なんと、ずいぶん時間が空いてしまってすみません!
すっかり秋真っ盛りではありませんか。


さて、ちょっとお知らせですが
ありがたいことに8月より、番組キャスターのお仕事をさせていただいてます!


日本文化チャンネル桜の番組⇒  『桜ワールドネットワーク ~世界は今…』

▼放送時間
【 スカパー!528ch 】 毎週木曜日 21:00~22:00 放送
【 So-TV / YouTube / ニコニコ 】 随時配信(週1回)

世界各地に在住する特派員の方々に、現地の”生の声”を伝えていただく報道番組です。
一般の報道では知り得ない海外レポートが満載で、わたし自身とても勉強になることばかりです。

国際問題や情勢などに興味のある方は、ぜひご覧いただけますと嬉しいです♪


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さあ、みなさん忘却の彼方であろう前回の続きです! 
いよいよ過酷な断食修行2日目!

(これまでの記事はこちら↓)

①断食修行に潜入! 水だけで3泊4日過ごしてみた@成田山新勝寺
②断食修行に潜入! 1日目は煩悩だらけだった









▼5月27日(金) 断食修行2日目の悲劇


まだ薄暗い朝4時30分。

女子部屋に目覚まし時計のアラームが鳴り響き、
「おはようございます…雨ですね…」と、みな気だるそうにあいさつを交わしながら生存確認しました。

起き上がろうにも力なくフラついて、アウストラロピテクスから人間に進化するみたいに段階を踏まないといけない。

ようやくネアンデルタール人になったあたりで、
あれ、なんか胃が気持ち悪い…あれ、すごく寒いぞと、2日酔いみたいな体調の悪さにぞっとしました。

歯磨き粉の味にウッとなりながらも、渾身の思いで歯を磨いて顔を洗い、身支度を整えて4時55分、集合場所で健康チェックを行います。


前日に水を何杯飲んだのか、記入した表を世話係に提出して判をもらうわけですが、
「今日で最後の人はちゃんと言ってよね! 言わないとわかんないんだからさ(怒)」などと、世話係I氏が相変わらずゴネていて、妙な緊張感が漂う2日目の始まりです。




部屋に戻って、ほうきで簡単な掃き掃除をしつつも体調が悪い。
掃き掃除しながら吐きそう…。

そんな状態で、5時20分から始まる全員参加の朝護摩に向かいます。
大本堂へ向かう途中に気分の悪さが限界になり、同期Sさんに「先に行っててください!」と言い残してメロスのように走り、トイレで吐きました。

(お食事中の方がいらしたら、ごめんなさいね!!)

吐くといっても、何も食べていないので当然、大量の水しか出てきません。
しかも、わりときれいな黄色なのね。オロナミンCみたいな胃酸カラーを、若干感動しながら眺めておりました。

酸っぱくなった口をゆすぎ、いつものペットボトルの井戸水をひと口飲んでみると、あら不思議!
甘い…なんというか、桃の天然水みたいな味がするではないですか!

飽き飽きしていた水が、状況によっては桃の天然水にも変化するのね。同じ水なのに。
これも仏教でいう、空(くう)なのか、、と静かに感心しておりました。





この気持ち悪くなる現象、じつは断食するとよくあるそうです。

食べないとあらゆる消化機能が休止するため、肝臓も解毒できないことはもちろん、
長年にわたって細胞に蓄積された有害物質が血液に送られて全身をめぐるから
なんですね。

これも一種の好転反応だけど、人によっては頭痛が激しかったり、救急車で運ばれる場合もあるそう。

だから臓器の休業に備えて、断食前には減食が必要なんですね。


ではなぜ、わたしは減食したのに体調が悪くなったのか。

それは断食初日の晩、なまこのように眠り続けたので寝起きに「水分摂らなきゃ!」と、水を一気に大量に飲んだのがNGだったみたい。空っぽの胃がびっくりしたんですね。

最初に渡された注意事項にも、水を一度に多量に飲まぬように! と書いてありました。


これからチャレンジする方、どうか水は少量ずつ、こまめに補給してくださいね!







