正月に実家に帰ったとき、キッチンで見かけた炊飯器はヘンだった。
上蓋にベタッとガムテープが貼られており、いかにも「素人が適当な補修をした」ような痛々しい姿の炊飯器(3合炊き)だった。
「どしたんコレ?」
「あー、それね、中蓋洗うのに外した後、中蓋をはめるの忘れたまま炊いたんよ。そしたら上蓋が変形してしもうて。」
すかさず親父が口をはさむ。
「しかもこれで2回目やぞ。ワヤするわ。」
つまり、中蓋をはめずに炊飯したために熱が外部に伝わってしまい、耐熱性のない上蓋が変形してしまったのだろう。
炊飯器上部の液晶がはめられているパーツがボコッと浮き上がっており、それをガムテで無理やり抑え込んでいるらしい。
「まあ、普通に炊けるからいいけど。」
いいのか。
年代物の炊飯器で、今の炊飯器のように様々な機能がついていないシンプルなものだ。
シンプルに米を炊くことしかできないから、少々変形しても機能は生きているのだろう。
それから2ヶ月後、なんとなく思い立って実家に電話した。
「炊飯器買わん?買うたるわ。」
「ええ?でもまだ使えるからええよ。」
「家電を壊れた状態のまま使うのは良くないから。」
シンプルな炊飯器とは言え電化製品だ。
水を使う家電でもある以上、漏電とかの心配もある。
そんな思いから何気ない提案のつもりだった。
それから炊飯器を色々調べて驚いた。
今の炊飯器の発展ってスゲーな。
各メーカー、
「おいしく炊けます!」
の宣伝文句と共に、とんでもない種類の炊飯器をリリースしているのだ。
価格帯も数千円で買えるリーズナブルなものから、10万円する高級商品まで。
家電芸人がパナソニックの「おどり炊き」を得意げに解説してるのはテレビで見たことがあるが、ここまで多種多様に進化していたとは。
実際、家電量販店に行っても炊飯器は結構なスペースにずらっと展示してある。
どんだけご飯好きなんだ日本人。
何を買ったらいいのかさえ決められないほどの種類だ。
2週間ほど独学と価格調査をし、悩みに悩んでようやく1台の炊飯器を購入した。
10万円もしないけど、ソレナリのお値段はする中々のヤツだ。
「炊飯器買ったから。今度持って行くわ。」
「おう、高い買い物させてすまんな。最近の炊飯器は色々機能があるんじゃろ?使い方を勉強しなきゃいかんな。」
そう言うなり親父は、
「お母さんに色々教えといてやってくれ。」
と奥の部屋へ引っ込んだ。
自分で勉強する気ゼロじゃねーかよ。
最近の家電は多機能であっても使いやすく、老夫婦でもそれほど悩むほどの複雑さはない。
良く出来てるわ最近の炊飯器。
そりゃ中国人が爆買いしていくわけだ。
一通りの説明を母親にしてやったところで、実際炊いてみると確かにウマイ。
「こりゃ米だけでもナンボでも食えるな。」
ボンクラ親父がつぶやいた。
それから間もなく、実家の近くを通る用事があったので立ち寄ってみた。
「新しい炊飯器どうよ?」
するといつも炊飯器を置いてある場所には、あのガムテ炊飯器が鎮座していた。
中には研いで水につけられた米が入っている。
「ありゃ?新しいヤツ使ってないん?」
「いや、次の燃えないゴミ日まではコレ使おうかと思って。」
母親はちょっと申し訳なさそうな表情でそう言った。
新しい炊飯器は、キッチンの一角に専用スペースが与えられ、敷き布まで敷かれて祭られていた。
息子が買ってくれた炊飯器は、それなりの感謝を受けていることが伺われた。
「この炊飯器、買ってどれくらいになる?」
「そうねえ、アンタが大学に入った時に買い替えたからもう20年にはなるんかなあ。」
ガムテが貼られた炊飯器はシンプルな機能しかないけど、この老夫婦にとってはなにかしら付加価値が付いてしまっているのだろう。
無神経に新しい炊飯器を押し付けてしまった事にちょっと罪悪感を覚えた。
次の燃えないゴミの日がいつかは知らない。
きっとその日まで、このガムテ炊飯器は老夫婦のために米を炊き続けるのだろう。
---以上の記述を読んで、以下の問いに答えなさい---
① 文中に登場する「老夫婦」とは誰のことか。筆者との関係性を答えなさい。
② 今季J2に昇格したレノファ山口の今年の順位を予想しなさい。
③ 最近どう?
