山田太一さんの新作
「空也上人がいた」
特別養護老人ホームで認知症のおばあさんを
死なせてしまったかもしれないヘルパーのソウスケ
彼を支える女性のケアマネージャー、シゲミツさん
特養を辞め、ソウスケが新しく介護をすることになった
ヨシザキさんの三人の物語
ソウスケの心の葛藤、シゲミツさんの女性の心理、
ヨシザキさんの人間の欲望と本能
読者を不思議な世界へと引き込む山田さん特有の
小説に惹かれながらあっという間に読み終えた
その物語の中にソウスケが「空也上人」の木像に
会いに行く場面が出てくる
「空也上人」は平安時代の人で、皇室の出とも言われて
いるが、当時疫病が流行った京都で多くの死者が出た時
善人、悪人を問わず死者を供養したと言われている
鎌倉時代に作られた彫像は六体の阿弥陀仏の小象を
針金で繋ぎ、口元から吐き出すように作られている
ソウスケが「空也上人」の彫像を見たとき、上人の目が
光って、その光にソウスケが呆然と立ちすくむ場面が
あるのだが、本当に「空也上人」の目が光るのかどうしても
確かめたくなり、彫像のある京都の六波羅蜜寺に行った
お寺には国宝の十一面観音像の他、平安時代、鎌倉時代に
作られた多くの像があったが、その中に「空也上人」の立像
があり、本当に目が光って見えるのかと思いよく見ると・・・
確かに角度によって光を放っている
その目は見る人に何かを語りかけているような、そんな気がした
何故光って見えるのか?
ご存知の人もいると思うが
やっぱり不思議な彫像だった