▼まるでエンタメ! 智慧が煩悩を焚き上げる「御護摩祈祷」

さて、すっかり体調が蘇り、何事もなかったかのように大本堂でみんなと合流しました。

御護摩祈祷とは、護摩木という薪を焚いて心願成就を祈念する真言密教のお祈りです。
薪は煩悩を象徴し、炎は不動明王の智慧を象徴しているそう。

ちなみに「護摩」という言葉は、古代インドの宗教儀式で「火の中に供物を投じて祈る」という意味の「ホーマ」に由来しており、それを漢字で表したのが「護摩」なんですね。


とくに成田山新勝寺の御護摩祈祷は、開山以来1070年以上、1日も欠かさず続けてきたというから驚きます。

有名な話ですが、跡継ぎに恵まれなかった初代團十郎は、成田山で祈願したことから男子を授かり、以後自らの屋号を「成田屋」と称したわけですね。

今でも市川宗家一門は、襲名披露などの特別な興行の際には、ここ成田山新勝寺で護摩祈祷を受けているそうです。




広さ300畳を超える大本堂は、高い天井から黄金の滝のような装飾が吊るされ、
ご本尊の前に設けられた壇や灯篭、華やかな供物、巨大な太鼓などなど、まあとにかく賑やかです。
不動明王はここにいて落ち着くのかしら、ってくらい圧倒される空間。

「こっちの場所が、いちばんよく見えるよ」

ご本尊に向かって左側が、いちばんお坊さんの所作や御護摩の様子が見えると先輩陣の姉さんが教えてくれました。


護摩祈祷は1日何度も行われますが、薄暗い本堂内に炎がくっきりと浮かび上がる朝護摩は、やはり特別に荘厳で神秘的。

黄、緑、紫など、色鮮やかな袈裟を身に着けた僧侶たちが10人くらいも出てきて、
空腹のお腹に爆発音みたいに迫りくる太鼓の音や、驚異的に美しいお経のハモリ具合、
その重低音が堂内に響き渡って護摩の炎を操ってるみたいで……鳥肌が立ちました。
エンタテイメントみたい。

炎を見つめながらお経のスピードが速くなってくると、自分の中の煩悩がどんどん炙られていく感覚。なぜか涙が出ました。

わたしたちも手を合わせ、不動明王の真言を一緒に繰り返します。

この日浮かんだのは祈りというよりも、感謝、でした。
大切な両親や身近な人たちが健康でいてくれることに感謝。いてくれるだけで感謝。



そうそう、祈祷の途中に、護摩の炎に荷物をかざしてご利益をいただく「御火加持(おひかじ)」をしてもらえるので、カバンや大切なものがある人は持って行くといいですよ。









▼月刊住職!? 仏教図書館がアツイ!


敷地内にある仏教図書館に行ってみました。断食者のオアシスです。
せっかくスマホを断たれた貴重な時間ですからね。

仏教の本ばかりかと思いきや、マンガから文芸春秋、ナショジオ、釣りの本、夏目漱石や島崎藤村の初版なんかもあります。
受付の男性によると「仏教関連の本は3割程度で、ほとんど一般書だよ」とのこと。

意外な発見は、『月刊住職』と『月刊仏事』なる月刊誌。

恐る恐るページをめくると、「初の女子僧侶プロレスラー! タイガーマスクの信念!」
とか、なんともポップな特集をしていて静かな衝撃を受けました。

出版業界にいるのに、こんな月刊誌があるとは知らなかったなあ。
昔、虫好きの友達がこよなく愛読していた『月刊むし』を思い出しました。


仏教図書館は休館日(木、日、月、祝)が多く、館外に本を持ち出せないので自分でも本は持っていくといいですよ。



ちなみに、道場の廊下にもプチ本棚があるのですが…



江戸時代かっ! という年季の入った古本たち。マニアックで難解すぎます。





▼僧侶が日本一長生きする理由とは?

断食中に仏教本を10冊ほど読んだのですが、
職業別寿命一覧において日本で長生きする職業の1位は、僧侶だそうです。

お酒も飲むし、肉も魚も食べるし、運転もする。
一般の人と生活は大して変わらないのに、なぜ僧侶は長生きなのか。

副住職で芥川賞作家でもある玄侑宗久さんは、著書『釈迦に説法』で
その理由を次のように分析しておられました。


①長く吐く呼吸法
『ゾウの時間 ネズミの時間 ―サイズの生物学』(本川達雄著)によると、あらゆる動物は5億回の呼吸を終えると死ぬらしい。お経は吸うときは瞬時で、あとは長くずっと吐いている。人が無意識にしている呼吸は1回5~6秒。坐禅の呼吸法に習熟すると、1分間に2回までは必要なくなる、とのこと。


②静と動のバランス
江戸時代の儒者兼医者・役学者の貝原益軒は『養生訓』で、「時に動き、時に静なれば、気めぐりて滞らず」と説いている。お勤めに出たり、ときに坐禅、瞑想など、僧侶は動くことと動かない仕事のバランスが絶妙。健康は陰陽のバランスが大切、とのこと。


