4種混合ワクチン、初の接種後死亡例
島田 昇(m3.com編集部) 2013年3月12日(火) 配信
 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(座長:五十嵐隆・国立成育医療研究センター総長)は3月11日、子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌、不活化ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎それぞれのワクチン接種後の副反応検討会を合同開催した。いずれも現時点で安全性に重大な疑義はないと判断されたが、4種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風、不活化ポリオ)接種後の初めての死亡例が報告された。

 ワクチン接種後の副反応検討会は定期的に開催されており、前回は昨年10月に開催。今回の会議は、4種混合ワクチンが昨年11月から定期接種で使用されるようになった期間を含む昨年9月から今年1月を対象とした。死亡例については、今年に入ってから3月7日までに報告された2例も合わせて報告された。

 今年に入って報告された死亡例の中には、4種混合ワクチンを接種した事例が含まれた。死亡したのは6カ月未満の男児で、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、4種混合ワクチン、ロタウイルスワクチンの同時接種後に突然死したことが3月6日に報告された。もう一例は3月7日に報告されたもので、6カ月以上1歳未満の女児がヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、DPTワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)、不活化ポリオワクチンの接種後に乳幼児突然死症候群で死亡。詳細についてはいずれも現在、調査中としている。

 子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌それぞれの検討会で座長を務めた川崎市健康安全研究所長の岡部信彦氏は、「死亡例を含めた発生頻度はこれまで検討してきたところから大きく逸脱するものではない。重大な疑義はないので、引き続き報告状況については調査を続けていく」と判断した。

死亡例はヒブ5件、肺炎球菌2件

 厚労省は昨年9月から1月を対象とした各種ワクチンの副反応を報告(子宮頸がん予防、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、不活化ポリオワクチンは9月から12月、インフルエンザは10月から12月、日本脳炎は11月から今年1月が対象)。

 子宮頸がん予防ワクチンは2商品を報告。「サーバリックス」は接種可能のべ人数20万人に対し、医療機関からの副反応報告数は28件(報告頻度は0.013%)で、このうち重篤数は3件(同0.0014%)だった。「ガーダシル」については接種可能のべ人数41万人に対し、医療機関からの副反応報告数は49件(同0.012%)。このうち重篤数は2件(同0.0005%)だった。

 ヒブワクチン(商品名:アクトヒブ)は接種可能のべ人数139万人に対し、医療機関からの副反応報告数は52件(報告頻度は0.004%)。このうち死亡数5件(同0.0004%)を含む重篤数は15件(同0.0011%)だった。小児用肺炎球菌ワクチン(商品名:プレベナー水性懸濁皮下注)は接種可能のべ人数145万人に対し、医療機関からの副反応報告数は66件(報告頻度は0.005%)。このうち死亡数2件(同0.0001%)を含む重篤数は12件(0.0008%)だった。

 不活化ポリオワクチン(商品名:イモバックスポリオ皮下注)は接種可能のべ人数181万人に対し、医療機関からの副反応報告数は42件(報告頻度は0.0023%)で、このうち重篤数は6件(同0.0003%)。混合不活化ポリオワクチン(商品名:クアトロバック皮下注シリンジ、テトラビック皮下注シリンジ)は接種可能のべ人数43万人に対し、医療機関からの副反応報告数は4件(報告頻度は0.0009%)で、このうち重篤数は2件(同0.0005%)だった。

 インフルエンザワクチンは推定接種可能人数5150万人に対して、医療機関からの副反応報告数は261件(報告頻度0.0005%)。このうち死亡数4件(同0.000008%)を含む重篤数は47件(同0.00009%)だった。

 日本脳炎ワクチン(商品名:エンセバック皮下注用、ジェービックV)は接種可能のべ人数42万人に対して、医療機関からの副反応報告数は41件(報告頻度は0.0097%)で、このうち重篤数は11件(同0.0026%)だった。
子宮頸がんワクチンの被害実態を調査 弁護士グループ

朝日新聞 2014年5月30日(金) 配信


 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に激しい痛みなどの副作用が相次ぎ、国が接種の推奨を中止している問題で、薬害にかかわる弁護士グループが被害実態の全国調査を始め、29日、被害者団体と東京・永田町の参議院議員会館で集会を開いた。被害者の家族や支援者たちが接種推奨の再開に反対し、治療方法の確立を訴えた。

