愛のままに!! -183ページ目
<< 前のページへ最新 | 179 | 180 | 181 | 182 | 183

事情は後で・・・

~ 事情は後で・・・ ~


 今日は飛び石連休の谷間。ほぼズル休みに近いかたちで、学生時代の仲間プラスその友達、合わせて6人で行き先未定の一泊小旅行に出かけた。秋の日本晴れ!といったところであろうか、雲一つない快晴の空の下、とりあえず北へと車を走らせた。この小旅行のいきさつは、弘が新車のワンボックスカーを購入したということで、慣らし&ご自慢を兼ねドライブにでもとなったのである。俺ならば新車の助手席にはまず彼女を乗せてドライブであろう。あいにく現在、弘には彼女がいない。適当に女友達でも誘って出かければよいものを、義理堅いというか要領が悪いというか、俺達を誘ったのである。救われたのはもう一人の仲間の英樹が女友達に声をかけてくれて、申し合わせたかの様に3×3の小旅行になったのである。俺には彼女がいるのだが、今回は何も言わずに出掛けてしまった。どこか頃合をみて連絡しなければと思いつつ東北道の浦和料金所を通り抜けた頃にはそんなことは忘れてしまっていた。弘はご自慢の新車の性能やらを説明しつつ、乗り心地の感想などを問いかけては満足そうな笑顔を絶やすことなくハンドルを握っていた。俺と英樹は弘の話にもちゃんと耳を傾け応対もしつつ、今回同乗者となったOL3人にも退屈させないよう持ち前のサービス精神を最大限に発揮し、車中はまるで学生時代に戻ったかの様なはしゃぎっぷりの6人だった。途中佐野サービスエリアで休憩したあと、とりあえず日光でも行こうということでそのまま東北道を北へ進むことになった。宇都宮を過ぎた頃、突然携帯電話の着信音が鳴り響いた。会話を途切れさせないよう、ながら着信通知を確認してドッキリ、彼女からである。俺の慌てた表情に一人のOL が気づき、「しぃ~」と人差し指を唇のところに押し当てた。気まずかったが出ないわけにはいかない。「もしも~し、どうしたの?」自分でもシマッタの一言を発していた。こんなとき「どうしたの?」じゃないだろ!?しくじった!「おはよう」とか「今電話しようと思ってたんだぁ」だろ!優しさに欠けてるなと自分でも思った。それはそうと、何か勘付いてる。

とりあえず嘘はいやなので、一応60%ホントのことを話した。始めは少しシドロモドロであったがそのうち「いやぁー、いい天気だよぉ、今度一緒に来ようと思ってね。そん時はもう俺に任せてよ!」なんてこともほざいてる。英樹と弘は、心配半分面白さ半分で、今にも噴出しそうな顔をしていたが、事情を察したOL3人は外の景色に目を向けて我関せずで通していた。納得したかどうかは分からないが、ようやく電話を切ることができた。参った・・・。その後日光に着くまでの車中は、さっきまでとはうって変わって、弘はひたすら前を向いて運転、英樹は携帯のメールとにらめっこ。女性陣は自分達の回りの話のみでヤヤ盛り上がっている。俺はといえば、帰ってからのことを考える他ない状況に追いやられていた。英樹も英樹である。自分が女友達を誘っておいて、フォローの一つもしてくれようという感じには見受けられない。


 まあ、しょうがない・・・、事情は後で説明するとしよう。


 とにもかくにもこの小旅行、何が何でも満喫してやるぞぉー!!! トホホ・・・、まったく(汗)



ちょっとひかえめな恋もいい

~ ちょっとひかえめな恋もいい ~


 君のことが好きになった。

 そして変わったこと。


 毎朝ギリギリに起きて朝食を摂らないのはもちろんのこと、パジャマ代わりのスエットを脱ぎ散らかしスーツに腕を通すこと3分、寝癖の髪に手ぐしを入れながら駅まで5分、いつもの電車に飛び乗り会社のある青山まで25分、これが僕の朝のパターンであった。彼女を好きになって、少しは身だしなみを気にするようになって30分早起きするようになったことで色々なことが変わっていった。相変わらず朝食は摂らないが、目覚めた時の空気、家を出るときの気持ち、会社に通うことへの充実感(仕事内容は別として・・・)、あと・・・、クリーニイング代、マメな洗濯、ワイシャツの数。彼女より先に出勤することもしばしば。

