なぜあなたのうつ病は治らないのか?

なぜあなたのうつ病は治らないのか?

治る病気と言われて、治療をはじめたのに、うつ病が治らない・・・

心療内科・精神科で処方される薬剤による副作用・依存性を、精神科医である清沢マナブが切る!

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以前、ブログに、「ベンゾジアゼピン系薬剤は、依存性がありやめられない」と書きました。

ベンゾジアゼピン系薬剤には「反跳性不眠」という、やめると前よりもっと眠れなくなる副作用があります。

さらに耐性形成といって、飲めば飲むほど眠れなくなる副作用もあります。


ハルシオン、レンドルミン、サイレース、ユーロジン、ドラール・・・


これらはすべてベンゾジアゼピン系薬剤であり、同様の副作用をもたらします。





では、「不眠症」となって困っている人に、「安全な」睡眠薬はあるのでしょうか




完全に安全な薬は、この世の中にありません。


効果の裏には、必ず副作用があります。



しかし、昨今の研究ではより「安全ではないか」と考えられている薬もあります。



マイスリー・アモバンといった薬剤は、「比較的」依存性・耐性・離脱が無いという報告があります。

もちろん、これは「ベンゾジアゼピン系薬剤と比べて依存になりにくい」というだけであって、依存にならないわけではないので注意が必要です。


昔使われていた抗うつ薬の「デジレル・レスリン」や、抗精神病薬の「セロクエル」のごく少量、抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンなどは、不眠に対して効果があり、耐性形成もなく長期連用が可能という報告があります。

デジレル(トラゾドン)は、100mg程度までは抗うつ効果はほとんど無く、あるのは不眠改善効果のみであると考えられています。この薬は、100mgまでは、α1・ヒスタミン・5HT2A/5HT2C遮断作用が主に現れます。ヒスタミン・α1遮断で鎮静され眠気が来て、5HT2A, 5HT2C遮断により睡眠深度の改善効果があります。飲んで1時間程度で効果が最大となり、7時間以内にほとんど作用が消失すること、体内に蓄積されないことから、睡眠薬としての薬理学的な特性を満たしています。しかし効きが非常にゆっくりなので、「ベンゾジアゼピン系薬剤」を飲んだことのある人だと、その眠気のトロさが気になることが多いようです。


また、セロクエル(クエチアピン)も25mgまでの低容量だと、ほぼ作用するのはデジレルと同様で、α1・ヒスタミン・5HT2C遮断作用、5HT2Aパーシャルアゴニスト作用となります。やはり内服して1時間程度で効果が発現し、7時間以内に効果が消失するので、薬理学的には良いと思われます。



私は、患者さんに処方する薬はなるべく自分で飲んで飲み心地を確認しています。

実際の飲み心地ですが、



レンドルミン
吸い込まれるような眠気が来る。ぐっすり眠れる。飲んだ後、「また飲みたい」と思う。(おそらく、これが依存性を形成する理由でしょう)


フルニトラゼパム
気持ちの良い眠気が来る。朝が眠くて起きづらい。「また飲みたい」と思う。


デジレル・セロクエル
眠気と言うより、体が押さえつけられて動けない感じ。起きた後の「すっきり感」が気持ちいい。「また飲みたい」という気持ちはあんまり来ない。



デジレル・セロクエルは、「なるほどこれは確かに依存しにくいな」という印象があります。
どちらも、飲みたい感がありませんし、ベンゾジアゼピン系薬剤より眠くなりません。

