ぴいなつの頭ん中

ぴいなつの頭ん中

殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

あったはずなんだ

ここにたしかに


何もしない時間が。



あの時間が高天原の夢を見させていた。

あの時間がわたしを豊かにしていた。

どんな本でも読みきれるって自信でいっぱいだった。どんなことにも興味がわいて、ドーパミンは知識欲で満たしていた。


あの頃、何もなかった。

たからものも健康も、なにもなかった。

片足で立つ文鳥のせなかに経年のぶち模様が走る。

今夜もきっとあらゆる動物の映像を眺めながら安らかな眠りにつく。

今はなんでこんなにたくさんあるんだろう。

きっと無くなったらさびしく苦しくなるもの。

とりいれるべきとされているもの。

栄養がだんだん狂ってきて、10kgのビタミンを背負ってたべきれないよと泣いているみたいなんだ。脳の代謝機能が落ちて、マクロがミクロになり点が散財して、頭の中は常になにかでいっぱいだ


何もなくてもよかったのはなぜなんだろう

1人の部屋で何もすることがないという声に

なんとなく寄り添えていない指のキラキラが気まずくて隠す、

きっとこの居心地の悪いかんじはみんなにも気づかれているだろう。

誰かに我慢させてまで生きていたくないから

ポキっと折れた部分があります

折れた先からはまだオレンジ色のぐじゅぐじゅが出ていて、目を守るためにわたしはみどり色の呪いを引き受けます


きらいなんじゃない

ただ、つかれてたのかもしれない

どうして占いなんて見てしまったんだろう。

きっと見なかったらもっと楽にしあわせだった。

多くを求めないできたない靴をはいて

いつまでも歩いていられたかもしれない


誰とも話したくない日があること

誰にも言いたくないことがあること

それは許されることだと教えてくれたのがあなたでした

しかしわたしはあなたの全部が知りたくなって

あなたの話したくない気持ちを許すことができませんでした


明日までもう待てない、たぶん夜中を削ってわたしは耳を傾け続ける。わたしが音になるかもしれないその時間を、もしかしたら届くかもしれないその時間を、心待ちにしてしまう、たぶん叶わず、何も誰にも伝わらず、ただただ折れたわたしの一部をきっと抱きしめているだけの深夜なのに。ヘッドホンがかなしく垂れ下がるだけなのに。



砂漠で

力尽きたポエムが

よりしろを探している


だれか

わたしになってくれまいか

わたしのかたちに

なってくれまいか


ポエムという言葉がカッコワライとつけるのには畏れ多すぎる神々しさを帯びる日まで

詩のためのやしろが

詩を祀る場所が

この国にはもっと必要だろう

独自の言語がこんなにもうつくしいのだから


ポエムは

だれとでも仲良くできそうな

なんでも話を聞いてくれそうな

地味で

ちいさくて

ぽっちゃりしてて

はなぺちゃで

まんまるな目をしていたので

起承転結はないのかとか

わかりやすさをもとめられたり

もっとこうしたらとか

それは君らしくないよとか

そんなの詩じゃないとか

なんか言われて

言われまくって

言葉によってむかついていたのでした

ポエムはむかついて

もうちらかしちゃおーって

神の力でおまえらに恥を植えつけた

恥がこころの風切羽をぱちぱちと折っていくので

おまえらはもう

何も語れない

詩の文脈は恥を捨てないおまえを救わない


だからよりしろを求めていた

けどなかなか見つからなくて

かわいた喉で、よりしろを求めていた

恥知らずの無敵の孤独な人

孤独の塊が夜な夜な制服姿のかれらを襲うこともあるけど

孤独にもいろんなタイプのキャラがいますので

もう失うものがないかなしみを背負っている

早く肉体なんかやめてしまいたいと思っている

隙だらけの傷だらけのよりしろを

捕まえては

「やっぱちがった笑」

そうしてポエムはよりしろを求めていた

飢えたちいさくてかわいらしいからだにただ瞳だけが光っていてそこには粘膜なんて何一つ見当たらないかのように


ポエムよ

怒り狂ったあなたがこの民族に恥を与えたというのに

あなたのせいでよりしろはこんなにも少ない

隠れてしまっている

何回も扉をたたく

いや、だって最初にポエムに必要もない意味や効果を求めてきたのは君らでしょ?

