第164話 予想外の成り行き | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第164話 予想外の成り行き

私たちは

何度も愛しあいながら

その合間に他愛無いおしゃべりを重ねる。


互いの心と体を探りあいながら

蜜のような時間はあっという間に過ぎていく。


明け方

私の携帯電話が鳴った。


私はドキっとしてユウから身を離す。


着信はヒカルからだ。


私は人差し指を口元に持っていき

「声を出しちゃだめだよ」と合図をしてから

電話に出る。


「もしもし・・・」


今まで寝ていたかのようなけだるい声を出す。


「起こしてごめん、 店が終わったら、太一とエミリと一緒に神宮プール行く事になってさ。

水着だけ取りに行きたいんだけど、玄関までいい?」


ヒカルのいつもどおりの口調に

私は胸をなでおろす。


「ぅん。 わかった。 んじゃ家の下についたら電話してね。」


私はそれだけ言って電話を切る。


不安そうに口を一文字に結んでいるユウに

「大丈夫だよ。」

と電話の内容を伝える。


「ヒカルさん、怪しんでないですよね?」


ユウが神妙な顔つきで尋ねる。


「全然普通だったよ。玄関先でプールセット渡すだけだから心配なぃよ。」


私はユウの見るからに強張った体をほぐしてあげようと

背面に回って肩をゆっくりと揉んであげる。


その日は

10時から新宿で仕事の打ち合わせが入っていた。


私が仕事に出かける時に

ユウも一緒に帰ることにする。


ユウの靴は事前に部屋の中に隠し

お母さんの靴の代わりに

普段は全然はかないミハマのパンプスを玄関に出しておく。


7時過ぎにヒカルがやってきたので

約束どおりに玄関先でプールバックを渡す。


「具合、大丈夫か?」


ヒカルは心配そうに私の顔色をうかがう。


「ぅん、お母さんがお粥作ってくれたしね。ずっとついててくれてるから大丈夫だよ。

今は少し熱もひいたみたぃ。」


私は自分の手を額に当てながらこたえる。


「そうか、じゃプール行ってくるけど

夕方には帰ってきても大丈夫なんだろ?」


「うん、私は10時から打ち合わせあるし。お母さんもその時一緒に帰ると思う。」


「わかった、それまでゆっくり寝ておけよ。あとで電話するな。」


ヒカルは私の首を右手で引き寄せ

いつものように軽いキスをする。


私は顔色を変えることなくやり過ごす。


「ふぅ~、問題なかったよぉ」


そう言いながらベットルームに戻ると

ユウは極度に緊張していた様子で身を潜めていた。


私がよしよしと頭を撫でると

ようやく安堵の表情を浮かべる。


9時になり

念のために家の周りを見ておこうと

私はゴミを出しに表の通りに向かう。


あたりを注意深く見渡す。


普段と変わったことは何一つない。


私達は身支度を整えて

モーニングコーヒーを飲んでから

家を出た。


ちょうど一台のタクシーが通りかかったので

手を上げてタクシーを停める。


車道に出てタクシーに乗り込む時

予想外のものが目にとまり

私の心臓は大きく跳ねあがった。


『赤のアウディ?! エミリの車?!』


うちのアパートの前の道は

ゆるやかなカーブになっている。


さっきゴミ出しの時には見えなかった

カーブの先に赤のアウディが止まっていたのだ。


とっさにユウの腕を掴んで

タクシーの中に急いでに引きずり込む。


「運転手さん! 急いで出して! 新宿まで!! 急いでください!」


ほとんど叫びに近い声をあげる。


後ろを振り返ると

赤のアウディが急発進するのが見えた。



ヒカルの勘を甘くみてました。私もヒカルも演技上手だったんですねぇ; しかしヤバイ状況です!

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