効きにくい印象があるからこそ、うまくやめることも出来るんだろうなと思います。


私も、眠剤を処方する際には、デジレル少量にしています。


みなさん、「あんまり眠れない、前の薬の方が良かった」と言われるのですが・・・。




憂鬱な症状はだいぶ軽くなった。

抗うつ剤・抗不安薬も飲んでいる。

でも、やめようとすると、症状が悪くなる。


だから、やっぱり鬱は治ってなかったんだ




このような論理は非常にわかりやすいですが、間違いです。



抗不安薬は、一般的に「ベンゾジアゼピン系薬剤」と言われており、依存性が非常に強い薬剤です。


私も、時に内服することがあるのですが、なるべく少なめに、しかも多くても1週間のうちに1~2回としています。



この薬は、のむと「すぐに効果があって、効果があったという実感があって、しかもまた飲みたくなる」という特徴があります。

だからこそ、依存にならないように、頼るにしても「頓服として」頼るレベルにしなければなりません。



鬱の治療で必要なのは、これらベンゾジアゼピン系薬剤を、はじめから「頓服として、少ない回数しか飲まないこと」です。


そうすれば、うつ状態の回復期に薬剤中止にあたって、ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱に苦しむ必要が無くなります。




ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症状は以下の通りです。


重度の不安感・不眠・焦燥感(いてもたってもいられない)・抑うつ症状の再燃・めまい・吐き気・筋肉の緊張 などなど、書ききれないくらい多彩な症状が出ます

しかも、この症状は一般的には内科などでは「不定愁訴」と一蹴されてしまう症状が多く、「離脱症状が出る」ということを知っていないと、「精神症状の再燃」と取られがちです。



だからこそ、依存になってしまった場合には、ベンゾジアゼピン系薬剤の減量は少量ずつ、長い時間をかけて行う必要があるのです。



一般的には急な断薬を行っている場合も多く、

「やっぱり治ってなかったんだ」

と判断されて薬を続けていく。


こんな状況が続いているのです。




だからこそ、はじめに、「これは依存性があり、クセになりやすいから、飲んで楽になっても薬に頼り切らず、毎日飲まないようにし、本当に辛いときだけ頼るように」と伝えなければなりません。

