興福寺仏頭…悲劇の仏さま | 奈良大好き主婦日記☕

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鎌倉在住
奈良や仏像が好きで子育て終了と共に学び直し大学院博士課程修了、研究員になりました。
テーマは平安後期仏教美術。

明日香村、山の辺の道等万葉集の故地が好きです。
ライブドアにも書いていました(はなこの仏像大好きブログ)http://naranouchi.blog.jp



キリリキラキラ
 
興福寺(旧山田寺)仏頭
(イケメンな角度)


彼の遠い視線の先には懐かしい山田寺があるのかしら…





今日のブログ記事の
サブタイトルを
「悲劇の仏さま」

にしたんだけど

「ヒデキ、感激~~!」を思い出しちゃった(いきなりなんの話?)





☆彡☆彡☆彡


奈良博の白鳳展では

今の期間

興福寺(旧山田寺)仏頭が、

360度ぐるりと
あらゆる角度から見られるそうで

仏頭くん、さぞや恥ずかしかろうテレっ とお察ししていますが


その仏頭くんについてです




細かい歴史はめんどくさいので
どこかにおゆずりするとして

1   興福寺東金堂と仏頭くんの歴史
2   うまくいかなかった鋳造

の2点に話を絞ります☆-( ^-゚)v






1. 興福寺東金堂と仏頭くん

ざっとですが、東金堂から見た建物 と仏像の歴史をたどってみます

仏頭は、もちろん山田寺にいらしたわけですから、この歴史の初めのころには当然出てきません

それが、いつ、どうして、興福寺東金堂に来てOMG 、頭だけになっちゃって泣き顔
いまは、東金堂にいないのでしょうかがっかり


①東金堂の建物1代目、本尊1代目
 
東金堂と本尊(仏頭ではない)の1代目は

神亀4年(720)に、聖武天皇が元正太上天皇のため、薬師三尊像の造立を発願し、東金堂を創建したところに始まります(興福寺縁起、興福寺流記)

この建物は1017年に焼失します火事
本尊は救出されましたあはは

②建物2代目
その後、建物2代目が建築されたようですが

永承元年(1046)に、建物2代目と本尊が焼失火事 ゆるキャラ (扶桑略記)


③建物3代目、本尊2代目
治暦3年(1067)には、建物3代目(扶桑略記等)と、本尊2代目(七大寺日記等)ができましたhi*

この時の本尊は定朝作ですバンザイエコちゃん イエーイ


そして、これらは、あの平重衡おこ によって、治承4年(1180)年に焼かれてしまいました(玉葉等)

( これ、興福寺は、いまだに恨みに思ってるよね・・・・おこ )



④建物4代目

元暦2年(1185)  建物だけ再建されましたが、仏像は未完成 (玉葉)


⑤仏像3代目

文治3年(1187) 山田寺薬師三尊像を奪いゴルゴ

東金堂本尊とする(玉葉)




おーい おーい おーい 事件です!事件です!バリバリ バリバリ

おまわりさーーん、どろぼうですよーーー(Θ_Θ) 

興福寺が、山田寺から薬師三尊を盗んでますけどー!




そうこうしている間に、
文和5年(1356)  東金堂・五重塔、落雷で焼失(嘉元記等)火事 びっくり びっくり
(強奪された仏像はまだ無事汗1 )


⑥建物5代目
応安元年(1368) 東金堂、上棟(同上)
応安2年(1369) 東金堂本尊(山田寺からの盗品)を、食堂仮殿から移す(同上)


応永18年(1411) 東金堂・五重塔、落雷で焼失火事 (火事ばっかりだね)
       
   東金堂本尊も焼失(東院毎日雑々記等)ムンクの叫び 
 ここで、頭だけ焼け残り、
 「仏頭の誕生」
となるわけです


⑦建物6代目、本尊4代目

盗んできたものについては、もうわすれてしまったのかがーん

応永22年(1415)には、東金堂に、食堂から脇侍像を戻し(今も2体だけ、須弥壇とサイズが合わないで立ってるやつね)、しい本尊薬師像を安置(なぜか、ちょっとムッとするわねゴルゴ )


そして、時は流れ・・・・

⑧昭和12年(1937)  東金堂本尊台座下より、仏頭と銀製仏手が発見される泣き顔

それまで、忘れられていたわけだ・・・・・・・・・可哀想に・・・・・泣き3 涙





2 うまくいかなかった鋳造            

一般的な銅像の鋳造方法は↓このような段階を経るようです(造ったことありませんけど)
(これは、朝日新聞出版『国宝の美   彫刻3 白鳳・天平の金銅仏』よりとりました)
 
①中型(なかご)をつくる
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②ロウ原型をつくる

荒土から、型持を作り出す
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型持は、外型とのあいだの隙間確保の為に作り出される(あとで、この部分はへっこむので、銅を嵌める必要がある)



笄(こうがい)=銅釘を打ち込む
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銅釘も、外型がずれないように、打ち込むもの

これは、銅で出来ているので、銅を流し込んだら、一体化する
 


蜜蝋(蜂蜜のロウ)をうすく、中型に塗りつけ、形をつくります
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↑なにやら、イケメンの予感…ニコニコ

蜜蝋の厚みは、型持の高さまで



③外型をつくる
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↑型持は露出してるのがわかるね(真四角の黒いやつ)
(もちろん笄も飛び出ている)

