「PTA改革」への率直な疑問  ― 全員加入型PTAに「活動の任意性」の担保は可能か? | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

「PTA改革」への率直な疑問  ― 全員加入型PTAに「活動の任意性」の担保は可能か?

<嶺町小PTA改革についての疑問>
前エントリで、嶺町小のPTA改革について「任意性の担保の面で問題を感じる」と述べました。ブログ等で公開されている情報から判断すると、入会の面でも役員決めの面でも保護者一人一人の自由意思が十分に尊重されているようには思えないからです。

まず、入会についてですが、次に引用するように、全員加入を前提とした説明がなされています。

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「嶺町小学校PTOとは」
嶺町小学校では子供が入学、転入すると、保護者にはPTO(PTA)への加入をお願いしています。
(中略)
趣旨をご理解いただき、皆様のPTOへの入会をお願いいたします。

「2.会員」
嶺町小学校児童の父母、又はこれに代わる者(以下、保護者という)および常勤の教職員(以下、教職員という)です。
入会は本会の趣旨にご理解の上、本校の保護者、教職員の方はご加入ください。
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(「嶺町小学校 PTOのしおり(案)」より)
http://blog.goo.ne.jp/minemati-pta/e/a0ba206113188fe65018f5f46eebc552

「『お願い』だからいいだろう」という反論があるかもしれませんが、「給食費」や「教材費」等の支払い要請も、通常「お願い」という形でなされるので、その反論は成り立たないと考えます。
また、「嶺町小学校では」と「主語」が学校になっている点も気になります。

次に役員決めについてですが、以下に見る通り、初年度(平成26年度)限定とは言うものの、各クラスにボランティア選出の「ノルマ」が課せられています。これまでの強制型PTAとどこが違うのか理解に苦しむところです。
嶺町小PTA「平成25年度PTAだより 第11号」によれば、従来の委員会を廃止して作られた三つある「ボランティア部」(校外活動部、安全・防災部、夢マネー部)に関して、「自由参加の活動」と位置づける一方で、

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初年度は各クラスにつき各部1名以上選出します。
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としているのです。
http://blog.goo.ne.jp/minemati-pta/e/77cdf1ff78e7969207ea5622d4b5f321
つまり、各クラス3名以上の「ボランティア部員」を選出しなくてはならないということです。
「強制」でスタートする『ボランティア部』が真の「ボランティア」になることができるのでしょうか?
(追記)各クラスにノルマを課すという方針は、その後、変更されたとの申し入れが、嶺町小PTO団長の山本さんからありました。コメント2を参照ください。


<全員加入と「活動の任意性」の担保は両立するのか?>
実は、札幌の札苗小も、会則には、任意加入としながらも、「ただし、その目的や趣旨から、全ての保護者および教師の加入が望ましい」と明記されています。
http://satsunaepta.jimdo.com/新会則-組織図/
(もっとも、それは校長の強い意向を受けての苦渋の選択であったようです。
http://blog.livedoor.jp/moepapa516-pta/archives/53890893.html)
また、岡山の西小も「全保護者のPTA参加を!」と同趣旨の内容が謳われています。
http://www.city-okayama.ed.jp/~nishis/pta1/ptatop2.htm
つまり、改革を行っているとされているPTAにおいても、「全員加入」を志向しているわけです。無理強いはしないとしても。

私は、「原則全員加入」でも、役職の強要さえなければそれはそれで“あり”という立場に立ちます。そして、札苗小は、「活動の強要なし」の原則を守り通して1年の活動を終えられたようです。
これはもう本当に素晴らしいことだと思うと同時に、moepapaさんだからこそできたことであって、全国のPTAに応用するのは難しいのではないかとも思っていました。
実際、札苗小でも、今年度の行事に積極的に関わったグループから、来年からは「委員会制」を導入できないかとの提案がなされもしたようです。
http://blog.livedoor.jp/moepapa516-pta/archives/54054171.html

そんなことを考えていたところ、最近、moepapaさんから、拙ブログに以下のようなコメントをいただきました。
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「やるべき人」から「やりたい人」へ
おっしゃる通り、この発想がとても大切だと感じています。その一方で、組織の執行部として「ぜひともやりたい事」という企画が必ずあります。役員だけで出来るのであれば全く問題ありませんが、会員をボランティアとして集う必要がある場合に悩みます。「やりたい人」はどれだけいるのか?更に、その「やりたい人」はPTA内にいるのか、それとも地域の方々の中にいるのか?いなければ、役員内の「やりたい人」だけでやるか中止するか・・・その落としどころが現実にはとても難しいです。通学時の交通安全指導など、教師と地域のボランティアさんが子どもたちのために朝から旗振りをしてくれているのに、保護者がゼロでよいのか?「やりたい人」がいないという理由だけでバランスがとれるのか?悩みます(笑)
moepapa 2014-03-12 12:17:08
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http://ameblo.jp/maruo-jp/entry-11759943039.html
(コメント40)

あのmoepapaさんにして、「活動の任意性の担保」には苦労されていることがうかがわれました。

そんな折、上で述べたように、嶺町小PTAでは、改革を掲げつつ、入会と役員決めの双方において任意性を軽んじる動きがあることに気づきました。そのようなことから、PTAにおいて、一方で全員加入を志向しつつ、一方で活動の任意性を担保することは不可能に近いのではと思い至るようになりました。

「活動の任意性を担保する」、つまり、「役職の押し付けをなくす」ためには、従来の全員加入型モデルから脱却し、完全任意の「おやじの会」的サークルになる以外に道はないのではないか? というのが現時点での一応の結論です。
この問題に関しては、引き続き、考察を続けていきたいと思っています。

※moepapaさんからのコメントに対して、先に引用したエントリのコメント41で返答しています。合わせてご参照ください。


(追記)
不適切な表現を改めました。コメント3を参照ください。