 

 今のところ、この”好き”の感情は”愛”でないことは自分でもよく解っている。微妙なところだ。でも好きは好き!口にすれば壊れてしまいそうなモノといったところだろうか。この気持ちが育って行くのか、それともこのまま微妙なままで終わってしまうのか自分でも楽しんでいるような気さえする。もちろん二人きりの時間を望んでしまう瞬間も時たまあったりもする。その時といったら、急上昇する感情とそれを阻止しようとする感情が入り混じって、まるでトレンディードラマの主人公にでもなったかのように僕自身が僕自身を演出しているようだ。主題歌まで流れてきそうだ。


 少し前までは確かにそうだった・・・。


 そうこうしているうちに1ヶ月は経っただろうか。あの”好き”ではなくなっていることに気づいたのだ。たまたま彼女が体調を崩して休んだ朝、タイムカードを打つ彼女の姿を見ることが出来なかったことに、言葉では言い表せないほどのぎこちなさと、物足りなさを覚えたのだ。1日の始まりに欠かせないことが起こってしまったのだ。ホワイトボードの彼女の名前の横の”病欠”の文字に何度も目をやったりしてる。会社の電話も何本か取りそこねたりした。


 恋だ!


 この感情に気づいた瞬間から彼女のことをもっと深く知りたくなった。その後それとなく同僚に尋ねてみたり、今まで直接君と話すことは仕事の話以外めったになく、あったとしても数人でのたわいない会話ぐらいだったが、プライベートな話もするようになった。どうやら彼女は僕とは真逆の人生を歩んで来たようだ。とても裕福な家庭に育ち、一流私大を卒業し、学生時代にはイギリス留学も経験している。なにもかも羨ましいかぎりの環境の中で育ってきた、いわゆる”お嬢様”である。しかし、そんなことを鼻にかけた感じでもなく、すがすがしくさっぱりした印象がとても好感触であった。そこに惹かれたのだろう。時に、二人が恋人として付き合ってる時のことを想像してみたりする度に”不釣合い”が頭をよぎったりもした。頭のなかは夢物語でいっぱいだ。今の僕は正直、彼女のことを思うだけで充分であった。情けないかな、チャレンジ精神は沸いてこなかった。

 とにかく今のこの環境、毎日の君との空気を大切にしたかった。余計なことをして壊したくなかった。意地悪な神様が背中を押すこともあったが、失うことを恐れて思い切りが悪くなったりする。その度に「いいんだいいんだ」と思うことにした。


 ― ちょっとひかえめな恋もいい ―


 ありったけの気持ちを少しもてあましたまま・・・。

会いたい

~ 会いたい ~


 今は金曜日の深夜。僕の住む高層マンションからは贅沢とも言えるほどの夜景が見渡せる。仕事はとりあえず順調だ。不満という不満は特にない。ただ・・・・・。

 どうしてだろう?出会ってまもない君のことが頭からはなれない。ここ最近、何かその感情に頭も身体も動かされているような気がしてならない。このままでは自分自身どうしようもできない状況にあることは理解できる。学生の頃であればすぐに行動におこせたはずなのに、どうも臆病になっているのか面倒になっているのか、はたまた心がそこまで欲してないのか。いや、そんなはずはない。


 明日は土曜日・・・。


 地下鉄の階段を駆け上っている。自分でも不思議なくらいワクワクしながら君の職場である洋服のブランドショップへと向かっている。今の僕の気持ちだけ先に飛んで行って、君に届いてくれないかなぁって思ったりしてる。地上に出た。この辺りは仕事でよく通る。当たり前だがいつもの気分とはまるで違う。やたら人が多くて歩き辛くて、向かってくる人の波がいつもよりじゃまっ気に感じるのは、会いたさと緊張が入り混じって自分が空回りしているからだろうか?もうすぐ君に会える。約束はしていない。君の驚く顔が頭をよぎる。

 胸が痛くなる。君を思うと胸が痛い。これは恋だ。27年間生きてきて、ひとりの女性を思うことでこれだけ心が千切れそうになる経験など今までにはなかった。君は喜んでくれるだろうか?驚いてくれるだろうか?それとも困った顔するんだろうか?無視されてしまうのだろうか?まさに期待と不安が入り混じった極限の状態だ。


