PTAの入退会自由をめぐる千葉市陳情審査(報告篇) | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

PTAの入退会自由をめぐる千葉市陳情審査(報告篇)

前エントリへのコメント、ありがとうございました。<(_ _)>

<陳情の内容>
前エントリでは、陳情の「要約版」の方を紹介しましたが、今回は「正規版」の内容を紹介します。

以下に、傍聴者に配布された「陳情文書表(その2)」から、陳情の「要旨」を引用します。
(6.24)追記:「その2」とは、「二回目の締切分のもの」という意味だそうです。

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PTAは任意加入の団体、入退会が自由であるにもかかわらず、入学時に自動的に加入、退会が自由にできないことを背景に役員の強制やその他の不適切な運営が行われております。また、優良PTA文部科学大臣表彰新基準においても「PTAが任意加入の団体であることを前提に」ということがうたわれております。

優良PTA文部科学大臣表彰新基準に従ったPTAの運営がなされることを求め、下記事項を陳情いたします。


                   <記>
1 PTAは任意加入の団体であり、入退会が自由であること、入会が義務ではないこと、入会していない保護者の児童に対して不利な扱いをされないことを保護者に周知するように学校に対して指導すること

2 入学時に保護者がPTAに自動加入することがないように学校に対して指導すること

3 PTA規約に入会手続き、退会手続きを定めるように学校に対して指導すること

4 PTAからの退会手続き、退会方法を保護者に周知するように学校に対して指導すること

5 会員に対して役員の強要等の強制的な行為を行うことは非常に不適切で社会的なモラルに欠けるため、役員の強要等の強制的な行為をしないように学校に対して指導すること
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前エントリでご紹介したように、審査の冒頭、まず教委事務局から教育委員会の「考え方」が示され、その後、委員(議員)による審査が始まりました。
審査は、委員(議員)からの教委事務局への質問と意見表明のプロセスを経て、最後に採決という流れで行われた。
なお、審査当日は、教育未来委員11人全員が出席されていた(ように思う)。
(教育未来委員会議員名簿:http://www.city.chiba.jp/shigikai/list_iinkai_kyoiku.html)



<質疑と意見表明>

男性議員A
① 同様の陳情は教委に来ているか?
② 陳情書に指摘されているような役員の強制という事実があるのか?
③ 役員のなり手がいないという声は聞いているか?

教委(生涯学習部長)
① 陳情はないが、保護者から意見は来る。自動加入や退会できない等の問題について指導できないのかという意見が寄せられることがある。教委としては単位PTAに直接指導はできないので、上部組織の千葉市P連に情報を提供し、単位PTAに対して話をしてもらっている。
② 「役員の強制はあるのか」について答える。先ほどから述べているように、PTAは民主的な組織なので、役員選びに当たっては、当然、会員同士の話し合いの中で決まっているものと認識している。
③ 役員不足は全国的な話。ただ、今も述べたように、会員の中で民主的に話し合って役員を決めるのが本来の姿だと考えている。

男性議員A
今のご答弁の通り、学校において保護者同士の中でやはり民主的にちゃんと会議を持って、そこでしっかりとした話し合いがもたれて決めていくことが本来の原則だと私も理解している。
ただ、なり手がいないという問題があって、それを何とかするために、強制とまでは言わないまでも、「強制されている」ととらえる保護者もいて、それが先ほど話のあった教委への申し入れになっているのだと理解した。

陳情の1にあるように、確かに、PTAは入退会自由であるとは思うが、そのことを広報・周知すると、逆にまたどんどんなり手が減ってしまうのではないか。
したがって、先ほども述べたように、当事者同士が決めるのが原則だと思うので、この陳情には賛同しづらい。


男性議員B
この陳情書には「学校に対して指導すること」とあるが、これは、権力主義以外のなにものでもないと思う。こういう考え方を学校に押し付けると、このことだけではなく、他の面でも波乱を起こすだろう。だから、この陳情には、もう、頭から賛成できない。
陳情者は、陳情をする時、もう少し良く考えてもらいたい。


女性議員A
・入退会の手続きがあるところがあるのか?
・各学校ではPTAについての説明をどんな形で行っているのか?

生涯学習部長
・入学式の終了後、保護者に対して、-「学校が」ではなくあくまでも「PTAが」だが-、PTAの役員から、PTAの活動についてのご説明をして、入退会の手続き等についてもお話しされていると聞いている。

女性議員A 
・PTAの加入用紙とかがきちんとあって、その提出をもって「入会とする」というような、手続きを踏んでいる学校はどこかにあるのか?

