PTA問題を卒論のテーマに | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

PTA問題を卒論のテーマに

今年の4年生で、卒論のテーマとしてPTA問題をとりあげた学生がいます。
以前、台湾のPTAと日本のPTAの違いについて話を聞き、拙ブログで紹介した学生(Y.Iさん)です。卒論の題目は、「台湾と日本のPTA」。
拙記事:留学生に聞くPTA⑥ 日・台の保護者組織の対照的な姿 -日本のPTAは母親を苦しめる

そのY.Iさんが勤め先のブログである「小平の風」に「私の卒論のテーマ」と題して寄稿しました。

こちら、です。

その末尾の部分には、
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日本のPTAの全員入会制は良くないと思われがちですが、果たしてそれが本当に良くないことなのか、「PTAの入退会自由」は本当に良いことなのか。私はこのような観点からも改めて考えていきたいと思っています。そして、台湾の自由参加方式と日本の義務的全員参加方式のどちらが子どもたちにとって本当にためになるのかも考えたいと思っています。
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とあります。

Y.Iさんも、なにも日本型のPTAのあり方を積極的に肯定しているわけではなく、いわばゼロベースから考えていこうとする姿勢を表しているのだと思います。
私も、彼女に“あやかり”、日本のPTAについて肯定的な立場に立つ人の考えを改めて聞いてみようかと思いました。

そんなことで、先日、Y.Iさんといっしょに、かつて(30年から20年前)PTA活動に熱心に取り組まれ、「全員参加体制」に肯定的な考えを持つMさんと、Mさんのお知り合いの現役の保護者で、幼・小・中てPTA会長を務め、昨年度は、市P連の会長も務めたYさんにお話しを伺ってきました。

Y.Iさんには、いろいろな立場の方から話を伺い、自分なりの考えを深めていってほしいと思っています。
MさんとYさんから伺った話は、次のエントリでご報告できればと思います。


追記
エントリは立てず、追記の形でご報告することにしました。

<Mさんのお話し>
Mさんが「全員参加体制」に肯定的な理由としてあげられたのは、次の二点でした。ひとつは、当時、給食の民間委託の動きがあったもののそれを止めることができたのだが、それにはPTAによる運動も大きく寄与したこと(当時新聞でも取り上げられたそうです)。もうひとつは、クラスや学年単位で子どもたちのための様々な企画を立てて活動できたこと。
これらは「全員参加体制」ならでは可能だったように思う、と。

もっとも、Mさんも、「役職の強要」には問題を感じておられます。
ちなみに、MさんがPTAに関わった約30年前から20年前にかけての10年間のうち、後半の5年において「役職の強要」が起こり始めたように思う、とのことでした。

Mさんのお話しで意外だったのは、小学校でも中学校でも、最終学年に近づくほど役のなり手が増えたというお話。受験を意識した親心の結果ではなかったか、と。

<Yさんのお話し>
自動的・強制的な加入のあり方は問題とは思いませんか?との問いかけに対して、「本会は本校児童の保護者及び教職員によって構成される」といったPTAの規約を示しながら、「うちの学校では、規約で保護者は全員参加することになっているのです。・・もちろん、どうしても参加したくないという保護者を無理やり会員にすることはできないと思いますが…」。

市内のPTA及び市P連の活動内容についての質問に対して、Yさんは「うちの市のPTAがどのような活動をしているかについては、市の生涯学習に聞いてみてください。生涯学習課の方でなんでも把握されているので」とのこと。

ここからは私の感想だが、Yさんの、全員加入体制を“あり”だとするスタンスを支えているのは、PTAの規約の文言の存在と、それに加えて、PTA活動が学校・教委との一体的な連携によってなされている事実ではないかと思った。

“規約には保護者は全員参加するように書いてあるし、現にみんな参加しているし、先生も教委の人たちもそれに対して何も問題にしていない。問題なら責任ある立場にある校長先生や教委の人が黙っているわけがない”
といったところだろうか。
これは、一人の保護者のスタンスとして、ある意味、自然な反応なのかもしれないとも思われた・・。

PTA活動をしていて辛かったことはありますか?という質問に対しては、「後任選び」との答えが返ってきた。「『候補者』の中から会長、副会長等の本部役員を互選しようとするのだが、何時間たっても決まらず、みんな暗い顔をしているときは本当に辛かった。他の学校では、本部役員もくじで決めることがあるようだが、それはしたくないし…」

事情がある人に役職を押し付けるのは問題だと思わないか?との問いかけには、そういう場合は、先生に申し出てもらうようにしているとのこと。「先生からこの方は外してください。」と話があったときは、何も聞かず外していたそうだ。


なお、お二人はPTAへの私のスタンスを分かったうえであえてお話しを聞かせてくださいました。とは言え、その時点では拙ブログの内容も、PTAに対するメディアでの近年の扱いについてもご存じありませんでした。その意味で、今回ご紹介したのは、PTA批判を踏まえたうえでの「反論」ではなく、現場で活動されてきた方の率直なコメントという感じかと思っています。
ブログの読者の方々には、そういうものとしてお読みいただければと思います。

最後になりましたが、本当にお忙しいなかお時間を作っていただき(しかも、重い資料も持参で)、ご対応くださったMさんとYさんに改めてお礼申し上げたいと思います。