弁護士の大竹夏夫と申します。
弁護士になって14年目になります。


私は、所属する東京弁護士会の高齢者・障害者の権利に関する特別委員会の副委員長を務めており、高齢者虐待部会を担当しています。
高齢者虐待部会を担当するのは、4年目です。


これまで東京都の豊島区が行っている高齢者虐待の事例検討会に講師として参加していました。今年度からは,さらに江戸川区の高齢者虐待防止ネットワークの委員も務めることになりました。

高齢者虐待の問題は、法律分野として、とても新しく、この問題をきちんと理解
をしている弁護士は少ないというのが現状です。


私が、そういう高齢者虐待の問題と深くかかわるようになったのは、5年前。
まだ高齢者虐待防止法が制定される前でした。


その当時私は,高齢者・障害者の権利に関する特別委員会にも参加したばかりでした。成年後見制度もまだ勉強中でした。そういうときに、委員会のなかで高齢者虐待問題を研究する部会ができるから、メンバーにならないかと先輩委員から誘われたのがきっかけでした。


それまで私は、高齢者虐待という問題があることすら知りませんでした。
ただ、そういわれれば、高齢者虐待だといえる事件をそのとき抱えていたのです。


その事件は、父親(82歳)に会うことすらできないという妹(50歳)さんの依頼でした。
姉夫婦が、父親を自宅に引き取ったら、自分が父親に会うことを拒否するというものでした。
父親は好きなこともさせてもらえない。外出も許されず、檻の中で暮らしている
ようなものだという話でした。
姉夫婦は、父親が相当な資産をもっていることから、それを独り占めにするかのような状況でした。実際に,父親の不動産が姉夫婦の名義に変更されたりしていました。
父親には認知症の疑いが強かったので、成年後見の申立てをしました。
しかし、残念ながらその手続途中で父親が亡くなられてしまったため、妹さんが父親に会いたいという願いを叶えることができませんでした。


姉が父親の資産を奪っていたとすれば,経済的虐待にあたります。
また、姉の父親に対する世話・介護が不十分であれば、介護放棄という虐待もあたります。


この事件を抱えていたことから,高齢者虐待問題に取り組もうと決意したのでした。


終わり