通夜はヒロ自身も含め、目の前の現実の信じられない空気が充満していた。


だが、告別式は、我々もヒロも、この事実を受け入れ、
ヒロは、マダムたちの居る、賑やかな世界へ旅立てたと思います。


皆で棺を担ぎ、荼毘にふす扉が閉まるまさに直前、


シェフの「ひろたにシェフ!」の音頭に続き、
仲間たち全員の「サ・マーシュ!」の掛け声が聖苑中に響きわたった。


事前に提案はしたが、一糸乱れぬ声に、俺も皆も鳥肌が立った。


ヒロが言わせてくれたのだ。ヒロが俺たちのオーダーを待っていたんだ。


ただ、その後、嗚咽の海になってしまったが…。


(「サ・マーシュ」とはフランス料理店で厨房にオーダーを通す時の掛け声)



その後、俺が皆に話した(不謹慎と思わないでくれ)。


たぶん棺の中でヒロは目を覚ました。皆の声に思わず「ウイ!ムッシュ!」と
起き上ったが、棺の蓋に頭をぶつけて、本当の深い眠りに入ったんだと。


仲間から、「それじゃあ、俺たちがとどめを刺した事になるじゃないですか」と苦言。


その通りだ。ヒロは寝巻のままで、クモ膜下なんて訳の分かんない事で、
本人も訳も分からず逝ってしまうのは本望ではないはず。


ヒロにしっかり成仏して貰うにはこれしかない。


コックコートをまとい、皆の掛け声で旅立てれば、
本人も納得してマダムたちのところに向かったはず。


これからも「シェフひろたに」として、マダムたちと一緒に、
城山さん夫妻たちや大勢の人たちに美味しい料理を振舞うだろう。


いずれ、俺たちも行く。


それまで、「レストラン・ひろたに」を繁盛させとけよ!



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これが、向こうでの、ヒロのバイブルだ!