第170話 ユウの性質 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第170話 ユウの性質

ユウのアパートは2階建てで

一階に6所帯づつ部屋がある。


築年数はかなりたっているようで

外観は古びていて階段や手すりは錆付いている。


中はそれなりに綺麗にリフォームされており

6畳、いや8畳はあるだろうか。

いかにも学生向けといった簡素なワンルームだ。


家具らしいものはほとんどなく

角度が自由に変えられる図面を書く専用のデスクと

ステンレスパイプの組み立て式の棚、それに小さな本箱があるだけだ。


部屋に入った私達はまだ落ち着かず

外の物音にじっと耳を澄ませている。


そのまま3分ほど経過して

何事も起こらないのを確認してから

私はユウに改めて抱きついた。


この思いがけない修羅場のせいで

私のユウへの想いはすでにクライマックスの域に達していた。


様々な種類の激情は分化される事はなく

全て恋愛感情として私の脳に認識された。


ドキドキハラハラを伴う極度の緊張状態が

恋愛感情と錯覚されるというのはよくある話だ。


そしてそれはきっと

ユウにとっても同じことだった。


私達は荒波を乗り越えたサーファーのように

恍惚とした達成感を全身に感じながら

燃えるようなキスを重ねた。


息遣いが荒くなり

二人のじっとりとした汗が交じり合う。




「まりもさん、どうして僕がいいの?」


ユウが思い立ったように小声でポツリと私に尋ねる。


「どうしてって?」


私はユウの質問の意図を確かめる。


「なんでヒカルさんより僕を選んでくれたの?」


私は心のまま正直にユウに語って聞かせる。


「私はヒカルみたいな完成系の男はタイプじゃなかったんだと思う。

それにヒカルも言ってたとおり、私達似てるんだよね。

自分本位でお互いに主導権をとりたがるタチだったから

ぶつかっちゃっうのよ。


ヒカルはさぁ~

完璧に磨きかかったブリリアンカットのダイヤモンドだった。

はじめはそんなダイヤが自分のものになったってのがうれしくてね、

ステータスアップっていうか・・・。気分良かったのは確かだね。

でもヒカルはいい男だったけど私達の関係性は何も育たなかった気がする。

お互い自分のスタイルってのが確立されちゃってたからかな・・・。」


ユウは右手の指で顎を支えながら

熱心に私の話に耳を傾けている。


「それに比べてユウは可能性を秘めた原石ってかんじ?!

どんな風に輝くかに賭けてみたいのよ。

素直で純粋で・・・

なんといっても成長性が未知数で期待できるじゃない!

それに素材が抜群にいいのを感じるの。


はっきり言えば私が育ててみたいんだと思う。

自分の理想の男をこの手で作り上げてみたいのよ!

ワクワクするわ。こういうのって・・・おかしい?」


私はちょっと明け透けに言いすぎたかなと思ったけれど

ユウは得意の笑顔を輝かせながら

「僕を育てて!」なんてうれしそうに言う。


どんな形であれ

ユウは褒められるということが

たまらなくうれしいようだった。


ユウは良くも悪くも

柔軟で吸収しやすい性格だ。


言葉を変えれば

非常にコントロールしやすい性質の持ち主であり

被暗示性の高さを私は感じていた。


これからは私の思いのままに

真っ白なキャンバスに色をのせていく。


最高の男を私がプロデュースするんだ!

欲しいものは自分で作ればいいんだわ!!


私はそう意気込んで胸を躍らせた。


自分が幸せになれる道を見つけたと核心した瞬間だった。




かなり傲慢ですが、ユウもそれを望んでいたんです。その前に・・・ヒカルと別れないとです!!

続きを読みたい人はクリックしてね♪

rankm