毎年、必ず足を運んでいる『世界報道写真展』

観に行ってから時間が経ってしまいましたが、感想をアップしておきます。

毎年、『世界報道写真展』に行くと、自分の知っている世界の狭さを思い知らされます。

衝撃的な写真も多いのですが、今年も目を逸らさずに1枚、1枚の写真を観てきました。

心の痛み、深い哀しみを写真の1枚、1枚から感じてきました。


Going my way ~どこまでも続く道~-世界報道写真展


『世界報道写真展』は、毎年6月から11月にかけて全国各地を巡回する写真展です。(日本を含めて、世界中で200万人以上の人々が目にする最大級の写真展です。)

オランダで開かれた世界報道写真コンテストにより、今年も5247人(124の国と地域)の写真家が応募した10万1254点の中から、受賞作品が選ばれました。


今年、大賞に選ばれたのは、中東のイエメンで反体制デモの最中に傷ついた息子を抱きかかえる女性を撮影したスペイン人のフリー報道写真家サムエル・アランダ氏の写真でした。

米紙ニューヨーク・タイムズに掲載されたアランダ氏の写真は、「アラブの春」を代表する写真になっただろう・・・という説明が書かれていました。


今年、会場で印象に残った写真は・・・。

やはり、昨年日本で起きた「東日本大震災」の写真の数々でした。まさか、この写真展で、日本の写真がこんなに並ぶようなことが起きてしまうなんて・・・。(涙)


宮城県名取市を水没させながら、仙台空港へと向かう津波の様子を撮影した毎日新聞社の手塚耕一郎氏の写真。

水は内陸10キロの地点に及び、4万5000棟の建物と23万台の車両を破壊した・・・という説明書きと共に、この写真が展示されていました。津波が全てを飲み込んでしまったんだな・・・と思うと、なんと表現していいのか?切なくて、哀しくて・・・。周りにたくさんの人がいたけれど、皆さん言葉を失っていました。


がれきの中で泣いている女性の写真も胸が痛みました。(朝日新聞社のカメラマン・恒成利幸氏の写真です。)


悲しい写真が多い中で、AFPの千葉康由氏が撮影した「がれきの中で卒業証書を持つ女性」の写真に気持ちが救われました。大津波に見舞われた宮城県東松島市で、がれきの中から見つけた娘の卒業証書を手にする女性を撮影した写真です。素晴らしい写真だと思いました。

この写真は、「ニュースの中の人々」部門(組み写真)の1位に選ばれていました。

こちら で、この写真を見ることができます。


その他で印象的だった写真は・・・。

「一般ニュース」の部、組写真1位となったレミ・オシュリク氏が撮影した、リビア・アジュタビヤの町はずれのカダフィ軍による砲撃の跡の写真でした。


2011年2月半ば、リビア第二の都市ベンガジで起きた反政府デモは、カダフィ大佐の長期独裁体制への本格的な武力衝突に発展し、カダフィ政権と反政府派との間で激しい戦闘が起きました。

9月に、反政府派がほぼ全土を掌握。(1969年の革命以来、43年にわたって強権政治を敷いてきたカダフィ政権が事実上崩壊!)

その後、カダフィ指導者の出生地シルトなど一部地域でカダフィ派の抵抗が続きましたが、国民暫定評議会の部隊によりカダフィ指導者が拘束され、死亡したことにより、10月23日、ついにリビアの解放が宣言されて終結しました。

最新のリビア情勢は、ここ数日ニュースで報道されているように、今月7日、カダフィ政権崩壊後で初めて国会議員選が行われ、本格政権樹立に向け動き始めましたが、内戦中に出回った大量の武器の回収や民兵の武装解除は進んでいない状態です。日本では考えらないことですが、最終的な開票結果発表までに1週間くらいかかる見通しということで、まだ結果が発表されていないんですよね・・・。(地元メディアの報道などによると、ジブリール前暫定首相率いるリベラル派の「国民勢力連合」が優勢のようですが・・・。選挙後の新政府が、どうやって国内の武器を回収していくのか?課題は大きいと思います。)

池上彰さんのようにわかりやすい解説はできませんが、リビア情勢について簡単にまとめてみました。


非常に残念なことですが、この写真を撮影したレミ・オシュリク氏は、今年2月22日にシリアのホムズで、政府軍側の攻撃によりお亡くなりになったそうです。イギリスで有名な戦争ジャーナリストのマリー・コルヴィン氏もこの時の攻撃でお亡くなりになったそうです。ご冥福を心よりお祈りいたします。


他、昨年7月に起きたノルウェーの無差別殺人事件の写真など、2011年の歴史を振り返る写真がたくさん展示されていました。


そして、今年も会場の片隅で、スライド上映が流れていました。「がんばる家族の肖像」という題がつけられていました。

「東日本大震災」の後、今も仮設住宅で暮らしている方がたくさんいらっしゃるんですよね・・・。

ここで上映されていたのは、仮設住宅で暮らす被災者の方達を撮った写真の数々でした。

全日本写真連盟が主催し、仮設住宅の集会所に設けられた特設スタジオでプロのカメラマンや全日写連の会員の方が撮影された写真なんだそうです。

メーク室も設けられて、資生堂のメーキャップアーティスト(ボランティア)が、ヘアメイクもしてくれて撮影を行ったそうです。

この写真の数々に、感動しました♪

皆さん、笑顔、笑顔に溢れていて、とても素敵なお写真でした。

中には、遺影を抱えていらっしゃる方もいらして・・・。

多くの方が、家族やお友達、親戚、職場の同僚・・・たくさんの方を失って、哀しく、辛い想いをたくさん抱えていると思うんです。仕事も失ってしまったり、大変なご苦労もされていると思います。

でも、頑張っていらっしゃるんだな~と、とても勇気を頂いた写真の数々でした。

改めて、写真の力って凄い!と思った映像でした。


『世界報道写真展』は、東京都写真美術館で8月5日まで開催されています。その後、全国を巡回します。

『世界報道写真展』公式サイト

http://www.asahi.com/event/wpph/