第168話 トラブルメーカー | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第168話 トラブルメーカー

ジイヤはかんかんに怒りながら

私の到着を待っていた。


その日は写真集の打ち合わせだったのだが

出版社の担当の人は先の予定が詰まっていたらしく

私が連絡もつかずに1時間半もの遅刻をしたので

打ち合わせは日を改めることになったと伝えられた。


「ごっめ~ん!」


私はジイヤに

この3日間のオフの間に起こった出来事を事細かに説明した。


おそらく30分くらい

私は息をつく間もなく話しまくった。


ジイヤは

「何やってんだよ・・・」

と呆れ顔で頭を抱えている。


「そんなわけで大変だったんだよぉ! 勘弁してよ! ねっ!」


私は全く悪びれずにジイヤに甘える。


私がジイヤに甘える時の甘えは

女が男に甘える時のそれとは種類が違っている。


少しも媚びのない甘えだ。


私達は

社長とタレント

あるいはマネージャーとタレントという関係でありながら

子供と保護者のような関係に近かった。

少なくとも私はそう感じていた。


ジイヤは

私が家出をしてから

唯一信用できる大人だった。


ジイヤは私をとてもかわいがってくれたし

迷惑ばかりかけていたけれど

忍耐強くいつでも私の面倒を見てくれる。


「で、おまえはどうするのよ?これから」


ジイヤはすっかり氷の溶けてしまったアイスコーヒーを

一口飲んでから私に尋ねる。


「ユウと付き合うよぉ!

もぉヒカルには完全に冷めちゃったよ。

だいたい2週間連絡取るなとかさぁ、そんなのこっちの勝手だと思わない?

好きな時に好きな人と逢ったって誰に文句言われる筋合いもなぃよ。

あ~ぁ、面倒くさい。何様のつもりなんだろ・・・あの人。

だいたい人に束縛されるのって大嫌いよ!

私はいつだって自分が好きなようにしたいんだもん!」


堰を切ったように本音が口から流れ出す。

抑えていたものが急に噴出したようだ。


自分のした事を棚に上げて

言いたい放題の悪口を言った。


「おまえね・・・じゃーちゃんとヒカルと話しつけてからにしろよ。

そうじゃないとまた揉めるだけだろ?」


ジイヤは最もな忠告をする。


「・・・それもそうね。 はっきりカタつけちゃぅわ。」


「しかし、おまえさんは本当にトラブルメーカーだなあ。」


ジイヤは

元々垂れている眉を

さらに八の字にして愛想笑いをする。

「それって子供の頃から言われてたなぁ・・・。

学校で先生から何度も言われた言葉だよ。

ずっと言われ続けてる言葉って呪いみたいな効力持って

本当にそうなっちゃうとか・・・! 思わない?」


ジイヤは「はぁ?」という顔をする。

私の意見には同意できないようだ。


「これをやったらこうなるって予測を立てて行動しろよ。

目的があって行動するのが普通だぞ。

おまえさんの場合は先に行動があって

目的の方が後付けみたいなことばっかやってるじゃないか。」


「そう! そうなんだよね! よくわかってらっしゃる! ジイヤ!

まさにAV女優になったのもそんなかんじですよ!

でもそれって・・・なんでなんだろ??

私って人となんか違うのかな? どっかおかしいと思う?

どうしてそうなっちゃうのか自分でもわかんなぃや。」


私は今までも何度も考えてきた自分自身に対する疑問に

しばらくの間、頭を悩ませる。


「さあな~・・・なんでだろうな。」


ジイヤはその問いに答えはくれず

ぶっきらぼうに言葉を結ぶ。


「さて、私はちょっとユウのとこに行ってくるね!

また夜にでも電話して報告するよ。

明日の仕事にはちゃんと遅刻しないでくるからね♪」


私は胸の内をジイヤに吐き出した事で

ずいぶん気持ちが楽になり

さっきからユウに逢いたい気持ちを募らせている。


そしてジイヤは

止めてもきかない私の性格を熟知しているから

こういう時は何も言わない。


ジイヤは会計を済ませて

事務所の名前で領収書をもらい

表に出るとタクシーを止めてくれる。


「じゃーね!おつかれさまぁ~」


ジイヤと別れ

タクシーに乗るとすぐに携帯電話を取り出す。


私は迷うことなく

ユウの電話番号をリダイヤルの中から探し出した。





みなさん、いつも熱心なコメントありがとうございます。いろいろ考えさせられることがあります。この話が一段落したら章間の挨拶を入れますので、その時に私の今の心情と考えを述べたいと思います^^

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