『劇団俳小による「弟の戦争」』 | 翻訳家の毎日

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劇団俳小による「弟の戦争」を観てきました。

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イギリスの作家ロバート・ウェストールの書いた『弟の戦争』を舞台化したもので、湾岸戦争の始まった夏、イギリスに住む少年アンディにイラク兵の魂が乗り移るという物語です。

原作の邦訳を読んだのは、かれこれ10年近く前。劇を観る前に再読しようか迷いましたが、読まずに行きました。

改めて思いましたが、本当にすごい物語です。

現代は、世界のあちこちで起きている悲惨な出来事がテレビを通して瞬時に伝わってきますが、あふれるほどの情報に麻痺してしまい、それをリアルに受け止めること、ましてや、現地の人たちの苦しみに思いをはせたりすることなかなかできません。

繊細で感受性の強いアンディは世界の苦しみを自分のことのように背負い、精神を病んでいきます。一方、大人たちは、屋根のついた安全な家で惨事をテレビで目の当たりにしながら温かい紅茶を飲んでいるのです。果たして、そのどちらが異常なのでしょう?

この物語の素晴らしさは、私にはとても語れません。

ぜひ、原作を読んでください。私も読み直したいと思います。

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