが親友を持ち出すのはこの話以外聞いたことがない、、。



「で、何処いるんだよ今?」


「駅前のLAND・コーヒー!カフェモカおごるからさぁ、頼むよ」


カフェモカって、僕がそんな子供みたいにコーヒーでつれると思ってるのかよ、、。


でもそれ以上に僕がカフェモカに目がないのもヤツは知っている、、、


なんかムカつく。


「わかったよ、いくよ」


結局僕は行く羽目になった。


ケータイをポケットにしまうと、タバコをもう一本取り出して火をつけた。


(シュポッ)


「今日はついてないな」


ため息と一緒に大きなケムリが雨の中に消えていった。