平成30年(2018年)は西日本豪雨直後で、絵下山への車道が激しく被災したこともあるが、矢野から多くの犠牲者が生じ、物理的・精神的に実施が困難になった。インターネット上で、「心の狼煙」と呼ぶ、エールの交換を行った。
令和元年(2019年)は、復興を願う大会としたが、絵下山への車道が復旧工事中のため、安芸矢野ニュータウン中央公園で開催した。これはこれで、多くの人に来ていただくことができて、有意義であった。
令和2年(2020年)、車道の復旧工事が完成間近であったため、限られた車両のみ、登頂を許可してもらい、絵下山で発煙筒で焚く予定であったが、直前に大雨が降り、安全確保に課題があるということで、断念。急遽、スタッフのみが集合し、メンバーの耕地と墓地から狼煙を上げ、ライブ配信を行った。
そして、令和3年(2021)年、4年ぶりの絵下山狼煙となる。
前日となる7月16日(金)、まずは無線隊がスタンバイ。移動無線車両「のろしボカン号」を中心に、いくつものアンテナが立つ。14日、15日と広島各地では雷鳴が轟き、心配された。山頂でのアンテナ、降雨より落雷が怖い。この日、なんとか雷だけはおさまったが、常時強風が吹いており、時折、強い雨が降る。
雨が上がり、夕闇迫る絵下山頂はマジックアワー。神秘的な空は環濠的である。
オペレーターが集結し、交代でマイクを握りながら、徹夜の交信を続ける。夜は遠くまで飛ぶ、世界の電波を捉え、絵下山の力をアピールしたい。
そして、7月17日(土)、当日。午前7時ごろからスタッフが集まり始める。
早朝、安芸消防署のポンプ車が水槽に防火用水を溜めて、安芸消防団に引き継ぐ。
矢野東分団、矢野西分団、矢野南分団。地元消防団が全部そろった。
ライブ配信のリハーサル。司会はあきく魅力探見隊のHRさんと、やのみー探検隊のM副隊長。
私はディレクターと地上カメラ担当。K副隊長は狼煙周辺の支援を担当している。
コロナ対応として、昨年から取り組んでいる「ライブ配信」。今回は飛躍的に進化した。無線隊長の会社の取引先である「AYT」さんに全面的に技術協力をいただいた。
携帯電話の電波が薄い山頂では、通信容量を使うライブ配信は難しい。事前に何度もこの場所に来て、通信各社の電波状況を調べ、対応するWi-Fiルーターを使ってこれを可能にし、さらに、カメラ3台をスイッチできるように準備してくださった。
のろしマシン2号は3段積み。「煙龍」という名前がある。久しぶりなので、少し時間がかかった。
いよいよ開会式。
先だって、近年の自然災害の犠牲者の追悼と、コロナ禍の鎮静を祈って。黙とう。
実行委員長あいさつ。
このあと、広島市長、海田町長、安芸区長のメッセージが録画で配信された。
コロナ対策としてセレモニーは行わないことにしたため、ご来賓には事前録画によるメッセージをお寄せいただいた。
続いて、煙の番人TBさんインタビュー。
「こののろしマシンは、自宅に保管されているが、3年前の豪雨では砂を被った。初めて、こののろしマシンを絵下山で使える。感無量である」などの話をされた。
さらに、炎の番人YZさんインタビュー。
「一段目はロケットストーブの構造で、金属管とパーライトが入っている。二段目はドアが付いていて、ここから草を入れる。三段目は煙突になる。全体に鉄筋を通して固定してある」と、マシンの構造を披露した。
このイベントは、東京2020ゴールドスポンサーの東京海上日動火災保険さんに主催者に加わっていただくことにより、東京2020オリンピック・パラリンピックの公認プログラムに認証されている。結果的には2019から3回目となる。
聖煙ランナー到着。五輪の開会式を6日後に控えている。
狼煙の匠が消防団員を伴走者として、トーチを運ぶ。
トーチキス。炎の番人の最終トーチに転火。
そして、点火。マシンの焚口に火を入れて、薪を燃やす。
10時に向けて、カウントダウン。
ゼロで、草を投入して発煙。
無線隊長が操縦するドローンもライブ配信に動画を送る。
色煙も上がる。
黄金山の狼煙が見えた。その動画も、ライブ配信することができた。
コロナ対策として、ステージアトラクションも行わないことにしたが、毎回参加してきていただいたセクシーダイナマイト先生にもパフォーマンスの事前録画を寄せていただいた。少年タップダンサーズは、7年前の初回から参加しており、当時低学年だったが、すでに中学生に。
今回はオルガニート(手回しオルゴール)と、タンプダンスのコラボで、狼煙音頭をノスタルジックに演奏している。
さらには、恒例の書道パフォーマンス。
これも、安芸南高校書道部に事前録画をお願いした。学校でパフォーマンスを録画し、現場にはその際の作品を届けてくれた。
コロナで部活動が制限される中、発表の機会ができたと喜んでくれたそうだ。
そして、無線隊からアマチュア無線の成果報告があった。無線隊長のKSさんと高校生オペレーターがインタビューに答える。
もう一つ、若い人たちの話題。新しい狼煙ソングを、大学を卒業したばかりのバンドに作ってもらった。PR動画で紹介し、総集編でも使う予定である。
就職してそれぞれの道に進み、コロナもあって、集まることもなくなり、このままフェイドアウトしかねない状況のところ、リモートでの演奏録音を試みた。これなら続けられるかも、と感じる機会になったとか。
会場は記念写真。スタッフだけとはいえ、50人ほどの人がいる。
フィナーレ煙を上げて、消防団による鎮火式。
のろしマシン1号機では、ドラム缶に放水していたが、2号機には水が掛けられないため、炭を外に掻き出し、それに放水してもらった。
最後に、余った水を天に放つ「放水のろし」を見ながら、ライブ配信を終了した。
ライブ配信のダイジェスト版を、YouTubeにアップした。
その間にもFacebookには、狼煙仲間から多くの投稿が入ってきた。
動画投稿の割合が増えている。
各地の趣向をこらした煙を見ると、励みになる。とともに、感謝と絆を感じる。
ありがとう、がんばろう、つながろう。のろしリレーのテーマである。
今回の総集編動画。