 会いたい。君に会いたい。


 ただその感情だけで突き進む自分をいつのまにか応援している。恋って凄い。このことも初めて感じた。


 あと50メートル。あと少し。


 君に会えるまで・・・。

Monkey in the Mirror

~ Monkey in the Mirror ~


 「期待なんかするなよ」と鏡に写る僕が囁いてる。そんな幻想にとらわれた後、熱いシャワーを浴びてそのまま寝転がってみたりした。工事現場のアルバイトは想像以上に重労働だったので身体はクタクタに疲れているはずなのに、どうしたわけかまったく眠れそうにない・・・。君のことを考えてみた・・・。もうずっとずっと前から思いをよせている、僕にとっては「高嶺の花」的存在である君のことを考えてみた。

 

「深入りはするなよ」ともう一人の僕がそっと囁く。アドレス検索画面で君の名前を呼び出すところまではいつも辿りつく。そこから先に進めない。幾度となく、君にこの想いを打ち明けようとしたことか。でも答はわかっている。だから、言い出せないでいる。だからどんどん壊れて行く。


―抑えきれない愛しさの他に僕を壊すものってなんだろ?―


 「期待なんかするなよ・・・」 鏡に写る僕が囁いてる。まだ眠れそうにない。情熱の他に僕を動かすものってなんだろう?そんなことも考えてみたりする。どのくらい時間がたっただろうか・・・。そういえばこんな時間がここのところ毎日続いているような気がする。いや、気がするのではなく、現実続いている。


 

 「深入りはするなよ・・・」 鏡の中でサルがこっちを見てる。


―抑えきれない愛しさの他に僕を壊すものなんてないから―


 僕が僕であるためにいつか君を諦めなきゃならない日がくる・・・。



ある夢の話

~ある夢の話

 冬の寒空のひと時、注ぎ降る暖かな太陽の木洩れ日。そんなある日の午後、壊れそうな自転車に乗った少年。彼は何処にいくんだろう?後からそっと見ていた。そのうちモタモタ自転車をこぐ少年に追いつき、追い越し際に彼の顔を覗き込んでみた。さっきまでの頼りない後ろ姿から想像していたのとはまったく違い、彼の目はイキイキとしていた。思わず「どこいくんだ?そんな自転車に乗って・・・」と声をかけてしまった。彼は僕の目をじっと見つめてこう答えた。「君と同じところだよ」。思いがけない答に返す言葉が見つからなかったのだ。そう、何を隠そう僕も僕自身何の為に、何処へ向かっているのか解らなかったからである。いつ何処で失くしてしまったんだろう・・・、僕の夢、生きがい。でもまだ遅くない。少年の瞳に幼い頃の僕を写してみた。あの頃の夢、まだ終わっていない。目を閉じて思い出してみた。まだ終わっていない。

 

 地下鉄のホーム。いつもと変わらない午後7時の駅のホーム。電車が到着しドアが開き疲れた顔の集団が僕の前を横切って行く。いつもと変わらない・・・。降車する人の波がおさまり電車に乗り込もうとした時一人の少年が迫ってきた。僕は驚いた!いつか出逢った自転車の少年だ。あの少年であったことも驚きだが、もっと驚いたのは彼の格好である。まるでこれから炎に埋め尽くされた戦場にでも向かうかの様、迷彩服に身を包み、肩には弾薬の連なったベルト、機関銃、腰には手榴弾のベルト。ここは都会の真ん中、しかも地下鉄のホームである。一日の仕事が終わり家路を急ぐサラリーン、合コンに急ぐすねっかじりの学生、慣れない地下鉄に戸惑う老人、夜の街に繰り出すニート達・・・。なんだかんだ言って平和そのものを象徴する夕方のひと時である。そこに現れた戦場さながらのいでたちのあの少年。頼りなさげに自転車に乗っていたあの少年。あまりにもの衝撃である。また僕は彼に声をかけてしまった。「こんな所で、そんなもん持って何してんだ!?何処行くんだ!?」その場が静まりかえったように思えた。

 少年のイキイキとした瞳はあの時と同じだ。次の瞬間彼の力強い唇が動いた。「何処へ行くって?君と同じだよ、取り戻しに行くんだ」

       ・・・・しばらくの沈黙が僕を包んだ・・・。

             忘れかけてた何か・・・。

        失くしたと思っていた夢、希望、愛、闘争心・・・。 


<< 前のページへ最新 | 179 | 180 | 181 | 182 | 183