今日は『傘を持たない蟻たちは』の中で一番衝撃を受け気に入った「インターセプト」を紹介します!
あらすじ
会社の先輩の結婚パーティーに参加した、林と高嶺の花である中村安未果。この日林はことごとく自分に言い寄ってくる男の人を振る彼女の事を、奥さんがいるにも関わらず落とそうとする。彼は得意の心理学を使い彼女を落とす事に成功する。そして彼女の家に行くとそこには…
この作品では林目線で書かれたものと、中村目線で書かれたもののがそれぞれあり、林目線で読み終わった後に中村目線で読むと、お互いがどう思っているのかと、林目線で読んだ時の中村の本当の気持ち、その逆が分かりとても面白かったです。
林目線の話の最後。彼女と一夜を過ごし朝を迎えた林はトイレを探していた。トイレだと思い入った部屋に見覚えがある林。本棚には趣味の心理学の本がたくさん。机には見慣れた文房具。そして扉には自分がアメフトの応援に行った時のテレビ中継での写真。ゾッとした時、後ろから彼女に抱きしめられこう言われた。
「私の事は捨てないでね。」
私はこれを読んで鳥肌が立ちました。彼女は彼がゴミを出しては漁り、家に持ち帰っていたのです。ゴミは捨てても、私の事は捨てないで…なんて恐ろしい女なのだ!と思いました。
中村は林をスポーツのテレビ中継で見つけ一目惚れ。そこからネット上で彼を見つけストーキング。同じ会社に入り、彼を射止めるために他の男を振っていたというわけです。
林目線で読んでいる時は、気難しい中村のことを落とそうとする林を応援しながら読んでいたにも関わらず、実際は全て中村の計算だった事が分かり、一生懸命だった林が愚かに感じました。
恋愛小説でこんなにもスリリングを味わった事がなく新鮮でした。