丸い瞳が赤色に輝き

ポエムにも血が流れているのだと気づく


ポエム、いいから早く辿り着いて

孤独な心に

先人たちが何をしたかなんて僕らの背負うべき原罪とは関係ないでしょう

りんごを一生食べないからってもうこの頭の知恵は消えないでしょう

ポエム、いいから早く辿り着いて

人がナイフを持つ前に

人が銃を手にする前に

ポエムの無意味がないと

ポエムのてざわりがないと

ポエムの余白がないと

宿主はことばをやめてしまうかも

ことばをやめて

血だけ流して

大陸を流れる大きな川をまたたくさんの血で染めてしまうかも

ポエム

お願いだよ

僕がよりしろになるから

恥ずかしいとかもうやめるから

僕は僕の国の言葉できみのそばにいられることに誇りを持つ

だからもうやめさせて

ポエムの余白を思い出させて

その余白に

きみのふところに

何より大事なのりしろがふくまれてんだろ

そこつなげれば

人はなんかもっとうまくいくだろ

だから

ポエム

早くこちらにきて

ぜんぶあげるから

どんな使い方してもいいから

早く僕をよりしろにして

僕の手を

握って

悪魔の声に耳を傾けよ

悪魔だけの声に

何を言っているのか理解せよ


弱者の声に耳を傾けよ

弱者のふりをしているだけの

声の大きな人に注意せよ

いちばんいびつで、いちばん迷っていて、

声のちいさいものにまず話を聞くのだ


戦場のメリークリスマスを吹く口笛

あれが聞こえてから

どうにもおかしいと思っていた

何回呼んでも答えがないから

あのひとは捕まったんだと思った


埋まらない寂しさを

私のせいにされている

緑地で野生の鳥たちの足音を聞いている

可愛くて眺めてたら逃げられてしまった

遠くから見ることもこわいみたいだ

だってカラスからみた人間なんて、ターミネーターみたいなものらしいから


思考の骨が折れてしまって

レントゲンを撮って全治80年、

小学校の算数から始めてくださいと医者は言った

私は怒ってシャーカステンを殴った

割っちまおうと思ったからだ

だけどそれは割れなかった

もう時代はパソコンなのだった

じょうぶな画面はヒビだけ 響いて

バカにつける薬を処方してくれるのは

あの医者だけだったんだけど

私がリンゴの枝を折ったその先でチョコレートを切ってしまったから

もう出禁だってさ

出禁なんて初めてでワクワクしちゃって

恥ずかしくって引っ越してわたし、もう知らない街に旅立つんです

どうせまた学校で会えるけどね

さよならの手紙は書かない

あんた私のことが嫌いだから


あんたがつけたたくさんの傷でわたし、

光るの

あんたも私がつけた傷を

忘れないで

忘れてもいいから

ずっと光ってて

 窓の外は湿ったびしゃびしゃの雪粒が、じっとりと重たく水分を抱いてガラスを叩いていた。

やっぱり思ったとおり、この地には自分の国よりもたくさんの雪が降るんだなと濡れたガラス窓を見つめた。私の目はこの環境に飽きてしまったことを隠すかのように、目の前の話し手と、その向こうにある大きなガラス窓をゆっくりと交互にとらえていた。

 彼は茶色のボーダーの長袖に重たそうなデニムジャケットを着こんだまま、暖房の効きすぎた部屋の中で汗をかいて縮こまっている。彼が私たちに電話をかけたのは数時間前。恐怖に震える声で私たちを呼び寄せた。

 

 彼の部屋にはだいたい背丈は同じくらいの、でもそれぞれ異なった種類の椅子がたくさん並べられていた。テーブルは一つ、そして彼は一人暮らしである。どうしてこんなに椅子ばかりがたくさんあるのかはよくわからなかった。彼は触ったらどろどろしていそうな汗をこめかみに浮かべ、言葉少なに私たちを迎え、椅子をすすめた。「好きなものを選んでいただいて、好きなところに座っていただいてかまいませんので」彼の堅い表情に似合わない言葉だった。