 調査は「薬害対策弁護士連絡会」と「薬害オンブズパースン会議」の弁護士約60人が4月に始めた。「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が把握した患者約240人のなかから順次聞き取っている。集会では、10代の女性が接種後に自分の名前を思い出せなくなるなど、深刻な症状が報告された。
子宮頸がんワクチン 横浜市が独自支援 全国初、副作用患者に医療費

毎日新聞社 2014年5月29日(木) 配
子宮頸がんワクチン:横浜市が独自支援 全国初、副作用患者に医療費 /神奈川

 横浜市は6月から、子宮頸(けい)がんワクチンの接種後、体の痛みやしびれなどの重い副作用が生じている患者を対象に、医療費の自己負担分を給付するなど独自の支援に乗り出す。症状とワクチンとの因果関係が明らかになっていない中、重い症状に苦しむ患者がいることを重視。全国初の取り組みで、市のホームページや学校などを通じ、周知に努める。

 28日の市議会常任委員会で市側が明らかにした。

 同ワクチンを巡っては、接種後に重い副作用が生じたとの報告が全国で相次ぎ、厚生労働省が2013年6月から、接種を積極的に呼びかけることを中止している。

 市健康福祉局によると、市内では11年2月~13年3月末に約7万5000人が同ワクチンを接種し、これまでに21人が何らかの症状を訴え、市に相談している。

 支援の内容は「医療費の自己負担分を市が全額肩代わりする」「入院や通院した月に限り、月額3万円程度の医療手当を給付する」の二つ。市が実施した同ワクチンの接種で副作用が発症し、市大付属病院など市が指定する医療機関で治療した患者を給付対象とする。

 期間は接種後の症状に対する治療を受けた日から16年3月末まで。市の予防接種予算を事業費に充て、今年度で約2000万円を計上した。条件に合う人は5~10人程度を見込んでいるという。

 この日の常任委員会では、議員から「全国に先駆けた支援策」と評価される一方、「支援対象者の見積もりが少なく、実態を調査すべきだ」との声も上がった。これを受け、市健康福祉局の岡田輝彦局長は「今何らかの症状がある人や、症状が出ていない人も不安を抱えているはず。支援策を周知し、市としてできることを早期に取り組みたい」と述べた。【飯田憲】
HPV接種、子宮頸部病変を予防
2014年03月07日 ソース:BMJ カテゴリ: 産婦人科疾患 ・癌 ・投薬に関わる問題

文献:Elizabeth C,et al.Effectiveness of quadrivalent human papillomavirus vaccine for the prevention of cervical abnormalities: case-control study nested within a population based screening programme in Australia.BMJ 2014;348:g1458.

 オーストラリアで、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラム導入4年後のワクチン有効性を、女性10万8353人を対象にしたコホート内症例対照研究で評価。

ワクチン3回接種の有効性は、
スメア検査で高悪性度異常だった女性では46%、
その他の病変があった女性では34%だった。

2回接種ではそれぞれ21%だった。

原文http://www.bmj.com/content/348/bmj.g1458
HPVワクチン推奨するか
シリーズ「技術のテーマ」◆Vol.2
2013年12月13日(金) 星良孝(m3.com編集部) カテゴリ:産婦人科疾患・感染症・癌

「技術のテーマ」は続いてHPVワクチン。
厚生労働省は副反応の発生で積極的推奨を一時中止。
海外では推進する見方は強い。推奨の賛否は。




テーマ HPVワクチン推奨するか


投票結果 HPV推奨反対は「少数派」

 ヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンは子宮頸癌の予防目的で公費助成で実施できるが、2013年6月に厚生労働省が積極的な推奨を一時停止する通知を出した。慢性疼痛のような副反応の問題が生じたためだ。以来、推奨をめぐって議論が起きている。今、推奨に賛成するか反対するか。


賛成 「癌の道を閉ざす」
 HPVワクチンの接種によって、HPV感染を阻止できる点は重要。米国癌協会(ACS)は、HVPの接種後にHPV感染が急減していると報告している(『HPVワクチンで罹患率56%減』を参照)。CDC(米疾病対策センター)のデータに基づいて検証したところ、14歳から19歳の女性のHPV感染が56%も減少していた。HPV感染を阻止することは、結果として子宮頸癌を抑えることにつながる。

