池袋にある東京芸術劇場で開催されている「世界報道写真展2015」の感想です。
今年、58回目を迎えた「世界報道写真展」。世界中のプロカメラマンが危険な場所に挑み、撮影した報道写真を対象に実施する、世界報道写真コンテストの入賞作品を集めた写真展です。

毎年、必ず行っている写真展です。写真から、昨年2014年に起こった事件やテロ、社会問題についていろいろと考えさせられました。

2014年は、ウクライナとガザ地区で武力紛争が起き、アラブの春は崩壊し、エボラ熱が猛威を奮いました。また、イスラム国と自称する集団が残虐な暴力に及び、シリアは引き続き、破滅の道に追い込まれました。

今回の大賞は、マッズ・ニッセン氏が撮影した、同性愛のロシア人男性2人を写した作品でした。この作品をはじめ、トルコのデモやウクライナ紛争といった社会問題のほか、ケニア北部に生きる野生のサイとサンブル族の若者の写真といった動植物の生命力を表現した迫力ある写真もあり、幅広い分野の写真が展示されていました。

1枚、1枚の写真から、社会的背景を読み取り、いろんなことを考えてきました。写真が切り取った現実の姿…そこから写真の中に込められた真実の想いを読み取ってきました。

特に印象に残ったのは、「現代社会の問題」の部で、組写真佳作に選ばれたファテメ・ベーブーディ氏の写真でした。この写真から、イラン・イラク戦争で息子さんを亡くされた遺族が今も苦しんでいることを知り、胸が痛みました。イラン・イラク戦争の戦地で、1万人以上のイラン兵が消息不明になったそうですが、今も行方不明の遺体の発見が続いていて、息子さんを待ち続けた母のもとへ移送されている作品でした。
今ちょうど安全保障関連法案をめぐって、いろんな意見が出てきていることもあり…。戦争について、改めて考える機会になりました。

もう一枚は、同じく「現代社会の問題」の部で単写真2位となった陳栄輝氏の中国の工場での写真でした。クリスマス用品を作る19歳の男性の写真だったのですが…。その男性は、農村から出稼ぎに来ていて、クリスマスが何かもよくわからないそうです。赤い粉じんから身を守って帽子を被り、マスクをしている写真でした。12時間以上働き、わずかな給料しか貰えないそうです。
中国は、経済発展の一方で貧富の格差も広がっていることを強く感じる写真でした。

今年も行って良かったと思いました。
世界の現状を知り、いま一度、平和とは何かを考えるきっかけとなった写真展でした。