生涯学習課長(※ここで説明者交代)
加入手続きについても、先ほど話があったように、学校の実情に応じてやっている。

(委員長
「PTAがやってる」ですよね…。

生涯学習課長
まあ、PTAが、です。)

女性議員A
私の保護者としての以前の経験では、確か当時は加入用紙はなかったように思う。
本当に加入の手続きがあるところがあるのか、知りたい。
加入の手続きがないからこそ、今回の陳情が出たのではないか。

そこで、意見を言いたい。
自分がPTAに関わったのはもう10年前のことだが、この問題はずっと前からある問題。ただ、かつてと違うのは、母親でも働く人が増えていることや、シングルの親御さんが増えていること。本当にきゅうきゅうと暮らしている方が増えていて、役員にはなれないという実情があると思う。
だから、PTAも、従来の主婦がたくさんいた時代のスタイルを乗り越えて、新しい形のPTAを作っていく必要があると感じている。
しかし一方で、PTA活動に参加することで学校に親近感を覚えたり、先生とお話ができたり、有意義な部分がたくさんあるのも確か。だから、そのようないい点も打ち出して、充実した楽しいPTAを片方で志向しつつ、やはり、やり方については本当に真剣に、先生方も一会員として参加してもらい、どうやったらたくさんの人に関わってもらえるのか考えるべきだ。

そのためにも、この陳情者にも、まずPTAの活動に関わって中側から変えていってほしい。
学校組織として指導というのは、これは別のことで、できないことだと私も思うので、お気持ちは重々分かるものの、賛成しかねる。


男性議員C
町内会・自治会においても、現場では、高齢のため活動ができないので辞めさせてほしいといった声が出たり、同じような問題が起きている。
私もPTA会長を二年勤めたが、大変な人も巻き込んで盛り上げてきた。趣旨は大変によく分かるが、先に山田議員も述べたように、私も、ぜひPTAの中にいっしょに入ってもらって協力いただきたいと思う。ただ、その中で強要することがないように気をつけてほしいと思う。


女性議員B
「PTAと生協活動は民主主義を学ぶ第一歩だ」と言う学者の話を印象深く覚えている。この陳情者が一番大きく勘違いしている点は、「要旨」記の1に「入会していない保護者の児童に対して不利な扱いをされないこと」とあるが、PTAというのはそもそもその学校に在籍する児童のために活動しているので、入会していようとしていまいと差別をしないのが大原則だ。

自動入会のことを問題にしているが、役員の手間や、入会のしやすさを考えると、「原則自動入会」にしておくのは、ある意味、配慮されている仕組みかなと思っている。
ただ、それがもし強制ということにとられるのなら、そうではないのだよ、ということをPTAの中で皆さんで勉強するのが私はいいと思う。
まさしく、この共助の組織に対して、公権力が介入することはないと思う。

陳情権は誰にも保障されているので、どんなものでも出されることは止められないが、こういうすべてを公で何とかしてくれというのは、これからの私たちの社会に対して非常に心配だ。
そのような次第で、この陳情に関しては、賛成することはできない。


男性議員D
登下校の見守り、ラジオ体操、祭り等、PTAと自治会などが協力してできること。だから、PTAが組織されるのは当然だ。ただ難しいのは役員をどう選ぶか。うちは共働きで女房も含めて役員は一切やっていない。もう逃げ回っていたので大きなことは言えない。
しかし、役員は当然必要になるわけで、難しいところだ。

やれない人はやれない事情を地域でも理解しながら、協力し合うことが大切。だから、強制とかはあってはならないと考える。

事実上、自動加入でもやむを得ないのではないかと思っている。
自動加入であることや、PTA活動が学校中心にやられていて事務局も学校内に置かれていることも事実としてあり、誤解される面があるのは確かだ。
しかし、それなしにはなかなかやっていけないという、やむを得ない面もある。

PTAの中で、いわゆる民主的に、それぞれの会員はお互いの立場を考慮・尊重しながら運営していってもらうしかないのでは。

学校のほうを通じてということにはならないので、教育委員会全体として、保護者との連携をどうするのか考えあう場を設けていけばよい。
いずれにしても、PTAが健全に、活発に活動できるための条件整備を教委にはやってほしい。
この陳情には、賛成できない。


男性議員E・副委員長
会派(自民党)を代表して言わせてもらう。
私もPTAを高校まで入れて8年やった。
そもそも、PTAというのは、自主的、自立的な任意団体なので、教育委員会に頼んでこのようにすべてをがっちりと、一つのルールに基づいて一律的に指導するというのが、まず違っていると思う。
この陳情も、皆さんが言ったように、PTAの中で話し合って解決する問題であり、個人的な感情を含んだ文章が多く見られるので、こういうような陳情は制度にはそぐわないと思う。よって、会派としては賛成できない。


委員長
この陳情に賛成の方は挙手を。
(賛成なし。)

審査終了



<発言議員氏名・所属一覧>(現時点で分かる限りにおいて)
(発言順)
男性議員A:佐々木友樹氏(2回・共産党)
男性議員B:? (大変、失礼いたしました。) 
女性議員A:山田京子氏(2回・市民ネットワーク)
男性議員C:黒宮昇氏(3回・公明党)
女性議員B:福谷章子氏(3回・未来創造ちば)
男性議員D:布施 貴良(9回・民主党)
男性議員E・副委員長:秋葉忠雄氏 (1回・自民党)
委員長:小松﨑文嘉氏(2回・自民党)

※3か月後には公式の議事録が出るそうです。今回のエントリは議事録が出るまでの参考情報とお考えいただければと思います。
筆記に気を取られていたため、発言議員の氏名の確認がおろそかになってしまいました。この点は来週確認できればと思っています。
氏名と発言のマッチングミス、発言内容の聞き違い等がありましたら、ご連絡ください。
至急対応させていただきます。

(6.24追記)
議会事務局に議員の当日の座席位置を確認しました。男性議員B氏は依然はっきりしないのですが(橋本議員と宍倉議員のどちらかではあると思います)、あとの議員に関しては当初のマッチングで間違いなかったようです。