書評無情の響きあり。 -3ページ目

いま、女として―金賢姫全告白 上・下

金 賢姫《キム/ヒョンヒ》, 金 賢姫, 池田 菊敏
いま、女として―金賢姫全告白

1987年、バグダッド発ソウル行大韓航空858便・ボーイング707型機を

時限爆弾で飛行中に爆破したテロ事件の北朝鮮工作員実行犯、

金賢姫の告白手記。こちらも実家より持ち帰ったもの。


当時、大変物議を醸した事件だったため、比較的記憶に

新しいがあの時からすでに20年経過。

にもかかわらず、北朝鮮の拉致問題(本告白により李恩恵女史の存在が

明らかに)及びその他の多くの政治的問題がいまだ大きな進展を

見せていない点はなんとも歯痒く、一方では北朝鮮の統治体制の

強さが見てとれる。


本書では、北朝鮮工作員の生活を細かに窺い知ることが

できるが、そんな中で垣間見られるイチ女性(というより女の子)としての

心情描写(ファッションについて、友達とのおしゃべりetc)が個人の犠牲の

上に成り立つ共産主義国家の実情をさらに浮かびだしていて何とも

やるせない気持ちになる。



しかし 近年、本事件は韓国の国家安全企画部が仕組んだ謀略ではないのかという

疑惑も浮上しており(実際、韓国国家情報院による事件の再捜査が決定)、

こうなると世の中で報道されているニュースの一つ々の真偽性も疑わざる得ない

状況で、何が何だか正直良く分からない。

一つ言えるとすれば、物事を常に表裏から見る必要がある ということであろう。

関連の書籍 も是非読んでみたい。

国境の南、太陽の西

村上 春樹
国境の南、太陽の西

先の連休に実家に帰った際に、

大学時代読んだこの本(本棚から顔を出す題名)に

何となく惹きつけられ再読。


思えば、購入時も“村上春樹”と

このドラマティック雰囲気?のタイトルに

引き寄せられてこれを手にとった記憶がある。



37歳でジャズバーを経営、妻と子供がいて、と

経済的にも家庭的にもそれなりに恵まれた主人公が

12歳 小学生の時、好きだった初恋の相手と再会して、、、

という内容。 



大学時代は“一つの小説”というさらっとした感じ(著者特有の

洒脱な文章表現によるところもありを持って読んだが

今回読んでみて“人間ドラマ”という側面を以前より強く受けた、

それは主人公の年齢に自身が近づいた ということもあるのだろう。



「太陽の西」について触れている箇所にある

「ヒステリア・シベリアナ」という神経症。無限の大地を耕し続けていた

シベリアの農夫が、ある日、沈んでいく夕日のその先(太陽の西)を

目指して歩き続け、やがて力尽き倒れて死んでしまう。


「ヒステリア・シベリアナ」と本書の内容に共通すること。

平凡な毎日の中で突然自分の信じたものに駆り立てられることもある、

が、そこで何が得られるかは分からない、、、

それでも自分の中の失われたピースを埋めるがごとく突き動かされる、

本書の主人公も(「ヒステリア・シベリアナ」も)

最終的には、一時的に幻を求めた ということであったのかも

知れないが、またそんなところに この小説に感情移入し、

その結果ウーンと呻ってしまう理由があるのだろう。

著者の狙い通りか、、、ちと悔しいが(?)、、。 



アドボカシーマーケティング

ado
グレン・アーバン, スカイライトコンサルティング, 山岡 隆志
アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

“アドボカシー(adovocacy)”は「支援する」という意味で使われている。

本書の帯にあるように 顧客の利益を追求し、その顧客に対してそれが

良いのであれば自社より他社の製品を薦めるべきである、かえって

その方が顧客との長期的な信頼関係を築くこととなり大きなメリットを

得られる というマーケティング戦略を語っている書。


「多くの選択肢の中で顧客メリットが大きいものを薦めるのが

最終的には自社の利益に繋がる」というのは日々の業務に繋がる部分も

多く(販売する商品の選択肢が多い代理店業、故か)非常に頷けるのでは

あるが、その分、本書からの新たな発見は期待以上には無かった。

 よく言われることではあるが、いかに顧客のパートナーとして選ばれるかが

今後のビジネスでは重要と言える。そのためには常に顧客の声に耳を傾け、

また時には どんなことをすれば喜ぶのか、問題解決できるのか、ということを

考える必要がある。


特にインターネットがこれだけ普及し、情報が容易に入手できる(CGMで今まで

聞くことが出来なかった意見も得られる)時代では尚さら本質が求められる、

これはBuzzマーケティングなどで結局はモノが良くないとクチコミの威力は半減

もしくは逆効果と言われるのと全く同様であろう。


生意気を言っているつもりは無いが、本書で語られてるのは、

至極当然の事と感じた。

しかし、これを“アドボカシー・マーケティング”と名付けることこそに

意味があるようにも思える。





ブッチャー 幸福な流血



アブドーラザブッチャー, Abdullah The Butcher
ブッチャー 幸福な流血―アブドーラ・ザ・ブッチャー自伝
愛すべきヒール、黒い呪術師 アブドーラ・ザ・ブッチャーが
67年の半生を書き綴った自伝。
未熟児として生まれた話、プロレスとの出会い、G馬場との関係、
テリーの腕にフォークを突き刺した理由、などプロレスファンなら
誰もが興味を惹く内容でアッという間に読める(2時間弱で完読)。