いっそのこと、ベンゾジアゼピン系薬剤を処方しないのも一つの手だとも思います。



そのあたりは難しいです。 今にも不安と、辛い気分に苛まれている人を、一時的にとはいえ楽にすることができる薬剤を使うべきかそうでないのか。



私も、不安で辛いとき、一時的に頼ったことがあります。
ずいぶんと助けられました。


だからこそ、依存になって欲しくはないけれど、楽になって欲しい。
そう言う気持ちがあり、なるべく少ない量を処方するようにしています。



抗うつ剤は、「脳の中のセロトニンを増やすことでうつ状態を改善する

とまことしやかに言われていますが、抗うつ効果については次のような仮説もあります。




脳幹部にある青斑核から扁桃体に伸びるセロトニン神経があります。

このセロトニン神経は、「扁桃体の活動を抑える」と言われています。



扁桃体の活動を抑えるのが、 SSRI の本質でしょう。


扁桃体とは、脳の中でうれしい、かなしい、たのしい、きもちいい、ゆううつ」などの感情を担っている部位です。


この脳のなかの扁桃体で、私たちは感情を感じています。


ところで、この感情ですが、ゆううつな気持ちは不快をもたらします。

全身へのストレス反応が起き、そのストレス反応に伴って体の調子を崩すのです。



したがって、この「扁桃体」の活動を抑えることができれば、うつ病として行き過ぎた感情のもつれを改善できる、という話になります。



すなわち、抗うつ薬は「感情麻酔薬」です。


感情をとめることで、憂鬱な気持ちを改善する効果があります。


しかし、ある程度憂鬱が改善しても、「何となくやる気が起きない」ということもあります。


これは、鬱が改善していないのではなくて、ただ単に「SSRIが悪さをしている」とも考えられます。


なにをやっても楽しくない。何をやっても感情が動かない。


うつ病の症状ではなく、「抗うつ薬が作り出しているものだ」と言えるでしょう。



このような状態を「SSRIによるアパシー」などとも言います。




結局のところ、抗うつ薬が病気を作っているとも言えるでしょう。




だからこそ、私は、ある程度うつ状態の改善したうつ病の方には、ある程度やる気のなさ等が残っていても、SSRIを減量するようにしています。



すると、減量にともなってみるみるやる気が出てくる。

やる気が出ることによって、就職活動を再開したり、再び復職できたりする。



それでも改善しない場合は、双極性の鬱を念頭に入れます。

これについては、また後日書こうと思います。



抗うつ薬は、ある一定のうつ病の人たちには、効果があるんだろうと思います。


しかし、「抗うつ薬の効果が現れる」うつ病の特定は難しいです。




うつ状態というのは、いろいろな原因によって起こるものです。


躁うつ病でもうつ状態になるし、大うつ病でもうつ状態になるし、心因性のうつ状態もあります。




これらすべてをひっくるめて、抗うつ薬で治療しようというのは、間違っているでしょう。




抗うつ剤の中には、プラセボと比較してほとんどエビデンスが出なかったのにごり押しで認可された薬もあります。



うつ状態に対して、本当に効くのかどうか懐疑的です。





また何より問題となるのは、抗うつ薬による「賦活症候群 activation syndrome」でしょう。

この状態は、おそらく5HT2c受容体におけるセロトニン量の増加が原因と思われます。


賦活症候群となると、幻覚・妄想が出現し、興奮・衝動性の亢進も認められます



こういった状態に対して、SSRI中止による治療を行う医師は少ないです。



大概の場合、抗精神病薬の追加によって対応されることが多いです。




こういったタイプの方は、減薬や、気分安定薬による治療によって大きく改善しています。



SSRIやSNRIといった抗うつ薬には、こういったものが「製薬会社が言うよりよっぽど多い」ということを意識して使う必要があると思います。


前回は、うつ病が治って問題なかった人を書かせていただきました。


今回は、私がクリニックから紹介された、うつ病の治らなかった方です。




40歳の女性で、ある日、「夫が浮気している」と言うようになりました。憂鬱な気持ちとなり、夜も眠れなくなり、手が震えて物が食べることが出来なくなりました。


その方には、リフレックスとサインバルタの二つの薬剤と、ドラール・レンドルミン・ワイパックスなどが多く使われていました。

一時的には、リスパダールが使われていた時期もあったようです。

それはなぜか。通院している病院に行き、「夫が浮気している」という言葉を、妄想だとその医師は捉えたからだそうです。





憂鬱な症状はいつになっても良くならず、毎日からだが重く、何をするにもおっくうで感情が落ち着かなかったそうです。


また、なんでもないのに息が切れて冷や汗が出たりするようになりました。


ある日、夫の浮気に耐えかねた彼女は、自宅で包丁を持って暴れます。

精神病を疑われて、私のいる病院に運ばれてきました。



私は、真っ先に「抗うつ剤によるactivation」を疑いました。

抗うつ剤は、セロトニンやノルアドレナリンを脳内で増やすことで抗うつ作用を示しますが、麻薬の一部にセロトニン受容体そのものを刺激することで興奮を引き起こす物もあります。

それはLSDです。LSDは5-HT2C刺激薬で、この受容体の刺激作用によって興奮などが引き起こされます。



その方はちょうど同時期に内科的問題も抱えていたため、身体的に強い不調がある段階でしたので、一気に減薬を行い、

デパケン600mg + ランドセン2mg

のみの気分安定剤のみにしました。




この方は、内科的問題による症状によって離脱症状がマスクされたのか、一時的なふらつきを認めたものの、それ以上の症状を認めませんでした。



断薬して1週間後に言われた言葉が忘れられません。

先生、頭が凄く軽くて、今までなんだったんだろうって思います。先生に出会えて本当に良かった



患者さんに感謝されることほどうれしいことはありませんが、

薬によって作られた病状を改善して感謝されるのは、なんか微妙な気持ちです・・・

おそらく、体の重さの原因は、リフレックスによる抗ヒスタミン作用でしょう。また、ドラールも入っていたため、体内に蓄積毒性を示していたのだと思われます。


毎回思うのですが、ドラールやメイラックスは悪魔の薬です。
毎日のむことで体内に蓄積して、覚醒度を下げていく。


覚醒度が下がれば、意識変容に伴う精神症状が出現することは多々あります。

それは、幻視であったり幻聴であったりします。



この方は、双極性のうつを一般的なうつ病と誤診されて、延々と数年間うつ病の薬を使われたせいで、賦活症候群を起こしてしまった方でした。



今後の方針としては、デパケンは少しずつやめていく予定です。