兄は不運にも脳出血で亡くなった
兄の突然死の連絡があり、慌てて病院に駆けつけました。ベッドの上で寝ている兄を見るとただ眠っているだけのようで、とても死んでいるようには見えませんでした。両親は取り乱していて話にならず一体どうなったのかと思っていると、看護婦さんが脳出血で亡くなったということを教えてくれたのです。脳出血は誰にでも起こりうるもので、若い人でも例外なく兄は不運にも脳出血で亡くなったということでした。
確かに若い人が脳出血で亡くなるという話はよく聞きますが、それが兄の身に降りかかってきたなどというのは全く信じられなかったのです。しばらくはそのまま起き上がってくるのではないか、明日になったら目をさますのではないかと思っていたのですが、それは現実のことにはならずあっという間に時間は去っていきました。
人が死んでからはすぐに様々な手続きをしなければならず、兄の突然死から二日後には葬儀が開かれることになったのです。葬儀の際も現実感が出てこなくて、まるで他人の葬儀に出席をしているような気になってしまいました。その頃というのは悲しさよりもいつまでたっても兄の死を受け入れることが出来ずに、実感がわかなかったのです。しかし、火葬場に行きこれから兄の亡骸が焼かれてしまうとなった時にここで永遠に別れることになってしまうと思うと、とても大きなショックを感じたのです。目の前に兄の亡骸があった時には綺麗な姿のままでしたから、そのまま生き返ってきそうな気もしていたのですが焼かれて骨になってしまえばもう二度とは戻ってこないということがわかりましたから、本当にここで終ってしまうのだということがようやくここに来て実感することになったのです。
焼き終わって骨になった兄は若い人らしく、立派な骨でした。それだけにどうしてこのような健康な骨の人が死んでしまうことがあるのだろうかと、人間の儚さを感じました。未だ兄の突然死が信じられないのですが、遺影を見るたびにもう戻ってこないのかと思うと不思議な気持ちになります。