 

「この家に越してきて1週間が経ちました」

 ひとつしかないテーブルの蠟燭の火よりも、外の雪のほうがまだ明るく室内を照らしている。ここから見ると彼の目の下が黒ずんで見える。彼が重々しく話し始める。口元にゆがんだような微笑みがはりついているのが、恥ずかしさをあらわしているのか、それとも恐怖で落ち着かない気持ちをごまかしているのかわからない。私は手元のメモにさっとそのことを書いた。私から少し離れて左手側に座った助手が録音ボタンを静かに押す音がちいさく響いた。

 彼はこの家で体験した霊現象について話している。私は心の中で、これは病的なものなのか、それとも気のせいとか、科学的に説明できるものなのか、もしくは本当に霊なのか、考えながら彼の話を咀嚼する。同行している医者と看護師と霊能力があるというお笑い芸人は神妙な顔つきで彼の話に耳を傾けている。

「家でひとりで寝ていると、ミシミシ、と部屋の隅から音が鳴ったり、どたばたと天井で走り回る音が聞こえるんです」

 それは家鳴りとネズミじゃないかな、ここは築年数が結構長そうだし。私はこの重たすぎる天候と空気に耐えられず、そう軽快につっこみたくなる。自分の顔の前に蠅がたかっているような感覚が生じ、今聞いた話の重たい不快さをはらいのけたくさせる。私以外の同行者はただただ黙ってうなずき、口を開こうとはしない。私は不快感から気をそらそうとして意識を窓の外に向けた。雪はどんどんひどくなってきている。たしか医師たちと乗ってきた車はノーマルタイヤだ、帰れるんだろうか。あとどのくらいこんな話を聞かなくてはならないのか。彼の怪談がピークに至ったとき、看護師がヒッと息をのんだので私はその音に驚いてとびあがった。笑われるかと思ったが、だれも私に反応することはなかった。

 

 結局3時間ほど、彼の怪談を聞かされた。彼の話の間、彼以外は誰も自分の意見や思ったことを発しなかった。私は途中から集中を切らしてしまい、窓にぶつかる雪の数を数えたり彼の額の汗やジャケットの模様を目で追ったりしていたため、話の内容はよくわからなかった。そもそも、気合だけでここまで来てしまったのだ。日本語のリスニングは、日常会話でなんとかぎりぎりやっていけるレベルをわずかに下回っている。集団で話を聞くとき、私だけが聞けてない単語をいちいち聞き返すことはできない。居眠りしなかっただけましかもしれない。途中から場の並びを変え、彼と私たち全員が輪になって手をつなぐ時間があった。中心におかれた水晶玉に向かって医師がなにやらと話しかける。医療用語はわからなかった。霊能者はなにやらまた聞いたことのない歌のようなものを水晶玉に歌いかけ、そして照明が点滅した。彼らはそれを見て満足し、それぞれが手を離して、今日の会は終了となった。

 

「あの、さっきの人って、」

 雪がやんで安心した。私は助手席に座り、運転席で険しい表情をしてハンドルを握っている看護師に話しかけた。色の黒い、丈夫そうなショートヘアの女性だ。

「なんか病気なんですかね。それともほんとうに霊の仕業?」

 看護師は黙って車を運転している。小さい音でかかっていたラジオがきゅうにザーザーと雑音のみを流し、私の発言をかき消そうとする。 

 あの、と私がもう一度口にしようとすると、後ろの席の医師と霊能者が口を開いた。

 

