昨日、東京都写真美術館で『2009 世界報道写真展』を観てきました。Going my way ~どこまでも続く道~-世界報道写真展

『世界報道写真展』は、オランダに本部をおく世界報道写真財団が開催する、プロの写真家を対象にした「世界報道写真コンテスト」の入賞作品で構成する写真展です。

52回目を迎える今年のコンテストには、124カ国から過去最高の5,508人、9万6,268点の作品が寄せられたそうです。今回は、そのなかから選ばれた入賞作品約200点が紹介されていました。


昨年、世界各地で起こった真実が、写真に映し出されていました。

会場に入るとすぐ、世界報道写真大賞を授賞されたアンソニー・スアウ氏の作品がありました。

(→チラシの写真にもなっていますが・・・。)

この写真は、アメリカの経済危機―立ち退きを言い渡された住民が家に残っていないことを確認してまわる警察官ロバート・コール・・・。タイム誌に掲載されたものです。

他にも、アンソニー・スアウ氏の作品で、アメリカの経済危機を映し出した写真が何枚もありました。

金融危機に直面する米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長とドナルド・コーン副議長が、ワシントンDCの事務所で話し合っている様子が、映し出された作品もありました。


カリー・シェル氏のバラク・オバマ氏の、米大統領選キャンペーンの作品も印象的でした。

バラク・オバマ氏が奥様と肩を並べて、窓際の席に座っている写真がありました。(座っている椅子の後ろが鏡になっていて、オバマ氏が奥様をしっかりと抱きかかえている様子も、しっかりと映っていました。)


中国・四川で起きた地震に関する、衝撃的な写真も沢山ありました。瓦礫の中から救出されている写真。地震で倒壊した建物から生存者を救助している作業の様子が撮られた作品。


北京オリンピックで、三段跳びキューバのアレックス・コンペ選手の着地する瞬間の写真・・・。


世界中で起こっている紛争で犠牲になった人たちの写真が何枚もあったり、現代社会の問題を映し出している写真もありました・・・。(シチリア島のメッシナのスラム街、フランスで強制的に家事労働させられている女性、イタリアの不法移民、ブラジルのホームレス・・・。)


そして、私が一番、印象に残った写真は・・・。

去年8月9日、ロシア軍の空爆で、犠牲になった弟さんを抱きしめて、泣き叫んでいる男性の写真。

写真から、男性の大きな叫び声が聞こえてきそうで、思わず写真の前で涙ぐんでしまいました・・・。


途中、土井敏邦さんの「ガザ攻撃」のドキュメンタリー映像が流れているコーナーがありました。

土井さんは、NHKや民放で、ドキュメンタリー番組をいくつも発表されていらっしゃいます。

(ガザ紛争は、2008年から2009年にかけて、イスラエル国防軍とパレスチナ自治区のガザ地区を統治する「ハマース」による武力紛争です。この紛争で、亡くなった方は、1300人にも及ぶそうです。)

この紛争では、市民に対して白燐弾などを用いた無差別攻撃、幼児に対する無差別銃撃が行われ、その犠牲となった市民へのインタビュー映像が流れていました。

この映像の中に、9歳のアマルちゃんという女の子が出てきました。アマルちゃんは、目の前でお父さんが射撃されるのを目撃し、その直後、家を襲撃されて、瓦礫の中で4日間を過ごし、奇跡的に助かったそうです。しかし、頭には、襲撃された時の銃の破片が残ってしまい、病院では手術は不可能といわれている・・・という映像が流れていました。視力の障害も出てきているそうです。最後に、大黒柱を失った一家で、兄弟も多いため、これから、アマルちゃんに十分な治療を行えるかどうかはわからない・・・というところで終わりました。アラビア語で、アマルは、“希望”の意味だそうです。アマルちゃんの未来はどうなるのか・・・。希望があるのか・・・。アマルちゃんが、どれくらい心に傷を負ってしまったのかを思うと、とても胸が痛くなりました。


今回の写真展には、正直、目をそらしたくなりような、衝撃的な写真が何枚もありました。

でも、チラシに、“今あなたが息をしているこの瞬間、世界には数え切れないほどの生があり、死があり、愛があり、憎しみがあり、喜びがあり、悲しみがあります。そしてその瞬間を1つでも多く取ろうと、シャッターを押し続ける報道写真家たちがいます。まだ知らない隣人たちの存在、思いから、どうか目をそらさないでください。”と書かれていたので、ちゃんと全ての写真を観てきました。

2007年ミャンマーで、日本人ジャーナリストの長井健司さんが撃たれて亡くなったことを思い出しながら、報道写真家が、身の危険を感じるような場所まで行って、どんな思いで撮った写真なのか・・・そういうことを思いながら、写真を観てきました。


昨日、自分は幸せだな・・・と思えるような映画(「eatrip」イートリップ)を観た後だったので・・・。余計に衝撃が大きかったです。

地球上・・・。私の知らない多く場所で、今も争いが起きていたり、多くの人が飢えていたり、苦しみや悲しみに満ちた日々を送っている人たちがいることを忘れてはいけないな・・・と強く思いました。
普段目にすることのないこのような事実を、写真がありのままに伝えてくれていました。


『2009 世界報道写真展』(8月9日(日まで))HPは、こちらです。http://www.syabi.com/details/wwp2009.html

東京都写真美術館のHPは、こちらです。http://www.syabi.com/index.shtml