マルコムX ブログ -2ページ目

前回の記事に加筆しました。

前回の記事

「私には夢がある」を英語で読む その5

に数行の説明を足しました。



「私には夢がある」を英語で読む その5

では続きです。

訳の基本的な方針については「その1」の記事を参照してください。



So we have come here today to dramatize a shameful condition.


so 「それで、それゆえ」 

dramatize dramaの動詞形なので、ドラマにする、ということです。「劇的に表現する」。ここではちょっと訳しにくいです。以下の説明を参照してください。

shameful 「恥ずべき」


それゆえ私たちは今日、恥ずべき状況をドラマ化するためにここに来た。


dramatize というのは、キング牧師の戦略を考えるときに非常に重要な語句です。

キング牧師は何度もデモを行い、デモ参加者たちだけでなく、

彼自身も何度も殴られ、投獄されることも少なくありませんでした。


それは、不本意ながら結果的にそうなってしまった、ということではありません。


黒人たちは日常的に暴力の対象となり、

理不尽な逮捕をされることもあったのですが、

それだけではアメリカの世論を喚起することはできません。

少なくとも、キング牧師はそのように考えていました。


世論を喚起するためには、

黒人がどのような状況にあるのかということを

メディアを通じて発信する必要がありました。

それが、dramatizeということです。


メディアが伝えた映像は、

アメリカ国内にとどまらず、海外にも伝えられ、

アメリカの人種差別に対する国際的な圧力が強まりました。

日本でも当時大々的に取り上げられました。


初期のマルコムXは実力行使も辞さない、という姿勢でした。

つまり、武力をもってでも抵抗すべきであると考えていました。

それに対してキング牧師は、

武力によって抵抗するという戦略は

キリスト教的でないだけでなく、現実的でもない

と考えていました。

というのは、

黒人は結局アメリカの総人口の1割程度でしかなく、

軍隊も警察組織も大きな経済力も持っていなかったからです。


無論、黒人が白人を武力で制圧できると

マルコムが考えていたわけではないでしょう。

理不尽な扱いに対する抑止力となるというのが彼の考えていたことの一つでしょう。

例えば、殴り返されることもあると思えば白人も簡単に黒人を殴らないだろう、

という考え方です。



「私には夢がある」を英語で読む その4

しぶりに、ドリーム・スピーチ(実際にこういう言い回しがアメリカには存在します)を続けたいと思います。


One hundred years later, the Negro is still languishing in the corners of American society and finds himself an exile in his own land.


languish 「惨めに生活する、衰える」 SATやGREでは必要になる単語です。

exile 「追放、流浪、捕囚、追放された人」


100年後、黒人はいまだアメリカの社会の隅で惨めに暮らしており、彼自身の国において捕囚の民である。


キング牧師(MLK)はキリスト教(バプテスト)の牧師なので、ここで使われているexileという語は

旧約聖書の「捕囚」に対応している

と考えて間違いありません。


これは重要なことなのですが、

差別された状況から解放されて自由になることを

多くの黒人クリスチャンたちは、

「出エジプト」など旧約聖書に書かれている出来事に重ね合わせて理解しました。

これは、新大陸において奴隷とされていた黒人たちがキリスト教化された時代に遡ると考えられます。





Elijah Muhammad

ずいぶん長い夏休みとなってしまいました。

すみません。


リハビリを兼ねて、まずは Elijah Muhammad 関連のYouTube動画を紹介しておきます。


エライジャ・モハメドは、マルコムが導師(イマーム)として活動した

Nation of Islam(ネイション・オブ・イスラム)

の2代目リーダーであり、

マルコムXの直接の師に当たる人物です。


ちなみに、

Elijah Muhammadは

「エライジャ・モハメド」「イライジャ・ムハンマド」

などさまざまに日本語表記されますが、

もちろん同一人物です。


http://jp.youtube.com/watch?v=K-Cg60SHP2s


エライジャが投げやりな犯罪まみれの生活から彼を獄中で救い出してくれたことに

マルコムXは感謝の気持ちを終生持っていましたが、

エライジャの隠し子騒動などがあり、

マルコムはネイション・オブ・イスラム(NOI)を離脱します。


再びYouTubeの動画

MALCOLM X: Why I Left the Nation of Islam

http://jp.youtube.com/watch?v=cYPpPNDxun0&mode=related&search=

では、

NOI離脱の理由をマルコム自身が説明しています。

この動画の中で、マルコムは

エライジャが6人の10代の女性たちに8人の子供を生ませていた

ことを記者団に説明しています。


1965年2月21日、エライジャの命を受けたNOIのメンバーはマルコムXを射殺します。




「私には夢がある」を英語で読む その3

更新が遅れてしまってすみません。

最近、日付が変わる前になかなか帰宅できなかったもので。


それでは続きです。



One hundred years later, the life of the Negro is still sadly crippled by the manacles of segregation and the chains of discrimination.


sadly sadの副詞形。「悲しむべきことに」 基本単語ですね。

cripple 「を不具にする、の自由を失わせる」

manacle 「手錠、手枷」 これは難単語です。TOEICには不要。TOEFLにも不要。SATやGREなら知っておいて損はないというレベルです。

segregation 「隔離、分離」

discrimination 「差別」


100年後、黒人の生活はまだ人種的隔離(segregation)の枷(かせ)と差別の鎖によって悲しくも自由を奪われている。


segregationというのは、例えば、飲食店で黒人が白人用のカウンターに座ると殴られたり逮捕されたり、あるいは、黒人用と白人用の洗面所が別々であったりというように、黒人と白人の生活スペースが南部においては「隔離」されていたことを指しています。