おデコのあたりの型持を覚えておいてね




中型と外型の間に溶けた銅(湯)を流し込むために、湯道をとりつける
{7A4C752E-908D-419A-BDE5-6565D11617DA:01}

↑ああ、イケメンになんてことを!プンプン


外型で覆い、補強
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④鋳型を焼いてロウ原型を溶かす
{1F5D4BA3-90D4-45EE-994D-48315320EE2F:01}
蜜蝋を高温で溶かしだす
するとそこが空洞になる



⑤銅を鋳込む

蜜蝋が溶け出た部分に、銅を流し込む
{4C3FE8E3-F127-467D-8789-20836D43E3BD:01}
熱そうだし、暑そう・・・


銅といっても、正確には銅と錫などの合金らしいよ(文系の私には大して違わないように思えますがね…)


 
⑥割り出し

冷めたら、外型をこわす
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この中に、イケメンが・・・・




おおっ!!!!
{F43C4D9A-AD07-4843-8AE6-089512963D2A:01}


 
⑦仕上げ

後は、余計なものを取り去って
美肌にしあげたら
できあがり!

{3399EE1C-47C4-427D-ACEB-EA51BBCD8A82:01}



…やっぱり、銅製って大変だね~滝汗

これが、大仏レベルの大きさだったら、どうよ?と思いません?

やっぱり、国家的な事業だよなあ、、、そして、行基の手も、猫の手も借りたくなるだろうなあ、、



大仏1 大仏1 大仏1 大仏1 大仏1



で、山田寺の仏像制作現場では
これが実際には
うまくいかなかったようですガーン





↓ 以下、ざっとみます

①後頭部の巣
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頭の一番下の部分にポコポコ穴が開いています

これは、溶けた銅の中のガスが頭部に上がり、
そのまま冷えて気泡の穴となったものです


構造図でその部分を見るとこう↓
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②お顔

一方お顔はどうかというと
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やだ~、美肌じゃん

顔面は、エステにでも行ったのか?


実は、もともとは、ブツブツだったようですよ
アイドル並の修正がはいったわけだ・・・
(この修正を、「嵌金」というようです)



この修正のわけは、デートに行くためにおしゃれをしたわけではなく
後から、金メッキ仕上げをするため地金を整えたということらしいです
(それを人間でやれば、下地クリームとかコンシーラーを塗るってことだわね)



③おでこのラインと髪の毛

ところが、ですね

このおでこと、生え際、頭部を見てください
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おでこ…と、
よく見ると、生え際ラインのちょっと上までつるつる


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これに対して、ボッコボコの頭部(螺髪がとれたの?)と、両目目には
布目の跡があります
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↑ クオリティの低すぎる絵あはは

布目はわざわざ、たたいてつけています



④失敗した鋳造    (°д°;)

銅像の鋳造方法は、先ほどの写真のとおりですが(やったことないけどねキョロキョロ)



実際は、内型と外型がズレて
失敗してしまったようですがーん ドキドキ バリバリ 



型持は蜜蝋と同じ厚さになるはずです↓
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成功例のイメージ図は
↓ こんな感じになります
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中型と一体の型持が外型にくっつき、
すき間(蜜蝋があったところ)を
熱い銅が流れてくる

(だから、出来上がると、型持の形に、四角い穴があく)

…はずだったのに…ガーン



…実際は、この像は
何らかの事故で、中型と外枠がズレちゃったドキドキ ムンクの叫び バリバリ
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ズレの方向は、
上がわ、後ろ側へ向かう方向



その結果、
頭のてっぺんに穴があき、
後頭部が薄い
あ、毛髪の話じゃないですからねゆるキャラ   銅の厚みの話ですよウキウキ

後頭部は薄いだけじゃなくて
型持が飛び出す!ガーンひぇ~あせる

逆に、顔の面は厚くなる




上から見た頭部↓

正面が厚く(いわゆる、面の皮が厚いタイプか?)
後ろが薄い(だから毛髪の話じゃないよ)
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後頭部には、型持の貫通孔が↑


そして、本来の首(破線部分)もズレてしまった




↓後方向にずれたから、
中型の首回りにひび割れが入り、銅が入り込んで湧きあがった
 
image 

こうやって、喉に差し込みがはいったから

頭部が2、3センチ、上に上がってしまったわけ

そして、頭のてっぺんに穴があいた!汗1



これ、現場でけが人でたよね?きっと





おデコ部分の型持は、上方向にずれたためか
つぶされて大きくなって、露出

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よく見ると痛々しいのねえーん




⑤顔面がつぶれる
今までは、山田寺での制作段階での「悲劇」でしたが

当初はカラダもありました



頭だけになったのは

興福寺の火事のせいですから…



興福寺の火事の熱い火のせいでメラメラ

銅製の彼はぐんにゃりとなってしまい、


重い頭が大福餅のように

ぼてっとおちて潰れて

顔が歪んでしまった・・・
叫び




そして、傷ついた頭部は、

長い間、

東金堂の須弥壇の下に押し込められて


昭和の時代まで

人々に忘れ去られてしまった・・・



黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花

 
こうやってよく見ると


仏頭くんの半生って

踏んだり蹴ったり

だったわけね…汗汗



まさに

悲劇の仏さま…






山田寺で

この仏像が作られた経緯については

省略しましたが



それにしても

仏頭くん


レ・ミゼラブルo(;△;)o



な半生でしたね!




ちゃんと成仏しろよ!(って、これ以上どうやって成仏したら…はてなマークはてなマーク)



(文中の資料は、松田誠一郎先生の講義のものです)