第160話 真っ白なキャンバス | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第160話 真っ白なキャンバス

ハーフアンドハーフのピザが届いた。


「なるほど・・・。ヒカルさんは強がっているだけで

実際はすごくやきもち焼きなのかもしれないですね。」


今朝の喧嘩の経緯を一通り聞かせると

ユウはそう感想を述べた。


「でもさぁ、彼女が他の男とやってるとこなんて見たくないと思うんだけどねぇ。」


「それはそうですよ。僕だったら絶対に見ません。」


「でしょ?! それが普通だよね。」


私はピザを取り分け

自分の分にタバスコを振り掛ける。


「というか・・・見る、見ない以前の問題で

正直、僕は彼女が仕事とはいえ

他の男と・・・その・・・アレするっていうのは耐えられないと思う。」


「うん。いたって普通の感覚だと思うわ。」


私はパイナップルの乗ったピザを一切れ食べる。


「ヒカルさんはとても強い人だと思います。」


「強いねぇ・・・。ねぇ、ここだけの話さ、ユウはヒカルの事どう思う?」


ユウは煙草に火をつける。


『アンクルサム』という銘柄で

星条旗柄のシルクハットを被ったおじさんがパッケージの

とても個性的な煙草だ。


「僕はヒカルさんに心から憧れていますよ。

スーパーマンみたいな人じゃないですか。」


「スーパーマンねぇ・・・。ヒカルみたいになりたいの?」


「はい。僕の目標です。」


ユウは完全にヒカルに取り込まれている。


話し振りからヒカルを崇拝している様子が伝わってきて

その事に私は少しだけ苛立つ。


「まりもさん、ヒカルさんはとても一途なんですよ。

僕にもまりもさんの話ばかりしてますから。

僕はヒカルさんみたいになって

まりもさんみたいな彼女を作るのが目標なんです。

だから二人には仲良しでいてもらいたい。」


ユウは煙草を消して

シーフードのピザを取る。


「ふ~ん。かわぃぃこと言うね。」


私が小首を傾げて微笑むと

ユウはピザを含んだ口元をキュっと上げて照れ笑いをする。


この子のこういう表情は

とても自然で演技性が一切ない。


「なんかさぁ~、恋愛ってつくづく幻想みたいなものだと思うなぁ~。

結局永遠の愛なんてどこにもないのに、それを信じて求めちゃうのよ。

でも私は本当はそんなものがない事にもう気がついているんだわ。

だから時々何かトラブルがあったりすると

全部投げ出したくなっちゃうの。

面倒になって逃げ出したくなるのよね。」


私はさらに話を続ける。


「ヒカルが一途だって言ったってさ、

そんなのに何の意味があるんだろう?

男はみんな若くて可愛い女に目がないのよ。

あと10年も立てばヒカルだって私には目もくれなくなるんだから。」


「そんなことないですよ。男は誰もがそうだと思うのはまりもさんの固定観念では?」


「違うっていうの?」


「僕は愛した人が50歳になっても愛し続けている自信があります。」


ユウはとても真面目な顔で

まるでプロポーズの台詞の一行みたいな事を言う。


「まぁ・・・それは愛というか、情みたいなもんだよね。

それでもやっぱり若い女の子に目移りするはずよ。

男なんてみんな同じなんだから。」


「そんなことないですよ? 少なくとも僕は。」


私はユウがムキになって否定する事に納得がいかない。


そんな事があるわけがない。


そんな男が存在してもらっては困るのだ。


「でもね、結局頭の中ではいろんな女を抱くわけでしょ?

AV見るのだってそうだし、同じことよ。

実際行動に移すかは別としても男はみんな若くて綺麗な女が好きなの。」


「まりもさん、それは・・・あの・・・マスターベーションのことですか?

もしそうなら自分は・・・彼女のことを思ってしていました。

彼女がいた時の話ですけど。」


「嘘つかないでよ!」


私は頭にきてユウを睨み付ける。


でもユウは嘘はついていない。

この子には嘘をつく理由がない。


真っ直ぐに私を見るユウの瞳を見て

私にはそれがわかってしまう。


言葉にならない感情がこみ上げてくる。


ユウは純粋で

きっとまだ世の中の汚さを知らない。


奇跡的な事に

真っ白なキャンバスなのだ。


私は嫉妬に似た感情を抱きながら

どうしても手にいれなければならないものが

目の前にあるように感じ始める。


眩しい宝物を自分のものにしたいという気持ちと

そんなものがあるなら破壊してしまいたいという

相反する欲求が同時に大きくなっていった。




また完結出来なかったので章をまたぎます^^; コメント読んでると「うぇw」って思います・・・w

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