 WHO(世界保健機関)もHPVワクチンは安全であると宣言している(『HPV接種、WHOで安全声明』を参照)。HPVワクチンの接種には前向き。米国では、接種回数は1回でも十分という報告も出ており、より手間をかけずに接種効果を出す試みも出ている(『HPVワクチン「1回で十分」』を参照)。関連して、咽頭癌を抑制する効果についての関心もある(『HPVワクチン、咽頭癌も予防か』を参照)。欧米の見方も参考に、癌を予防する有効な手段として推奨すべきと考えることはできるだろう。



反対 副反応の懸念重い

 一方、副反応の可能性が拭えない限り、推奨には反対する立場も取り得るだろう。子宮頸癌は女性の罹患する癌としては重要である半面で、罹患率は10万人当たり100人未満人数としては多いとは言えない面があった。ワクチンによる癌抑制効果と副反応の可能性とを天秤にかけたときに副反応を重く見るのは不自然でない。検証を経た上で、改めて推奨を俎上に上げるべきと見る人はあるだろう。

 日本だけではなく、海外でもHPVワクチンの接種には懸念は伴っている。米国でもHPVワクチンの接種率は伸びないと報告がある(『HPVワクチン接種、米でも低迷』を参照)。HPVワクチンを接種することで、性行為の開始時期を早めてしまう懸念がある。HPV感染はむやみな性行為を避ければ回避も可能。ワクチンの無理に推奨しなくともリスクを抑制を可能と見ることはできる。

 従来のワクチンは、HPVの中でも6型、11型、16型、18型のウイルスの感染予防の効果がある。発癌性ウイルスは15種類ほどある。発癌性HPVのうち頻度の高いウイルスをカバーしているとはいえ、効果が限られると見る医師もあるだろう。
HPV ワクチンの副反応、「心身の反応で惹起」と結論

橋本佳子(m3.com編集長) 2014年1月21日(火) 配信


 厚生労働省の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全調査会は1月20日に合同会議を開き、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の副反応に関する論点整理を行い、同ワクチン接種後に来した広範な疼痛または運動障害は、「心身の反応により惹起された症状が慢性化したものと考えられる」と結論付けた(資料は、厚労省のホームページに掲載)。

 ただし、定期接種の勧奨を再開するか否かについては議論せず、2月に開催予定の次回会議に見送られた。同会議で、副反応に関する報告書をまとめるとともに、安全性の議論を深め、定期接種の勧奨再開の可否を審議する予定。

 HPVワクチンは2013年4月から予防接種法に基づき、定期接種化されたが、副反応が問題になり、6月から勧奨差し控えとなっている。副反応検討部会部会長の桃井眞理子・国際医療福祉大学副学長は、会議後の会見で、「副反応の頻度や医学的評価、接種との因果関係、これら3点を議論、評価した上で安全性について結論を出す」と説明。

 報告書には、HPVワクチン接種時の注意点として、接種の意義について接種を受ける本人の十分な理解を得るほか、心身の反応による症状を呈している場合には、理学療法や認知行動療法など身体的アプローチと心理的アプローチ双方を用いた集学的な治療で、症状の重症化や長期化を防ぐ重要性も記載する予定。「最も重要なのは、医師と患者の信頼関係。病態について十分に理解してもらい、信頼関係の中で診療することが重要だというのが、共通の理解」(桃井氏)。

 会議後の会見では、「心身の反応により惹起」という結論に、「患者の納得が得られるのか」との質問も出た。桃井氏は、「納得というより、心身の反応により医学的にはあらゆることが起き得ることを、理解してもらうために報告書をまとめる」と答え、医学的な検証に基づく結果であることを強調した。


HPVワクチンの副反応問題への関心は高く、メディアも多数取材に。
 「広範な疼痛または運動障害」、4つの可能性を検討

 「論点整理」ではまず、
(1)HPVワクチン接種後の副反応報告全体の頻度、
(2)副反応のうち、広範な疼痛以外の疾患・症状が発生したとする副反応の報告頻度、

の2点については、「海外と比較して格段高いわけではない」とし、「広範な疼痛」についても、日本よりも頻度は低いものの、海外でも報告があり、「ワクチンの安全性に懸念があるとは捉えられていない」とまとめた。

