日米合同原子力防災訓練を視察して | 神奈川県議会議員 永井まさと オフィシャルブログ

日米合同原子力防災訓練を視察して

昨日市内の某企業前にて放射性物質の作成を中止せよといった横断幕を掲げている一団を目にしました。

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原子力の安全性(危険性)については東日本大震災後さまざまな形で考える機会にあふれています。しかし、現実的には我々はどのくらい対策ができているのだろうか、と疑問を持たざるを得ない気持ちにかられることが多いのではないでしょうか。私もそう思っているものの一人です。

各市町村で策定される地域防災計画の中に原子力防災計画がありますが、これは災害対策基本法が根拠法となって策定される法定計画であり、市町村にとっては義務となります。

薩摩川内市や高浜原発の問題は原発立地から30キロ圏内の自治体は原子力防災計画を策定しなければならないにもかかわらず、原発再稼動に対してその圏内にかかる自治体の意見を聞くか聞かないかは法的に定められていないのです(実質聞かなくて良い)。鹿児島においては再稼動については実質的に鹿児島県と薩摩川内市の再稼動同意のみが取り上げられ、他の周辺自治体は意見が言えず、防災対策は作らなければならないという状況なのです。

本市でも風水害や地震などとともに原子力災害への対応として横須賀市地域防災計画原子力災害対策計画編が存在しています。本市の場合は原発ではなく、原子力艦なので他の自治体とは状況は異なりますが、災害時は原子力災害であることに違いはありません。

問題は、国の防災基本計画において、原子力発電所等での事故への対応を踏まえた各種の対策について規定されているのですが、原子力艦については対象になっていないことです。そのため、屋内退避の基準について、原子力艦に関する災害の場合は国の考え方が固まっていないということになります。

本市は国の考え方についてはっきりさせるよう再三要請を行っています。

原子力艦に関する地域防災計画についての要請結果(2014年8月25日)

しかし、原子力艦が年間200日以上に渡って寄港する本市としては、選挙や政局で忙しくていつ決まるのかわからない国の判断を待つのではなく、早急に本市独自の基準を設けることも市民の生命や財産を守る主体としての重要な責務と言っていいのではないでしょうか。

さて、去る12月17日に日米合同原子力防災訓練が行われました。2007年に始まり、今回で8回目。


消防庁舎4F災害対策本部室


市長、市民安全部長、各関係機関の連絡員が座る席


横須賀で日米合同原子力防災訓練 市長「同時訓練、難しい」(東京新聞)

米海軍横須賀基地など 原子力空母乗組員の被ばく想定 日米合同で防災訓練(神奈川新聞)

原子力艦災害が起きた際の被害想定や避難の範囲は日米で異なるため、市は二つの防災訓練実施を余儀なくされており、その意味では政治的意図で本当に効果的な訓練は行えない状況となっています。

平成26年度横須賀市原子力防災訓練について(2014年11月4日)

日米合同原子力防災訓練の概要と取材方法について(2014年12月4日)

このうち、日米合同原子力防災訓練について視察してきたので以下その詳細を時系列にて記します。(市役所消防庁舎4F災害対策本部室のモニターで時系列で確認した各事象について列記。多少筆者による加筆訂正あり)





09:30 空母ジョージワシントンで事象発生。ジョージワシントン内で漏水が発生。乗組員が軽度の被曝。周辺環境への放射性物質の放出はなし。
09:44 米海軍基地より市長に第一報。
09:49 横須賀市警戒本部を設置。
09:51 横須賀市から関係機関へジョージワシントンの事象発生、災害警戒本部の設置について連絡。各機関へ連絡員の派遣を要請。【連絡先】横須賀警察署、海上自衛隊横須賀地方総監部、県危機管理対策課、横須賀海上保安部、横須賀防衛事務所
09:52 モニタリングセンターへモニタリングの強化、モニタリングセンターからの連絡員派遣を要請。
09:53 横須賀市から市内の病院にジョージワシントンの事象、災害警戒本部の設置、負傷者情報について参考連絡。【連絡先】横須賀共済病院、うわまち病院、市民病院
10:00 横須賀市から米海軍基地に連絡員2名を派遣。
10:01 各機関の連絡員が横須賀市に到着。(横須賀警察署、横須賀防衛事務所、県政総合センター)




