村上春樹訳『ティファニーで朝食を』を読み始めてすぐに、“赤名リカ”のことが思い出されました。



柴門 ふみ
東京ラブストーリー (2) (Big spirits comics special)


二人が似ているというのは、結構有名な話なのでしょうか?上記の“After word”で紫門さんは、次のように書かれています。


赤名リカは、草原を裸足で歩く女です。じつは、「東京ラブストーリー」が成功するか失敗するかは、赤名リカが読者に受け入れられるかどうかにかかっていました。

一つの賭け、でした。

でも、私は、どうしてもああいう女を描いてみたかったのです。十年ほど前、私の身近にいたある女性が、リカのモデルです。傷つけずに人を愛することができない女。嫌な女と言う人もいたけれど、私は彼女が大好きでした。どうしてか、魅かれずにはいられないのです。そのわけを、自分で確かめるために赤名リカを描いたのです。

H氏からアフリカの話を聞いた時、私の頭の中では、夕陽の中で笛を吹く彼女が立っていました。



これを読む限り直接『ティファニーで朝食を』とのつながりはなさそうですが、柴門さんが本も映画もご覧になっていないとは考えにくいです。前回引用したジョー・ベルつながりでいくと、上記の39ページ、和賀社長の完治へのせりふ ー


じつはな……昔 俺が惚れた女っていうのは赤名なんだ。

頼む、あいつをしっかり 受けとめてやって欲しい。

リカは 男に愛をぶつけてないと、 不安定で 危なっかしい女なんだ。
なんで おまえたちの仲が バレたか 教えてやろう。
赤名が急に 落ち着いて仕事を やり始めただろう。あれは男ができた 証拠なんだ。
我が社の 利益のためにも 永尾は赤名と うまくやれ。

あれのいく末だけが 気がかりなんだ。

親心というか…… 不良娘を持った 父の心境だよ。

中年男って、そんなもんなんだ。



はじめてこの漫画を読んだときには、和賀社長の存在はそんなに大きくなかったんですけど^^;

そうそう『東京ラブストーリー』といえば、そのドラマ版の主題歌『ラブ・ストーリーは突然に』の作者である小田和正。小田さんが映画を作りたいと思ったきっかけが ー


中学生時代に見た映画『ティファニーで朝食を』の主題歌でヘンリー・マンシーニ作曲の『ムーン・リバー』に大変感動し、初めてレコードを買い、「将来こんな素敵な仕事ができたら」と思っていた。

《Wikipedia - 小田和正》より




ひさしぶりに漫画を手にしたら、とまらなくなってしまいました^^
 
本にしろ映画にしろそれが自分にとって大切な作品となるのは、それをいつ読んだのか、あるいは観たのかというのがとても重要な気がします。

映画【ティファニーで朝食を】(1961)を、ぼくは十代に“名画座”で観ました。銀座に並木座という小さな映画館があって、当時確か2本立て200円くらいだったと記憶しています。もうずいぶん昔の話です。

観たのはその一回きりですが、印象は決定的でした。のちに、新潮文庫の『ティファニーで朝食を』(瀧口直太郎訳)を、さらにいつか読もうと洋書の『Breakfast at Tiffany's』も買い求めました。…でも、そのどちらも結局読むことなく今日に至っています。

思うに、映画の印象がそれだけ強くて、それをもしかすると損なう(?)のは嫌だなという気持ちがどこがで働いていたのかもしれません。

それが今回、村上春樹による“待望の新訳”が出るというので予約しておきました。


トルーマン・カポーティ, 村上春樹
ティファニーで朝食を


落田洋子さんの手による挿画、新潮社装幀室の装幀になるこの本は、おしゃれです。

まだ読み始めですが、ホリーをとりまく男たちの有り様がおもしろいです。ジョー・ベルのせりふ ー



彼女から何か言ってきたってわけじゃないんだ。そのへんが微妙でね。だからあんたの意見を聞きたかったのさ。飲み物を作ろう。新趣向のカクテルでね、ホワイト・エンジェルっていうんだ。(p.9)


おれはそんなみっともない真似はしないぜ。そしてホリーについていえば、あの子に妙なことをしようなんて、これっぽっちも思ったことはない。神に誓ってな。そういうややこしい考えなしに誰かを好きになるってことはちゃんとできる。しかるべき距離を置いて、その相手と友だちでいられるんだ(p.14)



ジョーにとって、ホリーは“ホワイト・エンジェル”なのでしょうね^^


ティファニーで朝食を


そして言うまでもなくこの猫も…。