感想としては、

何よりブッチャー氏のプロフェッショナリズムに唸らせられた。

生い立ちが影響するのか、自分が最もイキる方法=最も儲けられる方法

(しかも息が長いのがリスペクトするべき点!)を常に考えたプロの

マネージャー?と言える。

幸福な流血という副題も何故か頷ける。



何を隠そう(全く隠してませんが)、

小学校時代、プロレスの熱狂的ファンで

プロレスラー名鑑でニックネームをシコタマ覚えたり

 ex.

   インドの狂虎 タイガー・J・シン

   人間山脈  アンドレ・ザ・ジャイアント

   ブレーキの壊れたダンプカー スタンハンセン

年に数回来る(しか来ない)興行に胸高まり

街に貼られているポスターを持って帰ったりする

少年であった。(不思議と中学入学と共にその熱は

次第に薄まり、その後全く興味ナシ、、、)


というわけで、本書を見つけるキッカケとなった

 “テキサスブロンコ” テリー・ファンク自伝  人生は超ハードコア!

 “美獣” ハーリー・レイス自伝 キング・オブ・ザ・リング

も早いうちに必ず読みたいと思う。


日はまた沈む

日はまた沈む
ビル エモット, 鈴木 主税
日はまた沈む―ジャパン・パワーの限界

こちらも実家の本棚より持ち帰った一冊。


英「エコノミスト」誌の東京支局長だった著者ビル・エモットが

日本国内がバブル景気に沸きあがる最中に

“日本はすでに、勤勉な貯蓄大国から消費大国、

生産者の国から消費者の国へ、高齢化社会へと
変貌しつつあり、今後凋落に向かっていく”
とジャパン・パワーの限界、日本のバブル崩壊を
最初に予告したと言われる書(1990年出版)。

誰もしていない中でバブル崩壊を予測した
論拠、着眼点に大いに興味を持って読んだが
何が根拠であるかはそれなりに多く述べられてあり
ポイントはイマイチ明確には理解できなかった。
(それだけ、当時日本の強さは光っていたのであろう)

何事も長くはその勢いが続かない、終わりはくる

(まさに“盛者必衰”、“おごれる人も久しからず”!)という

視点を持っている人が当時少なかった(のであろう)点は

今となってみれば驚かされる。この点は自身がいつも強く

惹かれるポイントであり、またどこかでその当時の状況を

深く学んでみたいと思う。


昨年、同著者によって、日本は“失われた10年”を経て

また大きく力を回復するであろう という内容の こちら  を出版した。

こちらも読んでみたい。





幸福の条件 ~武者小路実篤人生論集~ 

幸福の条件


武者小路実篤人生論集〈第4〉幸福の条件 (1966年)


先日法事で帰省した際に、実家の本棚に見つけ

持ち帰ったもの。


白樺派の代表的文人である武者小路実篤が

人生を実り多く生きていくための示唆を記した

人生論集 全5巻のうちの一冊(らしい)。


本書では「幸福について」、「道徳論」を展開。


・人が幸せに生きるためには。

・道徳はなぜ必要なのか?

というテーマを論じているが、いずれも内容は

現実に即し平明で自然、いわば当たり前のことを

述べている。これは当たり前の難しさというものが

存在する証であろう。


印象に残った箇所を2点

「幸福を感じるのは、自分が大きな愛につつまれていることを感じるときに

起こる感じである。一人一人の人間に愛されているというよりは、神とか、

天とか、自然とか、真理とかに愛されていると思うほうがやや正体に近い。

何かの為に役に立っている、何かに愛されている、恵みを受けている。

こう言う感じが幸福を味わわしてくれる。そう素直に感じられるだけの素質と

心の用意が必要になる」


「世の中には人生の妙味を考えたり、感じたりする必要なしに生きている

人が多いのは事実かと思う。人生と縁のない生活をして一生を終わる人

がいかに多くあっても、僕は人生をしみじみ味わって、まちがいのない

生活をしてゆきたいと思っている。何とかしてこの世に満足し感謝して

生きてゆき、また死んでいきたいと思っている。」


少し長くなりましたが、万物への感謝、人生観 という点で

共感を得たので。 (日々なかなか実行&意識できていませんが、、)

壮大なテーマな書で、書評まとまりないですが

新年一発目ということでお許しください、、、

意志力革命 目的達成への行動プログラム

ハイケ・ブルック, スマントラ・ゴシャール
意志力革命 目的達成への行動プログラム

「経営とは、実行し成し遂げる芸術である」という言葉から

始まる一冊。

まさに本書は 個人として、組織として“成し遂げる”ために

必要なことが書かれている。


読み切るのに月日を要したのは

前半内容が抽象的でイマイチ退屈だったからであるが、

書の中盤以降は非常に共感&参考になる箇所が多く

アッという間に頁が過ぎていった。

(後ろから読むべきだった、、、?)