「きちゃったね」

「ついてきちゃったねえ」

「シモムラさん、だいじょうぶだからね。そのまま運転に集中して」

「やっぱり、いたんですねえ」

 シモムラと呼ばれた看護師の手と唇がぶるぶる震えている。どうやらこの車に、さっきの彼の部屋にいた霊がついてきてしまったようだ。

「刺激しないように。まだ悪意はこちらにないみたいだから」

医師がやんわりと看護師に伝え、織田さんお願いします、と隣に座っている霊能者に小さく合図した。

「だから嫌だったんです、あの家、わたし」シモムラは小さい声でぶつぶつと言った。

「落ち着いて、シモムラさん。その助手席の霊はまだ自分が死んでるって気づいてないから刺激しないで」

 霊能者の呪文のようなやわらかな祝詞が車中を包む。安らかな気持ちが私を包み、私の意識はちょっと遠のいた。

 

言葉たち。


何を言っても見飽きた感じになってしまうこの倦怠感は10年目の春。

2017年からはじまったことを10年目だと言いたいのは、仕事キャリアにコンプレックスがある私の些細なマウントだ。

私とあなたは負けず嫌いなところは多分そっくりで、それ以外はだいたい全部違っている。


あの子のポニーテールはもうない。


世界中どこを探してもない。


あの子はそのまま、

でもあの子のポニーテールだけがどこを探しても、もうない。


言葉がどぼどぼと、ケガしたときに出てくる濁流のように、指先から溢れ出て戸惑うほどに溢れ出てこそ私ではなかったか。

わかりやすい言葉がいらない時にはわかりやすい言葉にたより、シンプルでなくてはいけない時に言い淀んでは誤解されてしまう。言葉に詰まる他人の必死さがとても愛おしいのに、しゃべれない自分はみにくいと思う。


忘れたくないのに空気だけがそこに漂っているその空気は言葉というテクニカルをはずれてしまっていて、どんなに説明しようとしてもすりぬけてしまう、だって煙みたいなものだった、それは前からそうだったじゃないか、大人だからぜんぶ掴めると思ってた私の方が傲慢だった。

こうしている間にもニューロンはどんどこどんどこ、あちこちに手を伸ばして増えて、30代の意味記憶の世界と世界を繋げていく。気持ちいい。繋がるのは気持ちいい。なんでも私に関係してる。世界は私で回ってる。みんな私のことを知っていて、みんな私のことを見てる。そう思いたい気持ちはきっと、スポットライトのうしろで多くの人が思い浮かべているけむりだ。


「あなたが好きすぎて苦しい」

そう言われて寄り添われながら、ああこれはきっと私がそうあってほしいと思って私に見せてあげている自己満の願望なんだと思う。

わたしに苦しみを押し付けていのちの電話であれと行動でしめしたかれと、執着にのまれて依存しているわたしと、何が違うというのだろう。思いの形は違っても、やっぱり板みたいにじょうぶなMOTHERを求めているだけだと、あなた自身を見ていないのだと、そういう点ではわたしもかれも同じだ。わたしはかれを見捨てた。あの人はわたしを毎日傷つけることにした。同じだ。目の前の現象を何でもかんでも繋げる愚行を見守りながら、グーの次はパーだとか、マークシートの回答が同じ3のまま何問も続くことはないとか、そんなレベルの関係性と同じレベルで気のせいだと吹き飛ばせればいいのに。解答がないのだから、証明もしようがない。途中式を書かせてもらえる場所もない。わたしが塗りつぶしてやぶいたからだ。


5年間で死のうとした回数ぶんだけ腹筋をしたら、たぶんわたしのおなかはちぎれて腐ってしまう、桜はまだ咲かない何回目かの現地で思う。


MOTHERでいられればもう少し幸福だっただろうか。SONが羞恥心みたいなナイフで習慣的に削り取った私の心はMOTHER向けではなかったの。返ってくる思いは私の削りかすに見えて、オキシトシンを見つけられなかったの。MOTHER、MをとったらOTHER、他人です。そう、母は他人だよ。そして、母は他人になった途端、きっと角度によっては誰よりも冷たい鬼のような顔をしている。Mが、見えなくしてることがきっとたくさんあって、これはホルモンとか薬物みたいな化学的な何かが作用している。

MOTHERをMOTHERたらしめているのは、生物の脳内で分泌と分解を繰り返されているM=MEDICINEだ。


ごめんね。MOTHERになれるだろうか。

もう少し優しくなれるだろうか。