世の中には勝負というものがある。勝負には「勝ち」と「負け」が存在している。もちろん勝負には勝った方がが気持ちがいいし、誇らしい。その気持ちよさ、誇らしさをかけて勝負しているのだ。最初から負けようとする勝負など存在しないのではないか。しかし、僕の住む近所で負けっぷりが激しい商店街があるらしい。プライド無しか。さっそく行ってみた。
■「負ける」ではなく「まける」
青森県三戸町へ来た。先に訂正とお詫びをしなきゃならないのだが。今日は年に一度の「三戸町名物 元祖まける日」とうイベントの日である。まけるというのは勝ち負けの話ではなく「おまけをする」という意味である。しかも町内のお店はほとんどまける。300年以上も前から続いているイベントもあって、近隣町村も真似をして「まける日」を実施しているが、三戸が元祖だぞ、だから「元祖まける日」とつけているのではないだろうか。「プライド無しか」と言って申し訳ない。三戸町は300年以上続く伝統とよりお客さんを楽しませるオマケにプライドを持っているのだ。
大雪の降りしきる2月上旬。この雪のようにどんどんオマケをばらまいてくれるのだろうか。話によると普段は9時や10時に開店する商店もこの「まける日」には朝6時とかにお店を開くらしい。お客さんはよりいいオマケをもらうためさらに早い朝4時とかにお店の前で開店を待つ。2月の上旬にだ。一種の修行かと思った。
その朝早い開店に合わせて写真を撮ってみたいと前日から準備をしていたのだが、案の定寝坊してしまった。
結局僕が三戸町についたのが午前10時。「まける日」にとってはピークを過ぎているのかもしれない。でもいいじゃないか、のんびり買い物してたくさんオマケもらおう、とポジティブな言い訳を自分に言い聞かせながら役場前の駐車場に車を停めて町内を歩きます。
■経営状況が気になるほどのまけっぷり
中心部にある商店街を歩くとお昼前でも人は多かった。きっと僕みたいに寝坊した人たちであってほしい。仲間が欲しいから。どんな事が行われているのか歩いてみることに。
どこを見てもまけているのである。プロ野球だったら球史に残る大敗、連敗記録更新である。ここ近辺の商店の経営状況が心配でならなくなる。それでも人々は次々に訪れ、おまけを求める。お店と客の勝負なのだろうか。
■さっそく負けてもらおう
こういう記事を書いていると「まける」だか「負ける」だかどっちの表記が正しいのかわからなくなってくる。そこらへんはなんとなくのニュアンスでお楽しみいただきたい。
まける日はいろいろな種類のおまけがある。値引きをしたり、アメ横のように商品を付けてくれたり、ある金額分購入するとクジで商品が当たるなど、お店ごとに嗜好を凝らしていて見てまわるだけでも楽しい。
いや、楽しくない。
今日は「まける日」だ。ぜひともお店と勝負してたくさんのおまけをもらって大勝利の瞬間を味わってみたい。
ふらふらと歩いてると「もうすぐで完売です!」とういうアナウンスが。話を聞くとティッシュが5箱で100円で限定販売している。平成のオイルショックかのようにたくさんの人が集まっている。なかなか100円でティッシュは買えない。ここは飛び込んで買いだ!
思ったよりもあっさり買えたが、僕の心境はまさに勝利をもぎ取ったそれだ。天使が舞い降りて僕の頭に月桂冠を載せてくれる。ありがとうみんな、初勝利だよ!
この調子でいろいろと勝たせてもらおうか。
■キングオブオマケ、現る
次に僕が向かったのは三戸町の文房具屋「マツデン」。僕の友人はこの町の出身で、学生の頃の彼はいい消しゴムを使っていた。その購入先がここだと聞いた。そんな文房具屋で大勝利を手に入れたい。
ここでは購入した金額でおまけも変わるらしいので、僕はノート2冊と修正テープ、約1000円相当を購入した。そのあと購入したレシートを見せておまけをもらうのだが、そこからがすごかった。
金額に合わせておまけの文具をいれるのだろうけれど、どう見てもホイホイ気前よく袋に文具を入れているように感じる。いつしか僕の購入した文具よりも量が多くなっていた。
後に帰宅してマツデンでの戦利品を調べてみたら、さらに驚いた。
天変地異とはこのことだろうか。明らかにオマケの量が多い。ノートと修正テープしか買わなかったのが申し訳なく感じてしまう。オマケだけでも1000円以上はするはずだ。つまり購入した分だけその金額分のおまけがもらえる。大量に購入した人は大量にオマケがもらえるのだろうか。フランスの人のように紙袋にフランスパンなどを抱えて歩いているように、三戸町の人もマツデンのビニール袋に長い定規とかを入れて歩くのだろうか。マツデンは三戸町の凱旋門だ。
■食べ物もまけまくり
お昼前だ、腹が減る。そろそろ何かが食べたい。
カツサンドを2つ購入して三角くじを引いたが末等で小さなチョコをもらった。ちなみに1等は缶ビール、いいなぁ缶ビール、お昼にカツサンドと缶ビールいいなぁと悔しがっていたらお店のお母さんに「寒いでしょ、休んでいきな」とココアをくれた。
そうですよね、こんな雪の降る寒い日にビールなんてね。やっぱり今日はココアですよね、とお母さんと話をしていた。人の温かさはまける日だけでない、毎日だ。プライスレスなのだ。
その他にもいろいろ買ってきたので家に帰って広げてみることに。
左からコロッケ、ウニごはん、チョコ、きんぴらパン、カツサンド
正直買い過ぎた。まける日マジックにかかってしまった。こんな量一日に一人で食べれない。だってラーメン食べたし。
結局全部食べてしまった。どれもおいしく、そしてお得。たくさんのお店にまけてもらい、勝利の戦利品とともに帰る姿はとてもすがすがしい。
■まとめのようなもの
三戸町の「元祖まける日」、人の温かさとともに人を喜ばせようとしているのが元祖なのではないかと思った。三戸町はかつて三戸城の城下町だったため商売人も多く、それが300年以上も続いている。そして2月の上旬になるとお店は負け続け、お客は勝ち続ける。最後にも言っておくが「まける日」というのは勝ち負けではなくオマケの事だ。でも勝った気がするのだ。また行きたい。