 HPVワクチン接種後に、広範な疼痛または運動障害を来した患者のうち、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの既知の自己免疫疾患と診断された患者については、海外の大規模疫学調査によってワクチンが誘発した可能性は否定されている。

 焦点となったのは、既知の自己免疫疾患等以外の、診断が付いていない「広範な疼痛または運動障害」を来したメカニズムだ。「HPVワクチンの副反応の症状は多様だが、根幹となる共通の症状は、広範な疼痛と運動障害」(桃井氏)。

「論点整理」では、医学的に考え得る、
(1)神経学的疾患(中枢神経、末梢運動神経または末梢感覚神経)、
(2)中毒、
(3)免疫反応、

(4)心身の反応――という4つの可能性を挙げ、これまでの議論を整理。

 桃井氏は会議後の会見で、
(1)から(3)を否定した理由について、
「神経の器質的疾患などでは、説明できない所見が多々ある。中毒についても、それを示唆するには病態が合致しない。免疫反応に関しても、血液検査で炎症を示唆する所見は見られず、さまざまな反応を想定しても、症状が説明できない」などとし、

(4)の「心身の反応」と結論付けた理由を、「広範な疼痛についての医学的知見、患者が示しているさまざまな症状のパターン、検査所見などを勘案すると、器質的な疾患ではなく、心身の反応であると説明するのが、医学的には適切であるという結論に至った」と説明した。

客観的なエビデンスを基に判断したというより、消去法的な判断とも言えよう。


 「心身の反応」との表現を用いたのは、精神疾患と区別するためであり、「精神的に健康な人間が、何らかの背景が基となり、さまざまな生体反応を来している、つまり、心理社会的因子が密接に発症に関係していることを意味する」(桃井氏)。

 ただし、「接種後1カ月以上」が経過してから発症している患者については、接種との因果関係を積極的に疑う根拠がない上、「心身の反応が3カ月以上」慢性的に経過する場合は接種以外の様々な要因も関与していることがそれぞれ考えられるとした。

 20日の会議で最も多く出たのは、「接種時に注意すべき事項」に関する意見。「なぜHPVワクチンが必要なのかについて、説明を受けずに接種されることがある。接種の意味を説明することが必要」など、接種を受ける本人自身の理解を深める必要性のほか、「生活の質が低下するほどの痛みがあった場合には、2回目以降の接種の延期も検討する」などの対応を求める声も上がった。
医会、HPV接種の現場対応示す
接種迷う人へのアドバイスや資料などまとめる

2013年6月24日 日本産婦人科医会 カテゴリ: 小児科疾患・産婦人科疾患・癌

 日本産婦人科医会のがん対策委員会は6月24日、「子宮頸癌予防ワクチンを積極的に勧奨すべきではない」とする厚生労働省の通知を受け、臨床現場での対応をまとめた文書をホームページに掲載した。接種を悩む人に対してのアドバイスや説明に役立つ資料の入手法などを示している。

 医会の文書によると、1-2回の接種は終えているものの今後の接種を迷う人には、「接種間隔が延びても、多くの場合は3回接種で十分な効果が期待できる」と説明可能という。また、接種を控える人には、国の積極的勧奨が再開してから改めて接種の是非を検討するよう求めている。

 かねて当ワクチンでは、副反応として因果関係が否定できない慢性疼痛が報告されていた。厚生労働省は6月14日に「自治体は積極的な勧奨を行わない」「接種する場合はワクチンの有効性や安全性について十分説明する」旨の通知を出している。

【関連リンク】
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の副反応について―被接種者等の不安への対応と副反応への対処―
HPVワクチンで罹患率56%減 【米国癌協会】
13-17歳で接種率低迷の状況も

2013年7月11日 米国学会短信 カテゴリ: 産婦人科疾患・感染症・投薬に関わる問題


 米国癌協会(ACS)は6月20日、ヒトパピローマウィルス(HPV)感染が、ワクチン導入以来急激に減少していることを示した研究を紹介した。6月19日付Journal of Infectious Diseasesに掲載。

