先日、『世界報道写真展』に行ってきました。


Going my way ~どこまでも続く道~-世界報道写真展


前年(2010年)に世界中で撮影された報道写真を対象とした世界報道写真コンテストが開催され、125の国と地域、5691人の写真家によって撮影された応募作品10万8059点の中から選ばれた写真が展示されている写真展です。(今年の応募点数は、過去最高だったそうです。)


今年の世界報道写真大賞には、南アフリカの女性写真家ジョディ・ビーバー氏がアフガニスタン人の女性を撮影したポートレイトが選ばれていました。


アフガニスタンの女性が、夫による暴力から逃れて実家にいたところを反政府武装勢力タリバーンによって強制的に逃亡の罪で刑を宣告され、鼻と耳を削ぎ落とされてしまった衝撃的な写真でした。アフガニスタンでは、恥をかかされた男性が鼻や耳を削ぎ落とされてしまうそうなんです。男性は復讐心から、同じ思いをこの女性にさせようとして行ったようです。


この女性は、その後、援助機関と米軍によって保護され、現在はカウンセリングと再生手術を受けた米国で暮らしているそうです。カウンセリングによって、少しでも心の傷が癒せていますように・・・。ビーバー氏は、「尊厳に満ちた女性を撮りたかった」ようです。

とても綺麗な女性なんです。だからこそ、残虐さが際立って見えるというか・・・美しさと恐怖が共存して見える写真でした。


大賞のこの写真も衝撃的でしたが・・・私が一番印象に残った写真は、この写真と向かい合って展示されていた「現代社会の問題」の部で2位となった「オレンジ剤(枯葉剤)の後遺症を患うベトナムの少女」の写真でした。


ベトナムのダナンに住む少女の写真でした。

ベトナム戦争中、米軍はべトコン・ゲリラの隠れ場と食料を奪うため、森林や農地にオレンジ剤を散布しました。この枯葉剤に使われたダイオキシン化合物は毒性が持続し、子孫にまで遺伝しています。そのため、40年過ぎた今もその影響が続き、多くの人たちが後遺症を患い苦しんでいます。(ベトナム赤十字によると、両親がダイオキシンにさらされた約15万人のベトナム人が障害をもって生まれてきているそうです。)


その他にも、「ニュースの中の人々」の部で2位となった、告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジュ氏がロンドン大学でパネルディスカッションに参加した時の表情をとらえた写真・・・。アルジェリアの難民キャンプの写真、地震直後のハイチの写真(ハイチの病院で、子供の遺体を死体の山の上に放り投げる瞬間を捉えた衝撃的な作品がありました)、メキシコ湾での海洋石油掘削基地の原油流出事件の写真、チリの鉱山落盤事故の写真・・・。


そして、今年の「世界報道写真展」では、3月に起きた東日本大震災の被災地の現実を伝える写真がスライド上映されていました。

「3/11 Tsunami Photo Project」の映像と、朝日新聞社のカメラマンや記者が撮影した写真のスライド上映でした。

「3/11 Tsunami Photo Project」のバックには、坂本龍一さんが作曲された「kizuna world」という曲が流れていました。

下記、講談社の「3/11 Tsunami Photo Project」公式サイトで、「世界報道写真展」で流れているスライド映像と同じ動画を観ることができます。

http://www.kodansha.co.jp/311/index.html


スライド上映されていた会場の一角には人が溢れていて、皆さん被災地の映像に言葉を失い・・・し~んと静まり返っていました。胸が締め付けられるような想いで映像を観てきました。

今も、世界中から集まった写真家のみなさんが被災地で起きている真実を記録し続けていらっしゃるそうです。


まさか「世界報道写真展」で日本の映像を観ることになるとは・・・。毎年、必ずこの写真展に足を運んでいますが、今まで観てきた中で、今年の写真展が一番辛く感じました。来年は、もっと辛いかもしれません・・・。


この写真展に行くと、目を背けたくなるような写真がありますが、写真は真実を物語っているんですよね・・・。

世界で起きている現実・・・真実をしっかり受け止めないといけないと思います。


「世界報道写真展」は、1枚の写真が伝えるメッセージの力や、 写真の真髄について考えさせられる写真展でもあります。

★世界報道写真展の公式サイト

http://www.asahi.com/event/wpph/