③ストレスを引きずらない
病は「気」が滞ることで起こる気が滞る原因は、怒り、悲しみ、憂いなどの感情。葬儀といった悲しみの場に出ることが多い僧侶は、そうした感情を引きずらない能力に長けてくる。さらに坐禅や瞑想、お経によって心が平らになり、イメージや感性を司る右脳が活性化される。意識を動かして気がめぐる、とのこと。


④「楽」を目指す思考法

楽といっても、「安易」という意味ではなく、リラックスや楽しさのこと。お釈迦様が「苦」からの解脱の先に求めたもの。「幸せ」はキリのない欲望になるが、「楽」はそうでもない。ただし「足るを知る」というベースが重要。年をとるほど「楽」は深い味わいが増すだろう、とのこと。



まさに「病は気から」ですね。
そして、呼吸も省エネで寿命長持ち、の時代なのですね。

みなさん、じっくり深呼吸、腹式呼吸してみてください。
これだけでも本当に、細胞が反応してくれるなと実感できます。





↑ためになった仏教本たち(持参したもの)。

上のオレンジのピッコロ大魔王みたいな僧侶の本もおもしろくて、たとえば、

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人間はすぐ「自分が、自分が」といって主役になろうとするが、紙パックのジュースに付いているストローを見習いなさい。あのストローはずっと脇役人生を歩んでいる。誰もあのストローが欲しいと思って買うことはないけど、あれがないと困る。必要とされている。立派な役割を果たしている。じつに頃合いのいい存在ではないか。車のワイパーだっていい仕事をするぞ。車の花形のパーツではないけど、なければ困る。役に立ってる。自分とは、社会のひとつのピースだ。自分をよく磨け。自分自身も他人も喜ばせることができる判断こそ、世から必要とされるよい選択。そして一度選んだら、その選択肢を正解にしていけ。それが後悔しない最良の選択。


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みたいなことが一部書かれていて(もっと優しい口調ですよ!)、よき判断力がほしいと思っている迷い多き人たちにおすすめの本です。

『もう迷わなくなる 最良の選択』(アルボムッレ・スマナサーラ著)






▼自分の行いはすべて自分に還る

散歩中、池の鯉がドバーッと寄ってきて、もの欲しげに口をパクパクし始めたのだけど、
「うんうん、わたしもお腹減ってるよ、わかるよわかるよ」と、思わずつぶやいていました。

食べてないので体温が上がらず、5月も末だというのに凍えるほど寒い。

雨上がりで色濃く浮き立つような緑の香りが、よりダイレクトに鼻孔にしみ込んできます。
五感が敏感になっているのでしょう。このまま原始人みたいになっていくのかしら。

「自分」という言葉は「自然の分身」からきているという考え方がありますが
まさに人間は自然の一部で、自然に生かされているんだなと痛感します。


昨日はきれいに咲いていたタンポポが、今朝の雨ですっかり萎んでいました。
時は流れ、状況はつねに変化している。

明日に後悔しないよう、今できることをコツコツと。




↑お散歩中に境内で見つけた看板。まさに!ですね。


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この日の朝、3人の先輩女子が卒業していきました。

九州女子は4日ぶりのお粥に歓喜し、
眠り姫は「眠るために来た」という心願成就を遂げ、
ツワモノ姉さんは趣味の滝行について最後まで熱弁し、
みな笑顔で旅立っていきました。


夜の女子部屋は、同期のSさんと2人きり。
「いま何が食べたいですか??」の妄想で盛り上がり、絞りに絞った結果
わたしは初日から引きずる煩悩のうなぎ、Sさんの最有力は唐揚げ、でした。

空腹すぎると、さっぱりしたものよりもこってりしたもの、塩分のあるものを欲するのかも。


けれども今朝帰ったボクサーの男性は
「ソフトクリームが食べたい…」と言い残して去っていったそうです。

まあ、、人によるのでしょうね。





とにかくキツかった2日目ですが、
励まし合える同期Sさんがいて、本当に救われました。


★2日目の体重⇒1.2キロ減
★体調⇒朝は絶不調、徐々に回復
★変化⇒臭覚が敏感になった
★いま食べたいもの⇒うなぎ
★祈ったこと⇒両親、周囲の存在に感謝



さて、次回はいよいよ断食3日目。
新人女子の入堂、写経体験、読書や体調の変化など、またご紹介しますね。


今日も長文、読んでいただきありがとうございます!




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