丸若薫オフィシャルブログ´ω`)ノ『マルワカカオルとニジイロオモチャ』 -2ページ目

キャッシュレス還元が終わり、月が変わってレジ袋有料化、連日50人以上の新規感染者が出る中でいよいよ迎える都知事選となんだか慌ただしい日々ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。最近まるぱかちゃんを自称しております、まるわかです。流行れ←

 

 

 

本題に入る前に。ちょっと前置きを。

ツイートもしたのですが、先日、雑誌『ダ・ヴィンチ』の特集、『ボーイズ・ラブが動き出す』を読んでいました。対談『こんなに掘れる!まだまだ惚れる!社会学者が語る学問としてのBL』の中でも言及されているように、BLって(一部の)女性にとってのポルノっていう位置付けなんですね。消費されるってこんな気分なんだな、と読んでいる途中で気分が悪くなってしまいました。作り手の方々も女性の方ばかりなのですが、彼女たちが生産して消費しているものは私たちであって私たちでない、こういう風にブームとして盛り立てられるとどこかで実害が出そうで怖くなりました。

 

りゅうちぇえるくんが表紙で、 いまこそ、「ジェンダー」の話をしよう という見出しで書かれた『pen』6月号では、ゲイのライターさんが、BL映画とゲイ映画の違いについて言及されていて、攻めていると感じました。

記事の中でも言及されていますが、BLには「圧倒的な美」があると思います。どちゃくそ偏見ですが、登場人物は~院朔夜みたいな、歯の浮きそうなお名前の方ばかりな印象がありますし、髪が長くて皆お肌真っ白で誰一人として歪んだ身体の人なんていないでしょう。ご存じない方でも、ゲイの実情が全然違うということは新宿二丁目を横断していただくだけでも一目瞭然だと思います。「そんなこと分かった上で、皆楽しんでんだよ」「水を差してくれるな」ってやつですね。承知しております。文化として否定するつもりはございません。

余談になりますが、舞台『ニューヨークで猫を殺す方法』をプロデュースした際にも「BLじゃなくてゲイの純愛を描きたい」というコンセプトが念頭にあったので、ここの違いに言及されていることは個人的にとてもうれしかったです。

 

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、先日、映画『his』を観てきました。(以下一部ネタバレを含みます。)

朝ドラ『ひよっこ』以来すっかり有村架純さんにハマり、コロナ禍に乗じてまんまとWOWOWに入った父とドラマ『有村架純の撮休』を観ていて今泉監督のお名前は存じ上げていたのですが、正直、藤原季節さん演じる渚という役の髪が長かったので

(これはどちらかというとBLの作品なのではないだろうか…)

という先入観があり、「観ねば観ねば」と思いつつ、すっかり後回しにしてしまっていたら東京での上映が最後?のようだったので、ユナイテッドシネマ豊洲に駆け込みました。

 

結論から申し上げますと、ぐぅ良かったです←

先述の渚という役は、最初の方はとにかく自分勝手であつかましく共感ができない役だったんですが、ロン毛問題に関しては「サーファー」という設定を提示されたことで自然と納得できましたし、女性と一時的に恋に落ち自分も「まっとうな」異性愛者としての人生を送れるのではないかと思った、けれど違ったという気持ち、個人的な体験と重なり、とてもよく分かりました。一方で、渚に振られ彼を忘れようと田舎で自給自足の暮らしをして過ごす迅(しゅん)の気持ちもよく分かってとても苦しかったです。作中でも描かれていますが、田舎ってコミュニティがせまいのでマイノリティーは生きづらいんですよね。町の皆さんが暖かくてよかった。まんまと白川町に行ってみたくなりました←

そして、渚が主"夫"として生きてきたという設定も、「この作品は同性愛だけではなくジェンダーについても自然と扱ってくれるんだな」、ととても興味深く拝見しました。渚には先述の女性(玲奈)との間に空ちゃんという娘がいて、その親権を争う内容になるのですが、この過程が恐らくマジョリティーとは逆というか。普段仕事ばかりで空ちゃんと過ごすことのなかった母親の玲奈は空ちゃんについて知らないことばかりなんですよね。急な子育ては仕事との両立も難しく、ストレスがたまり、休日もお酒に逃げてしまう。どこのお父さんですかっていう。

 

ラストシーンがめちゃくちゃ良かったです。

それまで裁判でしか顔を合わせることがなく、会話のなかった玲奈と迅ですが、空ちゃんが渚と自転車で遊んでいる間にそっと小さな秘密を共有するんです。この恋敵に一つ心を開いたっていう表現の仕方が、めちゃくちゃエモくて(語彙)、そのあとおそらくザッとしか動きがついていない中、引きで撮ってる4人の画をずっと見ていたくなるんです。はあ、子ども欲しい。いや、その前に彼氏欲しい←

 

一人のセクシュアルマイノリティーの人間として、一人の演じ手として、拝見できてとても良かったです。

DVDにもなるみたいなのでまだご覧になってない方にはぜひご覧いただきたいです。

 

気になるので同じ今泉監督の『愛がなんだ』や『mellow』も機会があれば観てみようかな。