 この研究は、米国疾病対策センター(CDC)が全米健康栄養調査(NHANES)のデータを基に、女児および成人女性のHPV罹患率を、ワクチン導入前と導入後について比較したもの。14-19歳女性のHPV罹患率は、ワクチン導入後56%減少したことが分かった。しかし3回のワクチン接種を完遂しているのは、13-17歳女児のわずか3分の1。CDCによると、このように低い接種率では現存する女児5万人が、生涯いずれかの時期に本来予防できる子宮頸癌を発症するという。

 米国ではHPVワクチンとしてCervarixとGardasilが認可されているが、いずれもHPV暴露以前に接種しなければならないACSは11-18歳女児への3回接種を勧告している。

 ACSは、女児への接種率が低迷している理由として、医師が積極的に接種を勧めないことを挙げる。HPV感染は性病であるため、医療関係者や保護者に心理的抵抗があり、また我が子が性的関係を持っているとは思わない親がワクチン接種の必要性を認めないのだろうと、ACSは推定している。

【関連リンク】
Lower HPV Rates in Teen Girls Attributed to Vaccine
HPVワクチン、咽頭癌も予防か 【米国癌協会】
口腔HPV感染予防に予備的エビデンス

2013年8月1日 米国学会短信 カテゴリ: 産婦人科疾患・耳鼻咽喉科疾患・投薬に関わる問題
 米国癌協会(ACS)は7月24日、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが口腔HPV感染の予防にも有効であることを示した研究を紹介した。7月17日配信のPLOS Oneオンライン版に掲載。

 この研究は、HPVワクチン(商品名サーバリックス)またはA型肝炎ウイルスワクチンを接種した18-25歳の女性7000人超を追跡。接種4年後に、口腔HPV感染の経験者数を調べたところ、感染者はHPVワクチン接種群で1人、肝炎ワクチン接種群で15人だった。HPVワクチン接種者はそうでない者に比べ、感染率が93%減少した計算になる。

 HPVは150以上の型を持つウイルス群。このうちサーバリックスが有効なのは、子宮頸癌の原因となることが最も多いHPV-16とHPV-18だが、HPV-16は咽頭癌と最もよく関連するウイルス型でもある。

 ACSによると、HPVが原因で発症する咽頭癌の比率は増加しており、全ての咽頭癌の半数から70%を占めるという。

 この研究では口腔HPV感染者数が対照群においても少ないこと、追跡期間が比較的短いこと、被験者を女性に限っていることから、今回の結果は予備的エビデンスと言えるものの、HPVワクチンが咽頭癌罹患率に影響を与える可能性があるとして、関係者は男性への応用を有望視している。

【関連リンク】
HPV Vaccine Shown to Protect Against Oral Form of Infection
HPV接種推奨中止で欧米系影響
子宮頸癌ワクチン推奨中止、欧米製薬メーカーの業績影響避けられず
2013年8月6日 化学工業日報 カテゴリ: 産婦人科疾患・癌・投薬に関わる問題


 厚生労働省が子宮頸がんワクチンの接種推奨を中止したことが、同ワクチンを販売している欧米製薬メーカーの業績に影を落とし始めている。米メルクは今回の推奨中止について「通期にわたり大幅なマイナス影響を受ける」と見ており、後発のメルクの追い上げを受けている英グラクソ・スミスクライン(GSK)も、「日本の子宮頸がんワクチン市場は減速している」(アンドリュー・ウィティーCEO)と厳しい見通しを示している。両社がこのほど発表した2013年4-6月決算でそれぞれ明らかにした。

 メルク(MSD)が販売している子宮頸がんワクチン「ガーダシル」の昨年の国内売上高は1・4億ドル。今年は4月から定期接種化されて売上増を見込んでいたが、厚労省が6月から積極的な接種呼びかけを見合わせたことで状況が一転した。4-6月の日本事業全体の売上高は、円安進行などにより前年同期比21%減の9・5億ドル。為替影響を除くと同4%減だった。

 「サーバリックス」を販売しているGSKは、後発のメルクの追い上げも相まって「昨年からサーバリックスの市場シェアが大幅に縮小している。この状況が大きく変わることはないだろう」と予想している。日本でのワクチン事業売上高は、4-6月で同4割以上減った。