第166話 ヒカルの間違い | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第166話 ヒカルの間違い

ヒカルのその言葉に

私は虚をつかれた気がして

体の力が抜けてしまい呆然となった。


その言葉はあまりにも的確に思えた。


4人の間に

重苦しい沈黙が訪れる。


ユウはヒカルの今の言葉を

自分なりに吟味しながら

じっと黙想に沈んでいるように見える。


「僕は・・・

まずヒカルさんに謝らなければいけないと思います。

順番を間違えたというか・・・すいませんでした。

ただ、まりもさんが好きなんです。ヒカルさんと同じ気持ちなんです・・・」


ユウは言葉を選びながら慎重に語り始める。


「おまえね、俺とおまえを同列におくのってどうなの?

人間には持って生まれた天分ってやつがあるんだよ。

俺とまりもは同じ畑の苺なの。だから分かり合えるんだ。

おまえには無理だ!

こいつに何言われたのか知らないけど

自分のぶをわきまえろ。」


ヒカルはきびしい口調でユウの言葉を遮り

髪をかきあげて薄笑いを浮かべる。


さっきまで憤怒に震えて

いきりたっていたヒカルの様子が一変している。


一段上からユウを見下し

余裕すらあるような身構えで

この場をコントロールしはじめる。


ヒカルのその様子を見て

太一君もユウを締め上げていた手を離す。


無言の時間がしばらく続く。


「おまえの浮ついた空想はもうおしまいだ。」


ヒカルがそっけなくつけ加える。


「でも・・・まりもさんは

僕を好きだって言ってくれたし

AVも辞めるって約束してくれたんですよ!」


ユウは自分を抑えることが出来ないらしく

半ばヤケクソに蒼白な顔で自分の主張を吐き出す。


私は心の中で

『ヒカルの思惑に乗っちゃダメ!!

今はそんなこと言わないで!!』

と焦りながらうろたえてしまう。


「あのね、

おまえはまりもの何をわかってるの?

こいつがどういう女だかわかってるのか?


おまえみたいな男がものめずらしかっただけだ。

それも俺との喧嘩のタイミングと重なったからで、ただの気まぐれなんだよ。


まりもは男をまよわすつぼを心得た女なんだ。

たかだか一度寝たくらいでのぼせあがるなよ。」


ヒカルは露骨な微笑を作ってユウを煽る。


ああ!

ヒカルはカマをかけている!!


私は胸が痛いほどドキドキする。


ユウが何か言いかけたので

私は急いで横から口を挟む。


「ヒカル何言ってるの!

相談にのってもらってただけよ! 朝まで話し込んでたのよ!」


ヒカルは

私の方に向き直り

ジロっと苦々しく睨みつける。


「おまえ、今回はさすがにやりすぎだぞ。 いいからちょっと黙ってろな。」


ヒカルは釈明を求めていない。

そしてヒカルの観察はかなり正しいと思う。


ただヒカルには一つ決定的な間違いがある。

ヒカルは私がユウに本気だとはこれっぽっちも思っていないのだ。


あくまでも私の気まぐれだと確信している。

その確信を助長しているのはヒカルの虚栄心、つまり自惚れだ。


ヒカルは自分の頭脳と才能を高く評価しているし

鏡を見て自分の姿にいつでも見惚れているような男だから

自分がフラれるだとか

間違っても後輩に寝取られるなんてことは

最後まで認めることはないのだと思う。


女が自分の支配下からぬけだすことが出来るとか

そういうことがあり得るということを予想することすら出来ないのだ。


でもそのことが

今はかえって好都合だと私は感じ始めていた。


私はあるひらめきから

あたかもヒカルの側についたかのような演技をはじめる。


それが最悪のシナリオを避けるための

唯一の方法に思えたからだ。


「ヒカル、ごめんなさぃ。 ヒカルの言うとおりだよ。

私、ヒカルと喧嘩して情緒不安定だっただけで・・・

ユウには・・・別に本気じゃなかったの。」




書いてる私が一番ドキマギしてそぉだ・・・。昔の事とはいえ無茶したもんだなぁ・・・。

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