呼吸が日に日に不安定になってきてる。医師からは、いつどうなるかわからない状況だと言われた。ここ最近は、医師から連絡がくるたびに病院にかけつけていた。耳もとで呼ぶと、何かを言いたそうに少し声を出そうとする。いいよいいよ、十分頑張ってるよ!
手を握ると、たまに握り返してくれもする。
オカンと俺は性格が似てるから、何が言いたいのか何を思ってるのかわかる。それだけに悲しくてならない。「ほんと迷惑かけてごめんなさい。家のこと、お父さんのこと頼むね」って。
息子の悲しんでる姿は、たぶん見たくはないだろうし、最後まで強い俺(息子)でいなければならない。そう思う。
オカンの予後を宣告された以上、行き場のないツラさを抱きながらも、前に進まなければならない。やりたくはないがオカン名義の切り替えや介護用品の返却など。二度とこの家に帰ってくることはないんだと思うと涙がでる。

病院に顔をだす。そばにいるよって、手を握ると微かにうなずいてくれる。一度でいいから昔のように話がしたい… もう無理やんな。

帰る時は、いつも生きてるオカンを見るのはこれが最後だと強く思ってる。後悔がないように。

あとの事は心配すんな!って心で伝えてる。もう来るべき時が来たとしても俺が一番冷静に、そして強くいようと思う。親父の為にも。
オカンの状況を知って、親戚が見舞いにくる。ありがたい。はげましの言葉を頂く。でも、何にも響かない。決してその人がワルいとかではなくてね。

「人間はいつか死ぬんだから~」「気持ちを切り替えないと…」「よく頑張ったよ」「大変だったろうね…」

何も響かない、何も変わらない。よく“相手の立場に立って”って言葉あるけど、それは無理。ここ数ヶ月誰のなぐさめも耳に入らない。でも嫁さんや娘の眠ってるオカンへの『ばぁば』って言う言葉や、親父の涙を浮かべた『がんばるしかないな…』って精一杯の声には心が動かされる。

はやく俺自身がこの無気力な状態から脱却しなければいけない。でもその方法がわからないんだよ。家族は大事。心からそう思う。オカンのおかげで、家族を大切にする意味を教えてもらいました。もう少しだけ頑張ってくれな。