第174話 太陽よりも月 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第174話 太陽よりも月

修羅場含みの壮絶な別れはもうしたくない。

たくさんだ・・・。


一人残された部屋で私はそう感じていた。


一人は嫌いだ。


男から男に渡り歩く私は

一時も一人ではいられない弱い女なのだろうか。


一人になると怖くなる。


何もしていないと不安になる。


心を暇にすることが耐えられない。


周りを巻き込んでいつも問題を起こし

感情を極端から極端に揺れ動かしていないと

生きているという実感が持てないのだろうか。


そんな考えが頭に浮かぶ。


そして

すぐに考えることを放棄する。


『考えちゃダメ! 前に! 前に進め!』


心の声は私にそう呼びかける。


私はユウに電話をする。


「もしもし!」


ユウはまだ一度もコール音が鳴らないうちに電話に出る。

きっと今か今かと私からの電話を待っていたに違いない。


「ヒカルと別れたよ。 今、荷物まとめて出ていったゎ。」


私は煙草に火をつけ

煙を深く吸い込んでゆっくりと吐き出す。


「本当? 大丈夫だった? 問題はなかったの? ヒカルさんなんだって?」


心の中が透けてみえるかのような素直な声と口調で

ユウは早口に質問を重ねる。


「ぅーん。 まぁ、いろいろあったけど・・・もう大丈夫よ。

それより、今からそっちに行ってもいい?」


今おこった事実を思い出して口にするのは気が重かった。


「うん! こっちにおいでよ! でも、ヒカルさんは本当に大丈夫なの?

今日はどんな話し合いになったの? 教えてよ。」


ユウが気になるのも無理はないと思いながら

私は適当に話をはぐらかして

修羅場の経緯を説明することは省いた。


「しばらくユウの家にいてもいいでしょ? 住む場所変えて気分転換したいの。

当面の荷物まとめてそっち行くわね。」


そう言って電話を切り

ルイヴィトンのボストンバックに一週間分の着替えと化粧品一式を詰め込む。


少し片付けてから家を出ようと思い

部屋の掃除をはじめると

ヒカルのお母さんからもらった浴衣が目に留まった。


いろいろあったけれど

私はずいぶんヒカルに楽しませてもらったと感じている。


どんな角度から見ても

ヒカルほど出来の良い男はそうはいないだろうと思う。


ヒカルは

いつもたくさんの光を浴びて

キラキラと輝いていた。


癇癪持ちで自分の感情をコントロールするのが不得意なところはあったけれど

そこが逆に人間味があってヒカルの良さを引き立てていたような気がする。


とても魅力的な人だった。


ただ

私には合わなかったのだ。


私はきっと

光よりも闇に

太陽よりも月に心を惹かれる種類の女なのだ。


この部屋を出たら

ヒカルのことはもう忘れてしまおう。


私はユウと新しい恋をしていくのだから。


もう、しくじらない。

必ずうまくやってみせる。


ユウを理想の王子様に育てて

今度こそ絶対に幸せになってやるわ!


自分の気持ちを精一杯奮い立たせて

私は家を後にした。




この章はこれでおしまいです。明日は章間の挨拶いれますね☆

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