先日、とあるところに頼まれて
NYについて書いたものを投稿させてもらいました。
ヒジョーにお堅い文章だし、
これといって目新しいことを書いてもいないのですが
気が向いたら読んでみてくださいねー☆
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「混沌と融合の中で変わり続ける普遍の都市・ニューヨーク」
BIG APPLEと称されるニューヨークには、その魅力に誘われて毎年大勢の観光客が訪れます。年々その数は増し、2006年には過去最多の4400万人を記録しました。
特に訪問者が多いのがホリデーシーズンと呼ばれる11月末~12月にかけてです。そう、ロックフェラーセンター前の、あの有名なクリスマスツリーの点灯と共に観光シーズンはピークを迎えることになるのです。
世界有数の都市ニューヨークですが、一般にニューヨークと呼ばれているのは「ニューヨーク州ニューヨーク市」のことです(州都はアルバニー)。
さらにニューヨーク市はマンハッタン区、クィーンズ区、ブルックリン区、ブロンクス区、スタテン島区の5つの区で構成されており、観光客が多く訪れるのは主にマンハッタン区ですので、私たちが呼ぶニューヨークとは「ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区」だと思ってよいでしょう。このハドソン川下流域に浮かぶ細長く小さな島に、多くの人が魅了され、希望を抱き、夢見てやってくるのです。
なぜそれほど多くの人がこの街の虜になってしまうのでしょうか?名だたる美術館の数々、ミュージカル、オペラ、メジャーリーグ等々、魅力的なエンターテイメントには事欠きません。しかしそれだけではなく、この都市最大の魅力は「MELTING POT(人種の坩堝)」、この言葉の中に潜んでいると思います。
言葉どおりここには本当に多種多様な人が混在しています。ニューヨークには「郷に入れば郷に従え」的な発想がないのではないかと思われるほど、各々の人種が自分たちの文化を守って生活しているようです。多様な人種、多様な文化が「溶け合っている」のでなく「共存している」、そう感じます。その証拠に、この都市で飛び交う言語はなんと約120もあるそうです。自分たちの言語を話し文化を守りながら生きていける。それを受け容れてきた場所、それがニューヨークなのです。選挙の際、投票所に張られていた4ヵ国語の案内にそのことを実感せずにはいられませんでした。使用されていた外国語は「スペイン語」「中国語」「韓国語」。これは私が住む地域のことですので、地域によってはもっと違う言語が使用されているかもしれませんが、この3つの言語が今の移民の現状の一端を表わしているように思います。
多くの人種が共存するところから、混沌とした得も知れぬエネルギーが湧き出し、古い街角を這うように満たしていく-------皆が必死で生きています。しかしそれさえも楽しもうとしているように見えます。一方で摩天楼、ウォール街に代表される「世界の首都」としてのビックシティーの一面。お金持ちは桁外れですし、NY社交界に至っては我々庶民には垣間見ることのできない世界が確かに存在しています。そして対照的なこれら全ての要素が、ニューヨークを類稀な都市に仕立て上げているのです。
このように多様な人種が暮らしているということは、もちろん外国からの移民が多いということ(もともとアメリカは移民国家ですので、代々先祖の言語を受け継いでいる家庭も多いそうです)。2004年度の統計によるとニューヨーク市での外国生まれの住民の割合は全体の35.9%に及びます。クィーンズ区に至っては人口の約半数が移民です。フラッシング(チャイナタウン・コリアンタウン)やアストリア(ギリシャ人街)、グリーンポイント(ポーランド人街)などにその現状が見られます。マンハッタンにもチャイナタウンやリトルイタリーなどがありますが、これらの街に行けばアメリカにいながらにして各国の食や文化を楽しむことができるでしょう。
そんな多くの文化に溢れるニューヨークでは今ちょっとした和食ブームです。ロハスな生活が取り沙汰されている今、「和食=ヘルシー」と考えられていることがブームの一因です。街にはたくさんのSHUSHIレストランが溢れ、どこででも手に入る程SUSHIがニューヨークの食文化に浸透して久しいですが、話題のレストランの中にも和食の要素を取り入れた店が続々登場しています。ダニエル・ブーレー、ジャン・ジョルジュ、アラン・デュカスなど蒼々たる有名シェフの料理にも、多く和食の影響が見受けられます。ここからアメリカの食のトレンドが生み出されているのです。そしてそれらの和食レストランには、器用に箸を使いこなすアメリカ人の姿があります。
ブームの中心はフュージョン料理。各シェフが和の素材を取り入れアレンジした料理なのです。日本人からすると『?』なこともしばしばではありますが、アメリカ人にとってはそれらがとても新鮮に映るのでしょう。和食以外でもアジアン・フュージョンは人気で、フレンチ+コリアン、チャイニーズ、ベトナミーズの組み合わせやメキシカン+ジャパニーズなどの取り合わせにはなかなか興味深いものがあります。こんな意外なフュージョンが生まれるのもニューヨークならでは。多くの民族が暮らす都市だからこそ手に入る食材やインスピレーションの賜物なのでしょう。多様な文化が「共存」する街において、食だけは確実に「溶け合い」昇華されていっているようです。
これらは、いわゆる正統派和食ではありません。アメリカで生まれたアメリカ人に好まれる料理です。これに異議を唱える人もいますが、私にはそれは必然のように思われます。「食」は文化の重要な一部です。異質な文化が出会った場所で姿を変えて進化し、新しいものが生まれる。これこそ文化の融合だと思うのです。日本のものが世界中の人たちに認められ、喜ばれ、取り込まれていく。私はそのことを単純に嬉しく思います。ニューヨークのブルームバーグ市長があるインタビューでおっしゃっていた言葉がこの点をよく物語っていて印象的です。
「ビジネスで何度も日本を訪れたことがあるけれど、和食はやっぱりニューヨークが一番だね!」
多くの矛盾と異質からなる混沌たる街・ニューヨーク。実際ここから「混沌」を取り除いたら、そこはニューヨークではなくなるといっても過言ではないでしょう。そして「変わり続ける普遍の都市」ニューヨークは今年も、大勢の人々を魅了し続けていくことでしょう。