第163話 事後処理 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第163話 事後処理

「AV女優を辞めてくれますか?」


ユウの言葉をうれしいと思った自分を

私は意外に感じている。


その言葉は

思いがけず胸の奥にジーンと響いて

ユウを愛しいと想う気持ちを加速させた。


解決しなければならない問題が山ほどあるのに

考えはとりとめもなく乱れるだけで息苦しくなる。


全てを忘れたいかのように

私は少し強引に

ユウを自分の内にとりこんで味わい始めた。


今度はユウも

なすがまま私を受け入れる。


ユウの体はとても素敵で

私は夢中になり充分に満足した。


終わった後も

汗ばんだ体で私達は抱きしめあう。


ユウの頭を両手で抱いて髪を撫で

唇を何度も重ねる。


ユウははじめ

夢見心地な潤んだ瞳で私を見ていたけれど

だんだんと不安と戸惑いの表情に変わっていった。


不安そうなユウを少しでも安心させてあげたいと思う。


抱かれた後の女の気持ちは

いつでもその男に一直線なのだ。


私は優先順位の高いことから

事後処理をはじめる。


ユウのことだけを考えていれば

淡々と事を進められる自分になれる。


まずはヒカルに電話をかける。


「風邪を引いてしまって

お母さんがお見舞いに来ている。

今晩は泊まってくれるみたいだから

帰ってくるのは明日の夕方にして欲しい。」

と私は伝えた。


ヒカルは喧嘩の件を謝ってから

「わかった、じゃ夕方に帰るから

お母さんが帰ったら電話頂戴。」

と言ってくれた。


「うん、仕事頑張って。あんまり飲み過ぎないようにね。」


嘘をつきながら

多少ドキドキしていたけれど

あいかわらず罪悪感を感じることはない。


それから私は

ユウに適切な指示を与える。


少し時間をおいて

ユウはお店に電話をかけ

体調が悪いので休みますと連絡をいれた。


とりあえずこれで

今の私達はしばらくは安泰だ。


「ヒカルとはちゃんと別れるから何も心配なぃよ。

ユウとこれからずっと一緒にいる。」


私達は裸の体を寄せ合って話しをする。


「まりもさん・・・さっきも言ったけど・・・

僕はホスト辞めるから、AV女優辞めてくれる?」


ユウは真顔で私に詰め寄る。


「そういう風にユウが言ってくれたのすごくうれしかったよ。

ヒカルみたいに仕事だから許せるっていうのも

ひとつの愛し方なのかもしれないけど・・・。

でも私、きっとどっかで納得いってなかったんだと思うの。」


ユウは黙って頷く。


「私、AV女優やめるよ。

でもね、まだ契約が残っているの。

あと4本・・・。

それが終わったらちゃんと辞めるから

それまで我慢してくれる?」


私の決意はもう固く

ユウとの恋愛を第一に生きていきたいと思っている。


AV女優の仕事には何の未練もない。


ユウは今まで私の周りにいたどの男とも違う。

ユウだけいればそれでいい。


「・・・わかった。 我慢するよ。」


ユウはきちんと考えてから答えてくれる。


考えている時の間のようなものから

純朴な真剣さが伝わってきて

私はまたユウのことを好きになる。


「それとね、グラビアとか、テレビのお仕事も嫌?

私はそっちは続けていきたいんだけど、ユウはどう思う?」


ユウはまた

しばらく時間をかけて考える。


「・・・ううん、それはいいと思う。」


「本当? ボーダーラインみたいなのはどこなの?」


「他の男の人に触れられるのが嫌だ。

仕事でも誰かとキスしたり・・・手をつなぐのも嫌だよ。

だから・・・うーん

ビデオでもイメージビデオとかで一人で映ってるのはいいけど

例えば普通の女優になってもドラマとかでキスシーンとかあったら嫌だと思う。」


ユウは頭の中で

自分なりに考えを整理しているようだ。


理屈っぽい考え方をするのが

ユウの特徴だった。


「そぉか。 じゃ、とにかくAVは辞めるね。

仕事のことはこれから全部ユウに相談して決めるから

遠慮しないで嫌だったら言ってね。」


「うん、わかった。 ありがとう。」


ユウはようやく

少し安心したかのような笑顔を見せる。


私はその笑顔を大切にしたいと心から思う。


「ヒカルと別れるの・・・もしかしたら

ちょっと大変かもしれないなぁ・・・。」


ヒカルとの別れをイメージしてみても

なかなか具体的な段取りが思い浮かばない。


「まりもさん、しばらく僕の家に来る?

狭いところだけど・・・

もし揉めたら、うちに隠れてればいいよ。」


ユウがそんな風に言ってくれたので

私はいざとなったら逃げちゃえばいいか

と、この時はまだ安易な考えでいた。




私はとても男好きで惚れっぽい超恋愛体質な女でした。いつでも恋をしてたなぁ。当時は恋に恋してたってかんじなんですけどね。

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