10:06 米海軍基地から連絡員が到着。(第7潜水艦隊司令部チャイルズ大佐、在日米海軍司令部ウィーマン大佐)
10:07 市連絡員からの状況報告。12号バース前に市の連絡員が到着。空母前に救急車が待機中。基地内に混乱はない。
10:10 市からプレスリリース(第一報)【内容】ジョージワシントン内で配管から漏水。漏水はただちに停止。乗組員1名が左脚を骨折。市は災害警戒本部を設置。モニタリングセンターへモニタリング強化を要請。各機関から連絡員が参集する予定。市から基地内へ2名の連絡員を派遣。
10:10 市連絡員から状況報告。空母から負傷者が12号バースに搬送された。これから負傷者の汚染検査が行われ、その後基地内病院へ搬送される予定。米海軍により12号バースの放射能物質測定が行われる予定。

ジョージワシントン前に待機する救急車

10:12 各機関の連絡員が到着。(原子力規制庁横須賀モニタリングセンター、海上自衛隊横須賀地方総監部、横須賀海上保安部)
10:13 原子力規制庁から状況報告。モニタリングチームは基地内の12号バースを中心にモニタリングを実施予定。
10:14 横須賀警察署からの報告。県警本部へ第一報を連絡済み。県警本部は警戒本部を設置。
10:17 海上自衛隊横須賀地方総監部からの状況報告。横須賀港に入港中の全艦艇に対し緊急出港できる体制を維持させている。また、車両による輸送支援の準備、衛生員の派出準備、ヘリによるモニタリングの準備を実施中。あわせて放射線量計を所持している艦船を含む部隊に計測を開始させた。値に変動があった場合は直ちに情報共有を図る。
10:18 横須賀海上保安部からの報告。情報収集のため海事関係機関等からの情報収集体制の強化を実施した。放射能測定船「きぬがさ」の即時待機を指示。横須賀港内の安全確保のため巡視艇はかぜを前進配備のため出港させた。
10:18 横須賀防衛事務所からの報告。従業員に混乱が生じていないか直ちに確認の上、報告する。防衛省内関係部局への情報共有に努める。
10:18 県政総合センターからの報告。県庁との情報共有を図っている。
10:20 米側からプレスリリース案、原子力艦事象データシート、従業員通報が送付される。【プレスリリース内容】ジョージワシントン内で、低レベルの放射性物質を含んだ微量の水が漏えいしたが、漏れはすぐに止められた。船員1名が作業の際転倒し左脚を骨折。低レベルの放射性物質が付着している可能性があるが、基地内に混乱はなく、公共の安全に支障はない。(従業員通報も同様の内容)
10:24 市連絡員からの報告。原子力規制庁のモニタリングチームが12号バースに到着した。
10:29 原子力規制庁によるモニタリングの状況報告。原子力規制庁を中心とするモニタリングチームを編成し、現在1号モニタリングポストで異常がないことを確認した。今後、12号バースで空母周辺のモニタリングを実施する予定。






海上と地上にて移動観測


原子力規制庁横須賀モニタリングセンター長からモニタリングについて説明を受ける


10:33 米海軍基地からの状況報告。12号バース前の防水シートの汚染を調査中。米海軍病院前にも防水シートを設置予定。
10:34 こども育成部からの状況報告。市内の保育園、幼稚園をはじめとする関係施設にFAXにて情報提供済み。近隣の施設には電話での情報提供も実施した。
10:35 教育委員会からの報告。市内すべての市立学校、所管施設に対してFAXにて情報提供済み。基地の近隣施設には電話での情報提供も実施した。
10:36 県庁、県警本部の連絡員が到着。
10:36 県庁連絡員からの報告。県知事をはじめ庁内関係部署および近隣市町村に情報提供を行っている。
10:37 県警連絡員からの報告。警戒本部を設置し、横須賀警察署と連携して情報収集体制を確立し混乱防止の対応に当たっている。
10:37 市民からの問い合わせについて。10:20現在、コールセンター等への問い合わせは全て電話で20件。内容は、市街地の危険性の有無、避難の必要の有無について。危険性、避難の必要ともにないと回答している。
10:45 市プレスリリースについて(第二報)。【内容】空母内での漏水は停止した。現在、原子力規制庁、米海軍によりモニタリングを実施中。負傷者は骨折のほか、微量の放射性物質が皮膚に付着している可能性がある。市は基地付近の学校、町内会等に情報提供中。基地内の放射線測定値は平常値である。
10:46 米海軍による負傷者への対応状況説明。負傷者を共済病院へ搬送する可能性がある。
10:47 米側から原子力艦事象データシートが到着。負傷者は米海軍病院で治療を受け、安定状態。今後、放射線汚染を測定予定。12号バースでの放射線測定値は平常値。
10:50 原子力規制庁から現在のモニタリング活動状況について説明。負傷者がいた場所のサーベイ検査の方法について説明。米側による放射線測定値は平常値。日本のモニタリングチームは今後米海軍病院で放射線量の測定予定。






