もう、ずーっと前に母親が「すごくいい映画だった」と薦めてくれたのを、アマプラでようやく観ました。
本当にいい映画でした。
見ると、1987年のアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞した映画とのこと。
そんなに昔の映画だったのですね。
気がつかないうちにそんなに時間が経ったのかと驚きました。
人生なんて、本当にすぐ終わってしまいますね。
公式サイトでのあらすじは、こんな感じです。
19世紀後半、デンマークの小さな漁村で牧師だった父の遺志を継ぎ慎ましく生きる初老の姉妹。ある日、彼女たちのもとにひとりのフランス人女性がやってくる。パリ市の動乱(パリ・コミューン)で家族を失ったバベット。彼女はメイドとして姉妹に仕えるが、ある日偶然買った宝くじで大金を手にする。かつてパリのレストランの名シェフだったバベットは、賞金を使って豪華なディナーを計画するが……。
なんだか、これだけだとあまり面白くなさそうなのですが・・・面白いです!
映画の後半、自分をかくまってくれた村人への恩返しに、バベットは当たった宝くじの賞金をつぎ込み最高の材料をそろえて豪華なフランス式のディナーを作るのですが、それがとにかく興味深くて。
文字で書くとピカピカのグルメ映画みたいですが、時は19世紀の寒村。
電気もガスもない暗い厨房に、遠くフランスからさまざまな材料が運び込まれてきます。
ピヨピヨ鳴いているウズラたち、大きな氷の塊(冷凍庫などもちろんないので)、生きた巨大なウミガメ、牛の頭・・・。
信仰により贅沢を退け、ご馳走などと縁遠い生活をしている人々は、その様子を見て「魔女の饗宴」だと恐れ戦いてしまいます。
観ているほうも「こんな貧弱な厨房で12人分もの豪華ディナーが作れるのだろうか」と心配になってしまいます。
現代のフランス料理といえば勝手にお上品なイメージを持っていましたが、こうしてみると野性的で貪欲で、イメージ変わりました。
さて当日、一体何を食べさせられるのかと身を固くする村人たちにふるまわれる、贅を尽くしたフランス料理。
そのおいしさに、段々と皆が笑顔になり、心がほぐれていきます。
諍いのあった村人もいつの間にか仲直り。
厨房ではバベットが絶え間なく料理を仕上げながら、お手伝いの少年に次々に指示を出して給仕させます。
このお酒は背の高いグラスに注いで、このお客様にはお酒をボトルで置いてきて、と、給仕も料理の一部だというふうに。
そのバベットのかっこいいこと!
素晴らしい晩餐も終わり、大金を手にしたバベットはパリに帰ってしまうものだとばかり思っていた家主の姉妹ですが、バベットはお金がないのでパリには帰らないといいいます。
宝くじで当たった1万フラン(当時のお金で1000万円くらいらしいです)は、晩餐会の準備で全部使ってしまったというのです。
あぜんとして「私たちのために1万フランも使ってしまうなんて・・・一生貧しいままになるわ」という姉妹に、バベットはきっぱりと
「貧しい芸術家はいません」
というのです。
なんてかっこいい・・・
バベットは芸術家なのです。
姉妹も心を打たれて、「でも、これが最後ではないわ。絶対に最後ではない。あなたは天国で至高の芸術家になる。それが神の定めよ」といってバベットを抱きしめます。
ああ本当に、宝というのは自分の中にあるもので、どんなに不遇をかこっていても、その輝きを発揮できる時が来るんだと、感動するシーンでした。
それと同時に、自分の天分を自覚して、それを発揮して輝ける人が、とてもうらやましく感じました。
私もそんなふうに生きられたらよかったのにな・・・と思ってしまいます。
理屈抜きで幸せな気持ちになれる、素晴らしい映画でした。
映画が好きな方には文句なしにお薦めします。