組織マネジメントにおいて参考になる点がとても多いが

印象に残ったのは


 「ルビコン川を渡る」 

  モチベーションを超える意思

 

 「ノンアクションの罠を克服する」

  言い訳はいくらでも作れるが、

  ある人にとっては、それは言い訳に終わるし、

  またある人にとっては、乗り越えられなかった壁を

  クリアすることに繋がる。


 「活動領域に移動するための三つの戦略」

  ・竜退治 : 外部に敵をつくり、それを倒す。

  ・王女獲得 : 将来のビジョンを共有、それに向かって、、。

  ・王女の門に待ち構える竜退治 : 時としてその両方をバランスよく用いる。


このあたり。


頷きながら読んだ。

各章にある“まとめ”もとても使える。


実行し成し遂げて自分なりの芸術作品をつくりたい、という人には

オススメできる一冊!(だと思う and であった)。

瑠璃の海

小池 真理子
瑠璃の海

・先日の日経新聞の書評欄でこちら がとりあげられていた

・喫茶店の隣の席で著者のコトが話題になっていた

そんなときに品川駅の書店でこの本を見掛け購入。



バス事故で夫を失った女性と同じく娘を失った作家の男性が

悲しみと孤独の淵という共通の境遇から互いに魅かれ合い、

その果てには、、、 というストーリーの作品。



読み進むにつれて 渡辺淳一著の「失楽園 」がほのかに

オーバーラップ、、、人間の「生」「死」と「永久の愛」という部分に大いに

共通項が感じられる。

(失楽園を読んだ方の殆どはそう思うであろう)

個人的には とかく しがらみが多く、ともすれば“俗”の集約である

日常の生活だが、これこそがまさに生きるということであり、そこに

こそ万物への愛情が生じるものだと思っているので、失楽園を

含めてこの結末には一種の憧れを含めた共感がある一方で

最終的には違和感を感じるところに落ち着く。


失楽園と違い“凛”とした作品に感じられるのは、

まさに著者の作風なのであろう、その点は新鮮であった。

また、物事はすべて偶然ではなく必然なのである という

一貫した姿勢が窺えるのは 運命論者の自身としては大いに共感。



失楽園を読んだのが約10年前であるから、

自身の感じる部分が微妙に違うのは当然であるが

一方で同一部分があるのもまたこれが自分という同一の人間な

故かと思う。

自分が何を大切にして生きていくか という壮大なテーマは

簡単に答えが見つからないのは確かであるが、それでも

自分にとっては何かを考えざるを得なくさせてくれる作品であった。

硫黄島からの手紙

硫黄島からの手紙1



こちら に続く“硫黄島”第二弾。


先日、当Blogでも書いた通り

予告編を見てから、いくつかの関連本(常に諸子の~

文藝春秋1月号 渡辺謙×梯久美子対談硫黄島・あゝ江田島

を読むなど楽しみにしていた作品であったが、

その期待に応えてくれる見応えのある内容であった。



史実を大きくデフォルメすることなく日本側の視点で描かれており

アメリカ映画と感じさせないものであったし、

逆に、実際は存在しないであろう西郷(二宮和也)が効果的に

ストーリーに幅をもたらすなど作品の全体的な完成度の高さを感じた。

また、2作品ともに共通することであるが 

この戦争に借り出された米・日両国の人々が

自分の意思というものが全く反映されることなく、

大きな流れに身を任せることしかできなかったこと(しかもそれが

人を殺すという究極行為に向けられてたこと)による、果てしない

空虚感がとても前面に出ており

ベタではあるが、あらためて“平和”“自由”といったものに

目を向ける機会になったし、それをいかにするかは人間次第である

ということも再度認識させてくれる作品であった。


そのように考えさえてくれた、かつ充実した時間を過ごさせてくれた

この壮大な2作品を創ったクリント・イーストウッド監督に敬意を表したい。

※イーストウッドは栗林中将のような現場主義でフラットな感覚を持つ

 リーダーであったという渡辺謙のコメントも何となく興味深かった。



MOVIX六甲にて鑑賞

アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役

稲盛 和夫
アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役

京セラ創業者稲盛氏の著。

かつて

成功への情熱

君の思いは必ず実現する

このあたりは読んだが、

本著は稲盛哲学をメインに語ったそれらとは少し異なり

京セラの代名詞である“アメーバ経営”の仕組みが中心に書かれている。


キーワードは“現場主義”

それを実現する管理手法(管理会計、人材育成)がアメーバ単位での経営

ということ。


以前から自身が良く触れていた内容であるので、正直新鮮味には欠けたが

アメーバ経営の概要を理解するためには分かりやすい一冊だと言える。

ベストセラーになっているのは今更(イマサラ)感もあり正直、?(疑問)