↑ 範囲が広い場合、本当にこれで測定しきれるのか疑問ではある




10:52 市連絡員から状況報告。12号バースでの日米によるモニタリングが終了した。双方の数値ともに問題なし。
10:54 米海軍基地から情報提供。患者の容体は安定。基地内従業員計550名に情報伝達済み。基地内に混乱はなし。米海軍病院内でのモニタリングを実施中。
10:58 外務省、内閣府の連絡員が到着。
11:00 市から関係機関にこれまでの状況について説明を実施。
11:01 県から対応状況について報告。県知事、庁内、近隣市町村への情報提供を実施中。モニタリング体制の強化。
11:01 横須賀海上保安部から対応状況について報告。海上の制限区域への民間船等の接近は確認されていない。その他関係機関からの混乱等の情報もない。引き続き海上の安全確保に努める。
11:02 海上自衛隊横須賀地方総監部の対応状況報告。今後も市警戒本部から配信される情報を関係部隊に配布し、情報共有と即応態勢を維持していく。
11:02 県警本部及び横須賀警察署の対応状況報告。市内には特に混乱は生じていない。引き続き情報収集を行っていく。
11:03 防衛省からの対応状況報告。これまでの情報はすべて省内関係部局に周知され、また基地内従業員については特段の混乱はないことを確認した。
11:05 市連絡員からの状況報告。米海軍病院に到着した。負傷者は治療中。病院入口で汚染確認検査を実施中。
11:06 米海軍基地から情報提供。負傷者は左手に2.1ベクレル/㎠の汚染が確認されたが、除染が完了した。
11:06 米側からデータシートが到着。負傷者が胸の痛みを訴えている。共済病院は受け入れを承諾した。11:30に心臓の検査を実施予定。12号バースでのモニタリングの結果は平常値。基地内病院周辺のモニタリング結果も平常値。
11:09 市プレスリリース後のマスコミによる問い合わせ状況の報告。主な問い合わせ内容は、市民への情報提供の方法について。
11:14 原子力規制庁からの状況報告。モニタリングポストの測定値、12号バースの空間線量測定値、12号バースのコンクリート面、米海軍病院周辺のコンクリート面について、全て平常値であることを確認した。
11:19 市連絡員からの状況報告。負傷者の汚染部位の除染が完了した。負傷者に心臓疾患の疑いがあるため、治療のために共済病院へ搬送予定である。
11:20 原子力規制庁による合同モニタリング結果への見解。基地内での合同モニタリングが終了し、日本側のモニタリングチームがセンターに帰着した。モニタリング結果については、バックグラウンドレベル(平常値)で、米側のモニタリング結果とも照合し、環境への影響はないことを確認した。よって、モニタリング強化体制を解除し、通常の体制に移行したい。
11:24 安全性の確認と連絡員召喚の指示。今回の件について、最終的に人体や環境に影響がないと判断してよいか原子力規制庁に確認し、連絡員を戻すように指示。1名は市役所に戻り、もう1名は負傷者とともに共済病院へ向かう。
11:25 米側から、従業員通達(第二報)と米側プレスリリース(第二報)及び原子力艦事象データが到着。【内容】ジョージワシントン内で微量の放射性物質を含んだ水が漏えい。漏えいはすぐに停止した。乗組員1名が左脚を骨折。現在、容体は安定し、共済病院へ搬送。間もなく到着予定。乗組員の放射性物質は除染済み。放射線量はバナナ2本分に含まれる自然放射線量と同じ程度であり、放射能漏れは他には確認されていない。基地内業務は通常どおりに行われている。
11:30 在日米海軍司令官から市長に電話報告。市長が在日米海軍司令官クラフト少将から今回の件についての報告と謝罪を受けた。



その後、市連絡員1名が帰庁し報告。基地従業員の状況、放射線の調査状況、負傷者の除染状況等を確認してきたが異常はなかった。また、帰路において、基地内全体および基地周辺の市街地の状況を確認してきたが、特段の混乱は見受けられなかった。なお、もう1名の連絡員は共済病院に向かい、引き続き情報収集を行っている。
11:40 災害警戒本部を解散



福島第一原子力発電所における、あれだけ想定外という甚大な被害を被っている日本において非現実的な想定であることは誰の目から見ても明らかです。しかし、市長が言われているように、各関係機関の連携を確認するのが主眼であるとするならば、確かに各関係機関の連携を確認する訓練として実ある訓練であるとは感じました。

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