上蓋にベタッとガムテープが貼られており、いかにも「素人が適当な補修をした」ような痛々しい姿の炊飯器(3合炊き)だった。
「どしたんコレ?」
「あー、それね、中蓋洗うのに外した後、中蓋をはめるの忘れたまま炊いたんよ。そしたら上蓋が変形してしもうて。」
すかさず親父が口をはさむ。
「しかもこれで2回目やぞ。ワヤするわ。」
つまり、中蓋をはめずに炊飯したために熱が外部に伝わってしまい、耐熱性のない上蓋が変形してしまったのだろう。
炊飯器上部の液晶がはめられているパーツがボコッと浮き上がっており、それをガムテで無理やり抑え込んでいるらしい。
「まあ、普通に炊けるからいいけど。」
いいのか。
年代物の炊飯器で、今の炊飯器のように様々な機能がついていないシンプルなものだ。
シンプルに米を炊くことしかできないから、少々変形しても機能は生きているのだろう。
それから2ヶ月後、なんとなく思い立って実家に電話した。
「炊飯器買わん?買うたるわ。」
「ええ?でもまだ使えるからええよ。」
「家電を壊れた状態のまま使うのは良くないから。」
シンプルな炊飯器とは言え電化製品だ。
水を使う家電でもある以上、漏電とかの心配もある。
そんな思いから何気ない提案のつもりだった。
それから炊飯器を色々調べて驚いた。
今の炊飯器の発展ってスゲーな。
各メーカー、
「おいしく炊けます!」
の宣伝文句と共に、とんでもない種類の炊飯器をリリースしているのだ。
価格帯も数千円で買えるリーズナブルなものから、10万円する高級商品まで。
家電芸人がパナソニックの「おどり炊き」を得意げに解説してるのはテレビで見たことがあるが、ここまで多種多様に進化していたとは。
実際、家電量販店に行っても炊飯器は結構なスペースにずらっと展示してある。
どんだけご飯好きなんだ日本人。
何を買ったらいいのかさえ決められないほどの種類だ。
2週間ほど独学と価格調査をし、悩みに悩んでようやく1台の炊飯器を購入した。
10万円もしないけど、ソレナリのお値段はする中々のヤツだ。
「炊飯器買ったから。今度持って行くわ。」
「おう、高い買い物させてすまんな。最近の炊飯器は色々機能があるんじゃろ?使い方を勉強しなきゃいかんな。」
そう言うなり親父は、
「お母さんに色々教えといてやってくれ。」
と奥の部屋へ引っ込んだ。
自分で勉強する気ゼロじゃねーかよ。
最近の家電は多機能であっても使いやすく、老夫婦でもそれほど悩むほどの複雑さはない。
良く出来てるわ最近の炊飯器。
そりゃ中国人が爆買いしていくわけだ。
一通りの説明を母親にしてやったところで、実際炊いてみると確かにウマイ。
「こりゃ米だけでもナンボでも食えるな。」
ボンクラ親父がつぶやいた。
それから間もなく、実家の近くを通る用事があったので立ち寄ってみた。
「新しい炊飯器どうよ?」
するといつも炊飯器を置いてある場所には、あのガムテ炊飯器が鎮座していた。
中には研いで水につけられた米が入っている。
「ありゃ?新しいヤツ使ってないん?」
「いや、次の燃えないゴミ日まではコレ使おうかと思って。」
母親はちょっと申し訳なさそうな表情でそう言った。
新しい炊飯器は、キッチンの一角に専用スペースが与えられ、敷き布まで敷かれて祭られていた。
息子が買ってくれた炊飯器は、それなりの感謝を受けていることが伺われた。
「この炊飯器、買ってどれくらいになる?」
「そうねえ、アンタが大学に入った時に買い替えたからもう20年にはなるんかなあ。」
ガムテが貼られた炊飯器はシンプルな機能しかないけど、この老夫婦にとってはなにかしら付加価値が付いてしまっているのだろう。
無神経に新しい炊飯器を押し付けてしまった事にちょっと罪悪感を覚えた。
次の燃えないゴミの日がいつかは知らない。
きっとその日まで、このガムテ炊飯器は老夫婦のために米を炊き続けるのだろう。
---以上の記述を読んで、以下の問いに答えなさい---
① 文中に登場する「老夫婦」とは誰のことか。筆者との関係性を答えなさい。
② 今季J2に昇格したレノファ山口の今年の順位を予想しなさい。
③ 最近どう?