One hundred years later, the Negro lives on a lonely island of poverty in the midst of a vast ocean of material prosperity.


lonely 「孤独な」

island 「島」

poverty 「貧困」

in the midst of 「・・・の真っ只中に」

vast 「広大な」

material 「物質的な」 ここでは形容詞として用いられています。 

prosperity 「繁栄」


100年後、黒人は、物質的繁栄の広大な海原の真っ只中で貧困の孤島に暮らしている。


ocean、islandというのはもちろん比喩的表現ですが、そのまま訳しておきました。


これは、アメリカ合衆国が世界で最も裕福な国家であったにもかかわらず、肌の色によっては、その経済的繁栄を享受できなかった、という事実を指しています。



「私には夢がある」を英語で読む その2

MLK(キング牧師)の「私には夢がある」のつづきを英語で読んでいきましょう。

This momentous decree came as a great beacon light of hope to millions of Negro slaves who had been seared in the flames of withering injustice.


momentous 「重要な」

decree 「法令、判決」

beacon 「灯台、かがり火」

sear 「を焦がす」

flame 「炎」

wither 「をしぼませる、を枯らす」

injustice 「不正、不法」


この重要な宣言(decree)は、(希望を)枯らす不正義の炎の中で焼き焦がされてきた数百万人の黒人奴隷に希望の大きなかがり火の光として出された(来た)。


It came as a joyous daybreak to end the long night of their captivity.


joyous joyの形容詞形です。「喜びに満ちた、喜ばしい」

daybreak 「夜明け」

captivity 「捕らわれの身」


それ(奴隷解放宣言)は、彼らの捕らわれの長い夜を終わらせる喜ばしい夜明けとして出された(来た)。

(直訳したら日本語として不自然ですが、意味はわかるでしょう。

to不定詞は、直前の名詞daybreakに説明を加える形容詞的用法として訳しました)


But one hundred years later, the Negro still is not free.


しかし、100年後、黒人はまだ自由ではない。


ここでも、Negroを「黒人」と訳しました。

Negroという語は侮蔑的であるとして現在はほとんど使われませんが、

アメリカの黒人を言い表すために、キング牧師はこのNegroという語を主に使いました。


これに対して、マルコムXがどのような態度をとったかというと、

ネイション・オブ・イスラムの教えに従い、このNegroという語を使うことを拒否しました。

なぜなら、この語は「白人」が勝手にそう黒人を呼んだに過ぎないと考えたからです。



子供と女性を守る

coming soon

キング牧師とリーダーシップ

「私には夢がある」の動画をご覧になった方には、

キング牧師というのはエネルギッシュで力強いリーダーだと感じられたかもしれません。


しかし、キング牧師を知る人は、彼は内省的で物静かな人物だと言います。


キング牧師について知るために最も重要な文献のひとつは、

David Garrow による

Bearing the Cross: Martin Luther King, Jr., And The Southern Christian Leadership Conference


というレンガみたいな厚い本です。


Bearing the Cross

キング牧師が黒人運動で最初にリーダーシップを発揮したのは、1955年末からのモンゴメリでのバス・ボイコット運動ですが、

キング牧師がリーダーに指名された主な理由は、

キング牧師のカリスマ性ではなく、

はるかに年長の(キング牧師は当時まだ26歳)牧師たちがおたがいを運動のリーダーにしたくないという思惑を持っていた、

という実力者同士の牽制(けんせい)であったとこの本の著者は書いています。


そしてまた、キング牧師が博士号を持っていた、ということの重要性を指摘する研究者もいます。

当時の南部で博士号を持っている黒人牧師はきわめて珍しかったからです。

キング牧師はアメリカでは

Dr. King 

と呼ばれるのが最も普通です。

つまり、「キング博士」ということです。

キング牧師が不当逮捕から釈放されてくるのを出迎える人たちが掲げていたプラカードに「Dr. King」の文字が躍る写真なども残っています。



「私には夢がある」を英語で読む その1

MLK(キング牧師)の「私には夢がある」を英語で読んでいきましょう。




読み進んでいく中で、キング牧師がアメリカ的な価値観に訴えることで問題を解決しようとしていたことがわかると思います。




せっかくなので、英語の勉強になるように、直訳的に書いていこうと思います。




I am happy to join with you today in what will go down in history as the greatest demonstration for freedom in the history of our nation.



be happy to 「・・・して幸せだ」 感情の原因を表すto不定詞です。

whatは関係代名詞で、後続する部分を受けて、「・・・こと/もの」と訳します。

「・・・こと」と訳すか、「・・・もの」と訳すかは場合により判断します。



私たちの国家の歴史の中で(in the history of our nation)、最も偉大な自由のためのデモとして歴史に残る(will go down in history )ことにあなた方と共に加わることができ、うれしく思います。




Five score years ago, a great American, in whose symbolic shadow we stand today, signed the Emancipation Proclamation.


score ここでは「20」という意味です。

5かける20は100ということになります。



今から100年前、私たちが今日その象徴的なかげ(symbolic shadow )の中に立っている、ある偉大なアメリカ人(=リンカーン大統領)が奴隷解放宣言( the Emancipation Proclamation)に調印しました。


『完訳マルコムX自伝』

http://www.amazon.co.jp/%E5%AE%8C%E8%A8%B3%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0X%E8%87%AA%E4%BC%9D-%E4%B8%8A-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0X/dp/4122039975/ref=pd_bbs_sr_2/503-7905905-8335923?ie=UTF8&s=books&qid=1185556952&sr=8-2


原書(英語)は1冊なのですが、邦訳は上・下の分冊になっています。


ハリポタと同様わかりやすい英語で書かれています。

また、ハリポタより面白いことは私が保証します。