黄昏横丁~10
カチカチカチ・・・、ボーンボーン。
古い振り子時計がお昼を知らせた。
カランカラン。喫茶店の扉が開けられた。
カウンターで珈琲を落としていたこの店のマスターが、くしゃくしゃの髪に隠れた目を客人に向けた。
「いらっしゃい。君が来るなんて珍しいな」
「来るように仕向けたくせに、よく言いますね」貸本屋の青年が眼鏡に指をやりながら答えた。
「人聞きの悪いことを言うなよ」青年がカウンター席に腰を下ろすのを見ながら苦笑いをした。
「言わせる人が悪いんですよ」
「相変わらずだな」
「貴方もです」
「珈琲、飲むだろ?」
「えぇ。それとミックスサンドも」
「了解。注文も相変わらずだな」
「貴方はともかく、ここの珈琲とミックスサンドは絶品ですからね」
「褒め言葉と受け取っておくよ」
暫くして、青年の前に珈琲とミックスサンドが用意された。
青年は一口珈琲を飲んでから、マスターに本題と突きつけた。
「セバスチャンに外の人間を連れて来させましたね?」
「だったら何だと言うんだ?」何かを楽しんでいるような笑みを浮かべて返してきた。
「・・・・黄昏をあの子に渡しました」
「ほ~、黄昏をね。やはり、君の見立てはいつも適切だ」
「そうでしょうかね?」少し苛立つような口調で尋ねた。
「君らしくもなく、自信がないのかい?」
「いえ」今度は小さく答えた。
「すべては黄昏の中に、だろ?」
「そうですが・・・」青年の顔が何故か哀しみに歪んでいた。
「なんて顔をしてるんだよ。久々の外の人間との接触にどうかしちまったのか?」
「黄昏を渡した後から、妙な感覚に捕らわれているんです」
「?!」マスターの顔が真剣なものに変わった。
「彼女はもしかしたら・・・・」
黄昏横丁~9
黄昏色に町が染まる。オレンジの輝きに、不思議な空間への扉が開くことがあるという。その扉は見えない。だが、その空間へ導くものがいて、それを見た者だけがそこへ行けるらしい。いや、正確には、導くものが選んだ者しか行けないのだ。
そこまで読んで、女子高生は考えた。
「不思議な空間って?」何故か頭の中を黄昏色に染まっていた商店街が浮かんだ。
「あそこは普通の商店街だったじゃない。いくら夕方に見つけた商店街だからって、ないわよ、ない」そう言って本を閉じてた。
そこまで読んで、女子高生は考えた。
「不思議な空間って?」何故か頭の中を黄昏色に染まっていた商店街が浮かんだ。
「あそこは普通の商店街だったじゃない。いくら夕方に見つけた商店街だからって、ないわよ、ない」そう言って本を閉じてた。
黄昏横丁~8
「は~」どかっと女子学生はパジャマに着替えた身体をベットの上に投げ出した。
「本当、今日は変なことあったよね」くるりと一回身体を転がすと、女子学生の視界に鞄からはみ出した赤の本の表紙が見えた。
「黄昏、か」手に取り、パラパラとめくってみてから、最初のページに戻って読んでみた。
「本当、今日は変なことあったよね」くるりと一回身体を転がすと、女子学生の視界に鞄からはみ出した赤の本の表紙が見えた。
「黄昏、か」手に取り、パラパラとめくってみてから、最初のページに戻って読んでみた。